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『ザ・プロフェッショナル』(34)
『ザ・プロフェッショナル』
21世紀をいかに生き抜くか
ダイヤモンド社 2005年9月29日 第1刷発行
<目次>
はじめに 予言は自己実現する
第1章「プロフェッショナリズム」の定義
第2章 先見する力
第3章 構想する力
第4章 議論する力
第5章 矛盾に適応する力
第3章 構想する力
第4章 議論する力
大前研一氏は「学校では教えてくれない、リーダーシップをとるための思考力とは?」と題して記事を書いています(2012.05.08)。
基本的な共通言語は、事実を積み重ねる議論の仕方です。AはBですね、BはCですね、したがってAはCになりますね、という話です。このような言い方ができること自体が、実は英語よりももっと基本的な世界の共通言語なのです。しかも、AはBですと主張するときに、自分の意見を言うのではなく、客観的な事実を根拠にするわけです。つまり、ファクトベースでの議論(事実に基づいた議論)を展開するのです。また、反対意見があれば十分に聞いてみて、自分の今の考えと照らし合わせた上での妥協点を探ることで、相手も受容性が高まる。そして、みんなで決めたことはやっていこうという流れになり、結果的には誰よりもアクション実行のスピードが速かったりや実行能力が高まるのです。そういう企業や個人が、リーダーとして大きな成長の機会を捉えて伸びていくのです。これは世界のどこにいても同じことだと思います。
この記事の中のキーワードは「ファクトベース」です。
事実に基づくという意味です。
物事の考え方には、「ファクトベース」と「心理学ベース」という2つがあります。
マッキンゼー・アンド・カンパニーは「ファクトベース」で物事を考え、問題解決に活かしています。
今回は、「ファクトベース」で考え、議論することで気づきが得られるということを大前氏は指摘しています。
自分の思い込みや思考のクセを排除し、ファクト・ベースで考え、議論する。その結果、変わらなくてはいけないのは自分であり、自社である、という発想ができるかどうかがいま問われているのです
自分の思い込みや思考のクセを排除し、ファクト・ベースで考え、議論する。その結果、変わらなくてはいけないのは自分であり、自社である、という発想ができるかどうかがいま問われているのです。
このような客観的な態度で、時には徹底的に討論したり、いま一度本質を問うような書生論を交わしたりするなかでこそ深い議論が実現し、おのずと構想力は鍛えられていきます。
残念ながら、予定調和を図ろうとする車座の議論からは何も生まれません。いま必要なのはコンセンサスではなく、自分に見えている世界を主張することです。
そしてあらゆる個性をぶつけ合って、さらに世界中でだれも発想していないような世界観、事業観を生み出すのです。
議論する力は構想の質を高めるだけでなく、構想を実現するうえで欠かせない能力です
日本にも、世界を相手に戦えるビジネス・プロフェッショナルは大勢います。しかし、「議論する力」に関しては、まだまだ発展途上にあると言わざるをえません。
議論する力は構想の質を高めるだけでなく、構想を実現するうえで欠かせない能力です。
先見力や構想力は個々の才覚による部分も少なくありませんが、議論する力はだれでも訓練によって後天的に学習可能です。
儀式的なOHPのプレゼンテーションを、おだを上げるような自慢話を、紳士クラブ的な談笑を、上司のひそみに倣うといったご追従を、とにかく無駄で凡庸な行為は追放しました
その代わりに、ビジネスの現状をためつ、すがめつ観察して、そこに見出される問題について徹底的に議論することを要求しました
非生産的な議論を忌み嫌うという点では、IBMの前CEO、ルイス・ガースナーも負けていません。ジョン・エーカーズまでのIBMの会議は、始まる前に結論が決まっていました。
日本のお家芸である用意周到な「根回し」が粛々と執り行われていたわけです。
会議は和気あいあいとした雰囲気で、それゆえ問題は避けて通り、あらかじめ用意されていた結論をしゃんしゃんと追認する場でした。
ガースナーは容赦なく、これをぶち壊しました。儀式的なOHPのプレゼンテーションを、おだを上げるような自慢話を、紳士クラブ的な談笑を、上司のひそみに倣うといったご追従を、とにかく無駄で凡庸な行為は追放しました。
その代わりに、ビジネスの現状をためつ、すがめつ観察して、そこに見出される問題について徹底的に議論することを要求しました。
地震発生から1週間 福島原発事故の現状と今後
(大前研一ライブ579) 2011/3/19収録
大前研一 × 堀江貴文 「日本のテクノロジー」対談(完全版) 2013/12/18
➳ 編集後記
『ザ・プロフェッショナル』という本について
『ザ・プロフェッショナル』 はプロフェッショナルとは何か、プロフェッショナルになるために必要な考え方や行動の仕方、さらに何を身に着けなければならないかについて書かれた本です。
一言でプロフェッショナルと言っても、業界や職種によって求められる資質は異なるかもしれませんが、そこには共通点があるはずです。
そのあたりにも着目してご覧ください。
🔴「ビジネスの現状をためつ、すがめつ観察して、そこに見出される問題について徹底的に議論することを要求しました」
まず先に、ルイス・ガースナー氏について簡単に触れておきましょう。
ガースナー氏は大前氏と同じく、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身です。
そして、図体がでかくなり機能不全に陥ったIBMを大改革した名経営者です。
ガースナー氏の著作は面白かったですよ。タイトルが目を引きます。
話が前後しましたが、会議は形式的ではならないということです。
ガースナー氏は会議は徹底的に議論する場であり、「結論ありき」ではないということを示したのです。
ガースナー氏はIBMを退任後、米投資会社カーライル・グループ会長を歴任しました。
カーライル・グループは日本の新聞の紙面に登場することがあります。
⭐カーライル・グループに関する最近の記事
大前氏はプロフェッショナルの中のプロフェッショナルと断言できます。
✅ 大前氏は『ザ・プロフェッショナル』の中でプロフェッショナルという言葉が安易に使われていることに対する警鐘を鳴らしています。
プロ中のプロの大前氏の言葉だけに非常に説得力があります。
世間一般では、本業としてカネをを稼いでいる人がプロで、本業としてでなく、カネを稼ぐことが目的でない人がアマという分け方がありますが、大前氏の考え方ではそういうことではない、ということになります。
道なき道、ルールのない世界でも「洞察」と「判断」をもって組織を動かしていけるのがプロフェッショナルです。
大前氏は、パスファインダー(pathfinder=探検者、開拓者)という言葉をよく使います。
次回以降も大前氏の考える「プロフェッショナル」の概念とプロフェッショナルを育成することの必要性等をお伝えしていきます。
