![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79498508/rectangle_large_type_2_100b805ef58be6c666489b9dee48936b.png?width=1200)
二次創作小説の書き方【メンタル編】
はじめに
深い孤独がなければ、
まともな作品はつくれない。
──パブロ・ピカソ
もっとも多作な芸術家と呼ばれた画家にしてキュビズムの創始者・ピカソ。かの偉人の言葉通り、作品作りというのは孤独なものです。
特に二次創作はサークル活動でなければ一人で取り組んでいるという方がほとんどでしょう。
本稿はそんな一人で二次創作活動されている方に宛てたものですが、読み進める前に注意して頂きたい点があります。
「二次創作は気の向いた時に書くよ。やる気なくなったらやめるだけさ」
こういった意見も一つの正解です。私だって気が向かないと書かないし、やる気がなくなったらやめます。
これが信条であるならば、本稿を読み進める意味はあまりないかも知れません。
どちらかというと次のような方をターゲットに書いています。
二次創作を楽しんで書きたいけど、閲覧数や人の評価が気になってしまって純粋に楽しめない。
ランキングを気にすぎて、嫌になってきた。
アンチコメがついてしんどい。
長編を書ききりたいけど、続けられない。
本稿はこのように二次創作を楽しみたいけど悩みがある、モヤモヤするという方に向けたものです。
読み進めるにあたって
このメンタル編に根底に流れるものについて、少しお話しておきましょう。
筆者はラノベよりもビジネス書籍を読むことの方が圧倒的に多く、自己啓発書やスピリチュアル、仏教関連書籍に専門書と乱読しています。
そういったスキルアップや自己鍛錬につながる本の中には少なからず共通するものがあります。
それが心の持ちよう、つまり自身のメンタルをどう構築し、付き合っていくかです。
こういった考え方は当然ながら二次創作活動においても有用です。
長い年月をかけて得た知見を少しでも共有できたらという想いで書いていますが、時々「それができたら苦労してないよ」となると思います。多分それが普通です。私だって完璧にできているかと言われたら、できていない時だってあるでしょう。
なのでまずは「こういう考え方があるんだな」ぐらいの軽い気持ちで読んでもらえばいいと思っています。
ただ自分が悩んでいる事柄に関しては、ぜひ真剣に向き合っていただきたいものです。
閲覧数との向き合い方
さて、二次創作をしてWEB上で発表している方のほとんどが、一度は気にしたことがあるのではないでしょうか。せっかく頑張って書いて、勇気を出して公開しようと思ったのですから当然です。
もちろん理想は閲覧数など気にせずに楽しむのが一番です。
しかし、それが上手くできないからモヤモヤすることがあるわけですね。
このモヤモヤを無くしていくには閲覧数の仕組みについて理解しておく必要があります。
私がハーメルンとpixivで活動する上で分かった、閲覧数が増える仕組みは以下のようなものです。
原作が人気作である(=読む可能性のある人が多い)
タイトル、タグが人の興味を惹くものである
その上で言います。閲覧数=あなたの人気や実力ではありません。
どれだけ人気のある作品を書いている方でも不人気ジャンルの二次創作や、人の興味を誘わないタイトルやタグをつければたちまち閲覧数は下がります。
例えば人気の出た作品は更新するたびに五桁の閲覧数になるのに、同じ原作の二次創作でも人の興味を惹かなければたちまち三桁になることがあります。
この実体験から、人気は作者にではなく作品についていることが理解できるかと思います。稀に作者さんに人気があるんだろうなという場面を見ることがありますが、極めてレアケースです。
どれだけ素晴らしい話でもまったく閲覧数が伸びないということは本当にままあることなのです。なぜならば閲覧する前に良作か否かなど分かるはずがないのですから。
なので閲覧数の仕組みを理解することが大切です。閲覧を気にせず書くのがベストですが、多くの人に読んでもらいたければタイトルやタグを工夫すると、あなたのモヤモヤはその内消えていくでしょう。
もちろん、読むに耐えうる文章力・構成力をつけておくのが肝要なのは、今更書くまでもないことですが。
ランキングとの付き合い方
大事なことなので先に言っておきますが、ランキング上位=実力があるではありません。
ランキング上位常連の方には怒られてしまいそうな言い方ですが、これも仕組みを意識すれば自ずと見えてくる話なのです。
ハーメルンとpixivでは評価方法がかなり違いますが、共通して言えるのはどれだけ人の心を掴めたかのランキングであるということです。
どちらのランキングもブックマークやお気に入り数など、好印象というパラメータが影響してランキング順位が変わってきます。
統計を学んだことがある人は聞いたことがあると思いますが、データには外れ値というものがあります。これを趣味嗜好で考えた時に、あなたが趣味があまりにイレギュラーならば外れ値となり、同じ外れ値の趣味を持つ人にしか響かないでしょう。
では趣味嗜好の平均値や中央値、いわゆる読者受けを狙って書くべきなのでしょうか?
