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【スポーツ心理学#14】練習や指導の環境を改善するには?
こんにちは。早川琢也です。
以前のブログで、スポーツ心理学で出来ることについてまとめてみました。
この時は、「実力を伸ばすのにスポーツ心理学が役に立つこと」と「プレッシャーを克服するのにスポーツ心理学が役に立つこと」の2つについて紹介しました。
ですが、これら以外にもスポーツ心理学がスポーツで出来ることはまだまだあります。
そこで、スポーツ心理学を活用することで解決出来ることや、改善出来ることなどを紹介していければと思っています。
今回は、「システムや環境を改善するのに、心理学系の理論は役に立つ」がデーマになります。
少しイメージしにくいかもしれませんが、身近な例などを紹介しながらスポーツ心理学の理論が応用されている様子をお伝えできればと思っています。
環境とは、物理的な環境だけじゃなくて、周りの人との関係性も含まれる
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スポーツ場面で「環境」と聞くと、おそらく多くの方は練習場や天候など、物理的な環境をを思い浮かべるかもしれません。
実際にこのような物理的な環境も意味していますが、意外と見落とされがちなのは、選手と関わりのある指導者、保護者、チーム関係者など選手を取り巻く周りの人からの影響です。
例えば、気心知れた仲間達と一緒にサッカーをするのと、全く知らない人同士でサッカーをするのと、苦手な人や嫌いな人と一緒にするサッカーとでは、プレーした時の感情やパフォーマンスが変わってくるのは想像出来るのではないでしょうか。
サッカーそのものは変わりませんが、一緒にプレーする人が変わるとプレーの質が変わってくるのは、まさに周囲の人という「環境」から影響を受けたからだと考えられます。
いいパフォーマンスの発揮をするには個人の努力はもちろん欠かせませんが、同時にいいパフォーマンスが発揮しやすい環境整備も、パフォーマンス発揮のサポートの1つと言えます。
これは、コーチ、保護者、チーム関係者だからこそ出来る選手へのサポートとも言い換えられます。
スポーツ心理学や教育心理学でよく使われるモチベーションの理論の1つに、運動を長期的に続けたり運動の上達や満足感を高めるために必要とされている、内発的動機と呼ばれるものがあります。
スポーツを楽しんだり、長い期間成長し続けたり、運動への満足感なやる気を高めるには、選手が持つスポーツを好きな気持ちや興味、成長する喜びといった選手の内側から湧いてくる気持ち(内発的な動機)によってスポーツをするのが好ましいとされています。
しかし、いくら選手がスポーツを好きでも、コーチや保護者の関わり方によっては、この内発的な動機を持つことが難しくなってしまうこともあります。
これまで自分が好きでやっていたスポーツや趣味が、周りの人からやらされるようになったことで、何だか以前より楽しめなくなった。
自分で楽しんでいたスポーツが、周囲から期待されるように感じてからは楽しさよりもプレッシャーの方が強く感じるようになった。
こんな経験はありませんか?
これは、選手の周りの人が一方的にスポーツをすることを押し付けたり、外的な理由(お金がもらえる、怒られるなど)などの外発的な動機によってスポーツや趣味をやるようになった事が関係しています。
このように、自分の興味でスポーツを楽しもうとしていても、周りからの影響を受けて知らず知らずのうちにやらされてスポーツをしていた、といったことは珍しくはありません。
このような場合は、選手だけの課題として解決するのは難しいので指導者、保護者、チーム関係者が、選手に影響を与える存在であると理解して、選手の内発的なやる気を高めるアプローチが必要になってきます。
システムに理論を組み込む(例:内発的な動機を高める)
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前述の、環境としての周り人が選手の内発的動機に与える影響について、もう少し深掘りしてみます。
先程出てきた、選手の内発的な動機を高めるには、
・スポーツや取り組んでいることを上達を求める欲求(有能性)
・自分で選んでいる、自分の意思で取り組んでいるという自己選択の欲求(自律性)
・仲間、コーチ、チームに対するつながりや帰属意識を求める欲求(関係性)
の3つが満たされることで高まりやすくなります。
つまり、選手の内発的な動機を高めるには、ただ選手に「スポーツを楽しもう!」と声かけするよりも、有能性、自律性、関係性が満たされやすいチームづくりをする方が効果的と言えます。
そこで、チームとして出来ることの1つは、チーム全体として心がける取り組みを決めて共有することです。
例えば、コーチが出来ることとしては、
・有能性を高めやすくするために、仲間が上達したプレーを認めて褒める
・自律性を高めるために、練習によっては、選手がいくつかある練習の中から1つ選べる時間を作る
・関係性を深めるために、コーチから話しかける機会と同じくらい選手の話を聞く時間を作るようにする
といった取り組みが考えられそうです。
これを選手同士が共有する取り組みとして落とし込むとしたら、
・仲間の成長やいいプレーに対してポジティブな声をかけるようにする
・「これをやれよ!」と一方的な声かけから「どんなプレーがしたい?」と聞くようにする
・練習中に2、3人のグループを作ってプレーの意思疎通が出来ているかを確認する
といった取り組みが出来そうです。
このように、有能性、自律性、関係性の理論に適した取り組みをチーム共通のルールや取り組みとしてシステム化することで、内発的な動機が高まりやすいチーム環境を作ることが出来ます。
内発的動機や外発的動機についてはこちらの記事でも紹介していますので、もしよろしければご覧ください。
終わりに
今回は、内発的動機に関係する理論を例に挙げましたが、他にもさまざまな心理学の理論を使ってチーム環境を良くしていくことは可能です。
近年のスポーツ心理学の研究では、選手と指導者の関係を「環境」として捉えて、狙った心理面に対してポジティブな効果が期待できるような取り組みを検証する研究が増えてきました。
これまで、あまり注目されてこなかった、他者からの影響としての環境ですが、このブログをきっかけが考えるきっかけになれば幸いです。
早川琢也
参考文献
Bean, C., & Forneris, T. (2017). Is life skill development a by-product of sport participation? Perceptions of youth sport coaches. Journal of Applied Sport Psychology, 29(2), 234-250.
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Intrinsic and extrinsic motivations: Classic definitions and new directions. Contemporary educational psychology, 25(1), 54-67.
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![早川 琢也, Ph.D.](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/21839217/profile_cff108fa09d2b1b9adf5b91acb44d1de.jpg?width=600&crop=1:1,smart)