下記に掲載した書籍も知的刺激を受ける名著です。
『大前研一 新・経済原論 世界経済は新しい舞台へ』は
本書は2005年3月に米国で出版された The Next Global Stage ----- Challenges and Opportunities in Our Borderless World (Wharton School Publishingより刊行) の日本語への翻訳である。発売以来ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、中国、韓国、トルコ、アラビア、インドネシア、オランダなど世界の主要言語に訳されており、日本語版が最後となった。
日本版へのまえがき p.v
という本です。ページ数は全503ページという大書です。
ですが、濃い内容を平易な言葉で書き、具体例を豊富に掲載していますので、読みやすく理解しやすくなっています。訳者の力量も寄与していると思います。
大前氏のどの本でも知的刺激を受けますよ。
いずれの日にかこの本を取り上げることになるでしょう。
奥付を見ますと、次のようになっています。
2006年9月14日 第1刷発行
2006年11月1日 第3刷発行
東洋経済新報社
今読んでも全く古さを感じません。大前氏の考え方が先行し、時代が後からついてくると考えるのが、相応しいと思っています。
世界のメディアは大前研一氏を高く評価しています。
英国エコノミスト誌は現代世界の思想的リーダーとしてアメリカにはピーター・ドラッカーやトム・ピータースが、アジアには大前研一がいるが、 ヨーロッパ大陸にはそれに匹敵するグールー(思想的指導者)がいない、と書いた。
同誌の1993年のグールー特集では世界のグールー17人の一人に、また1994年の特集では5人の中の一人として選ばれている。
2005年の<Thinkers50>でも、アジア人として唯一、 トップに名を連ねている。
私が考える大前研一氏の考え方
🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。
Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。
あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。
大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います。
私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。
➔ 大前氏の言葉は、いつでも私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。
🔶 大前研一氏と私は年齢がちょうど一回り(12歳)離れています。
しかし、その年齢以上に遥かに頭の中身と行動力に差がある、と大前氏の著作を読むたびに痛感します。
構想力、コンサルタント力、提案力、実行力……。
どれをとっても私が及ぶようなものは何一つありません。
それでも、いや、だからこそ大前氏の著作やメルマガを通じ、大前氏の考え方を素直に受け入れることにしているのです。
時には、かなり厳しい表現も見受けられますが、それは大前氏がそれだけ真剣に物事を考え、モノマネではなくオリジナルな提案をし、自ら実行しているからです。
そうした姿勢をいつも背中から見ていて、頼もしく感じ、(勝手に)この人に師事し、グールー(思想的指導者)と仰いでいるのです。
🔶 大前研一氏と私とは年齢が一回り違います。大前氏は1943年2月21日生まれで、私は1955年6月30日生まれです。
大前氏は、私にとってはメンター(師匠)でもあります。もちろん私が勝手にそう思っているだけです。
🔶 大前氏は評論家ではありません。言うだけで自分では何もしない人ではありません。大前氏は行動する人です。だから大前氏の提言は説得力があるのです。
大前研一オフィシャルウェブ
このウェブサイトを見ると、大前氏の出版物一覧を見ることができます。
私は、大前氏の全出版物の半分も読んでいませんが、今後も読んでいくつもりです。
⭐ 出典元: 大前研一 オフィシャルウェブ
大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。
🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。
『企業参謀』(1985/10/8 講談社)という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。
それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。
『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』( 1986/2/7 講談社)が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。
🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。
大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。
⭐お知らせ⭐
前回の『ザ・プロフェッショナル』(28)までの元記事は7年前(2015.06.23)まではFC2ブログに投稿していました。
ところが、前回の編集後記で書きましたように、2015年6月に妻が体調不良になり同年8月にこの世を去りました。
そのため、深い悲しみが全身を覆い、心身ともに疲弊し、ブログを更新することができなくなりました。
というわけで、『ザ・プロフェッショナル』(29)以降の投稿は書き下ろしになります。
✑ 大前研一氏の略歴
大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本の経営コンサルタント、起業家。マサチューセッツ工科大学博士。マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長等を務める。 (Wikipedia から)
大前研一氏の略歴補足
大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。
その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。
都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。
大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。
⭐今までご紹介してきた書籍です。
⭐私のマガジン (2022.11.10現在)
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