ランキング上位を狙って書くのなら、別にそれでいいと思います。しかしそれは本当に書いていて楽しい話なのでしょうか。執筆に喜びを感じられるでしょうか?
ランキング上位を狙っていくというのは、他人からの評価という制御不能な荒波に揉まれにいくようなものです。
ランキングに一喜一憂してしんどいという方は、是非『自分軸で生きる』というのを意識してみてください。
ひょっとしたらあなたの趣味嗜好は、外れ値なのかも知れません。
ランキングの結果がふるわなくても、何一つとしてあなたは損なっていません。良い結果になれば少し喜ぶ。そのぐらいの付き合い方でいいと思うのです。
感想との付き合い方
作品を多数投稿していると、批判的なコメントや感想をもらうことがあります。中には作者に対する誹謗中傷まであり、それをきっかけに投稿をやめてしまうということもよくあることです。
ではそもそも何故批判的な感想がくるのでしょうか?
人は自らの経験をもとに、色眼鏡をかけて生活しています。見る人にやって感じ方が違うのはこの為です。感想をもらって「ああ、そういう見方もあるんだな」と思った経験は、誰しもあるのではないでしょうか。
問題なのは、読み手が作中の人物に同化しすぎているパターンです。この手の人は自他の分離が上手くできておらず、同化先の人物が困難な局面になると途端に攻撃的になります。
有り体に言ってしまうと、この手の問題は感想を書いた本人の問題です。だからそもそもあなたが何かを感じる必要がありません。そのネガティブな感情を受け止めてあげる必要はないのです。
ではどのように向き合うかというと、「この人は今こういう状態なんだな」ということを認めるのです。意見を受け入れるのではなく、ただそう在ることを肯定してください。人それぞれに成長のステップがあるのです。
そんなこと言ったって、頭で分かっても中々できないよ、と思うでしょう。
確かにすぐに実践するには難しいことです。少しずつこれができるようになっていくしかありません。
そしてこの手合いには決してムキになって相手の土俵で戦うようなことをしないことです。あなたの価値観の中に相手の意見を受け入れてしまえば、たちまち苦行が訪れることでしょう。
そして意図しない感想、それに対する自身の中に起こる反応というのは素晴らしい教示を与えてくれるものです。
きっと誰しも、こんな想いがあるでしょう。
「これだけ頑張って書いたんだから、伝わるはずだ」
しかしこれにははっきりと言います。その考えは甘えです。
その甘えの正体は他者への期待に他なりません。分かってくれる“はず”という他人任せな価値観です。
誰しも生まれが違えば育ちも違う。だから各々がかける色眼鏡は人それぞれで、どれだけ明確に表現しようとも作者から見た曲解はなくすことなどできないのです。
それが腑に落ちれば、もう悩まなくてもよくなります。
人の悩みというのは、自分でどうにもならない事柄から生まれるものです。それを諦めた時、つまり本来の意味通り道理を明らかにした時、悩みは消え去り後には創作の喜びしか残っていないことに気付いていることでしょう。
長編を書ききるには
二次創作、というより小説を二部すると大きく短編か長編に分かれます。
短編でも大きな感動を呼ぶことは可能ですが、やはり人の心に響きやすいのは長編でしょう。文章量の制限が少なく、作者の想いをあますところなく込められるのですから必定の帰結と言えます。
しかし二次創作においての長編は、そのほとんどが未完のまま。いわゆる『エタる』状態にあると言えるでしょう。
エタる理由は実に多くあるものです。
続きが思いつかない
仕事や学業が忙して書けなくなった
どんどん閲覧数が減ってきてやる気がなくなってきた
アンチが出てきて嫌になった
他の話の方が書きたくて放置している
作者死亡
このように多種多様な理由により、多くの未完の名作が生み出され続けています。中には未完のままの方が人の印象に残りやすいという心理を利用するケースもあるかも知れませんが、ほとんどが上記に挙げた理由の中に入るのではないでしょうか。
中にはどうにもならないものもありますので、心の持ちようでなんとかなるものにのみに絞って書いていきます。
続きが思いつかない
これは結構、あるあるではないでしょうか。せっかく人気が出てきてもそれがプレッシャーなって下手な続きを書けない、と自らハードルを上げたり、思いつきで始めて結末が思いつかないなどです。
この状態が続くと結局やる気をなくしてしまい、完結まで書ききることができません。
ではどうすればいいかと言うと、これはもうプロットを書いてくださいというのが最適解です。粒度は細かいほどいいですが、粗々でも構いません。
長編の大きな流れを、ちゃんと文章に起こして視覚化するのです。アウトプットすることによって話の流れを整理できますし、頭に隙間ができて更に着想を得たり、細かい話の流れが思い浮かぶようになります。
中には「プロットなんて一度も書いたことないぜ! なくても書けるぜ!」という方もいるでしょう。本当にそれで自分の書きたかった話を、余すところなく書き切ることができるのであれば本項は読み飛ばしていただいて構いません。
しかしプロットを書き出すことの効果は絶大なので、是非お勧めしたいです。そして思い浮かんだ新たなアイデアは、このプロットに書き足していくと良いでしょう。できれば、思いついた時すぐに。
人の脳の仕組みを知れば当然のことなのですが、フラッシュアイデアはすぐにどこかに行ってしまいます。人は自分が思っているよりも賢く、そして忘れやすい生き物なのです。中には忘れたことを忘れたなんてこともあるわけですから、忘却の力を舐めてかかるべきではありません。
プロットなんて書くの面倒だよ⋯⋯という方も多いでしょう。
では何故、長編を書ききりたいと思うのでしょうか?
