【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・2
僕が行くと、かっちゃんは畳敷きの上の布団を畳んで脇によせ、おいでおいでと手招きした。僕は昔から、かっちゃんの話を聞くのが好きだった。
「かっちゃん、なんかお話して?」
僕がせがむとかっちゃんは必ずなにか話をしてくれた。
「じゃあきょうはおじいさんランドのはなしをしよか」
「おじいさんランド?! してして!」
僕は声を弾ませる。
「ええんか? 途中で怖なってもしらんよ」
かっちゃんは言うけど、かっちゃんの話が怖かった例がない。
「南半球って知ってるか?」
「うん。学校で習った」
「ほな、オーストラリアは知ってるな」
「うん」
「オーストラリアよりちょっと南に、おじいさんランドっていう島があるんや。そこには世界中のおじいさんが集められてんねん」
「へー!」
僕はいたく感心する。かっちゃんのはなしは全部本当だと思っている。
「人間はおじいさんになると、強制的におじいさんランドに連れていかれるんや」
「怖い~」
「住人の八割はおじいさん」
「あとの二割は?」
「犬」
「へー!!」
僕は横に座ったかっちゃんにすり寄ってゆく。
「じゃあ、おじいさんたちは毎日なにしてるの?」
「ブロッコリーをつくっちょる」
「えー。僕、ブロッコリーちょっと苦手だ」
「ブロッコリーを食べるときは、おじいさんたちのしわがれた手を思いだすんや」
しわがれた手でブロッコリーを収穫するおじいさんを想像した。僕の想像のなかでは、ブロッコリーは一個一個、木のように、ちょっこりと大地から生えていた。おじいさん、ブロッコリーを育てないで。僕はブロッコリーが苦手なんだ。チョコレートとかを育ててくれると助かります。