それはきっとあなたの中にあるアイデアが素晴らしいものと確信していて、それを世に正しい形で届けたいと思っているからではないでしょうか。
しかし、書くと決めて始めたのに完結まで書けないと脳は「自分からやりだしたことを終わらせられなかったヤツ」とレッテル貼りを行います。そうなりたくないから、ちゃんと書ききりたい。そんな思いもどこかにあるのでしょう。
もしあなたがそうであるという自覚があるならば、プロットを書いて下さい。流れさえ大きく決めておけば、続きが思いつかないという事態はほとんどなくなっていくでしょう。
どんどん閲覧数が減ってきてやる気がなくなってきた
これも結構あるあるではないでしょうか。しかし閲覧数が減っていくのはとても自然なことです。急に閲覧数が跳ね上がるなんてことはほぼありません。読み始める理由より、読むのを止める理由の方が多いでしょうから。
しかしそのほぼないと否定した例外が発生しやすいのがハーメルンです。
ハーメルンはpixivよりもランキングに入る効果が高く、特に日間で一○位以内に入ると閲覧数は跳ね上がります。一度作品のファンが増えるとその後も安定した閲覧数になるので、閲覧数を気にする方はハーメルンで投稿する、またはpixivとマルチで投稿するとよいでしょう。
ただし、目指すべきは閲覧数を気にしなくなることです。
閲覧数などどうでもいい、この話を書かずして死ねるか! と言う熱い想いがあれば必ず書き終えることができるでしょう。
もちろんそれ程までの話が思いつけるかどうかは、また別の話です。これについては後述の『アイデア・着想を得るには』の項をご覧ください。
アンチが出てきて嫌になった
たまに強烈なアンチコメントを受けて「書く気無くしたからやめます」なんて光景を目にします。
これは前の項目(感想との付き合い方)に書きましたが、読む人によって受け取り方が違うのですから、いつかは出てくるでしょう。
ではその『いつか』とは、どういう時でしょうか?
それはあなたの作品が多くの人に読まれるようになった時です。
アンチが出てくるというのは、本来読むはずのなかった人にまで物語が届いている、と解釈することもできます。つまり人気が出てきた証拠です。
そしてアンチコメントがついた時に気を付けてもらいたいのは、その意見を吟味せずに自分の中に取り入れてしまわないことです。
前項の通り、人は色眼鏡をかけて生活しています。アンチコメには書いてないことまで勝手に想像して、悪いように捉えている意見が多くあります。それにどれほどの価値があるでしょうか?
あなたは人から受け取った感想、コメントを自分の中に受け入れるかどうか、選択権を持っています。アンチが出てきたら「何かよく分かんないこと言ってるけど、アンチが出てくるなんて人気になってきた証拠じゃないか!」と喜びましょう。
アイデア・着想を得るには
さて、少しメンタルとは話がそれますが、メンタルの維持にも繋がりますのでアイデアについても言及します。
色々と方法があるので、解説していきましょう。
神ってる状態になる
きっとあなたは『ゾーンに入る』、あるいは『フローに入る』という言葉を聞いたことがあると思います。スポーツでよく使われる言葉ですが、執筆にも当てはまる言葉です。
どんどんと台詞や描写が浮かんできて筆が止まらなくなる。急に面白い展開が思いついてきたなど、神が降りてきたなんて形容したくなる状態が長く続けば最高です。
この状態になるには次の条件が必要になるのが一般的です。
集中できる環境
十分な時間
その作業が楽しめること
明確な目的意識を持つ
つまり一人になって携帯の通知はオフ、一時間以上は自由に使える時間を作り、今日はどれだけ進めるかを決めて作業にかかります。その作業を楽しめる心境にあることが大切なので、気分が乗らない時は中々その状態になれません。
これらに留意して神ってる状態になったら、それはどういう状況の時になったのかを覚えておきましょう。
場所、時間、流している音楽⋯⋯環境を再現すればすぐ神れるわけではないですが、自分にとってのベストな環境を把握しておくのです。
あらゆるパターンを検証する
ここからどうしようか、展開に詰まった⋯⋯というのは、プロットを書いていたとしても大なり小なりあることです。
そんな時は以下のパターンで考えて見ましょう。
描きたいシーンから逆算して展開する
出会ったことのない登場人物同士を会わせる
登場する予定の人物が出てくるタイミングを変える
登場人物それぞれの立場に没入して考える
考えれば考えるほど、今まで思い描いていたものと違うパターンが浮かんでくると思います。その中でどれが一番おもしろくなりそうか、その場面の登場人物にとって一番自然な行動か、検討していくと見えてくるものがあります。
一旦離れる
これは仕事で手が止まった時や考えが堂々巡りになった時にも有効なのですが、どうしても思いつけないなら一度作業を止めましょう。未完了のタスクとして頭の中に残して別のことをするのです。
これをすると脳はどういう働きをするかと言うと、詰まってしまったという問題を顕在意識から潜在意識へと(完全ではないにしろ)移動させます。そして有能な人間の脳は棚上げにしていた問題に対しても思考を働かしているのです。
全く別のことをしていたり、リラックスして別のことを楽しんでいる時にふとアイデアが降りてくるのはそういう作用が働いているからなんですね。
こうして離れている時に、他の人の作品やまったく別ジャンルの作品を読むのもいいでしょう。なるほどそういう考え方もあるのかと、何かしらのヒントに出会える確率も上がります。
身体を動かす
稀代の作曲家・ベートーベンは五線譜とペンを持って散歩にいき、思いついたアイデアを書き記していったと言います。近年ではスティーブ・ジョブズがアイデアをまとめたり重要な話をするのにウォーキング・ミーティングをしていたのは有名な話ですね。
実体験からの話になりますが、私はよくランニング中や登山中に話を思いつきます。特に自然の中にいる時が一番アイデアが湧いてくるように思います。
しかしいきなり「山に行こう!」とか「ランニングをしよう!」なんて言うつもりはありません。
前出のようにまずは散歩から始めてみてはどうでしょうか。携帯で執筆できる環境を作って外に出て歩くだけです。1~2km歩いているうちに、次々と展開やセリフが思いつくことに気付くでしょう。
私が散歩よりオススメするのはジョギングです。ランニングほど心拍数を上げて走るのではなく、喋りながらでもこなせるような、ゆっくりとした速度で走るのです。
運動の効果は今さら語るまでもありませんが、ジョギングをおすすめする理由は脳への振動です。詳しい話を語りだすと長くなるのですが、脳への適度な振動は脳を鍛えることに繋がります。簡単に言えば、頭がよくなって話を作り上げる効率も上がるのです。
アイデアに限った部分で話をすると、ジョギング等の運動により脳への血流が増加すると情報の整理を司る『46野』が活性化し、ひらめきを得やすくなります。
メンタル面で言えばセロトニンを始めとした様々な脳内物質が分泌され、気持ちが前向きになれます。気分が上がらなくて書けない、続きが思いつかないなんていう時は散歩やジョギングをしてみましょう。
走る、と言うとぜぇはぁしながら走るのが辛くて続かない、という人が多いですが、それは最初から頑張りすぎです。息が切れない程度に走ること(=ジョギング)から取りかかるのが運動を始めるコツなので、ぜひ習慣にしてもらいたいですね。
まさか二次創作の書き方で運動を勧められるとは、とお思いでしょうが、本当に効果がありますので試してみて下さい。
最後に
ここまでお読みくださりありがとうございました。
二次創作小説の書き方【メンタル編】はいかがだったでしょうか。
ここに書き記したことは他の活動や対象に置き換えて考えても有用なものになっているのではないか、と自負しています。
これにて『二次創作小説の書き方』はお終いです。
これらの記事があなたの創作活動と人生の糧になることを祈って筆を置きます。
お付き合いくださり、本当にありがとうございました。