■第9回 不祥事へのリスクマネジメントの基本ルールは3S
1 不祥事はどんな組織にも、どこかで突然起こり得る
企業にとどまらず、政治や官公庁、大学、スポーツ団体などさまざまな組織において、リスクマネジメント(危機管理)の問題が注目されています。
特に不祥事が発覚した際に、組織としてどのように対処すべきかでその後の状況が全く変わってしまうこと、その悪い事例をここのところ何度も私たちはニュースで目にしてきました。
不祥事はどんな組織にあっても時として起こり得る“あるある問題”。ということで、第9回は不祥事へのリスクマネジメントについて取り上げます。
本来リスクマネジメントは、組織におけるあらゆる危機を指すため、実に広い範囲を含んでいます。
そのため企業においてリスクマネジメントを統括しているのは、大手企業においてはリスクマネジメントそのものの名を冠した専門部署であったり、法務部、または経営企画部の一部など本部機能の一部として置かれているようです。しかしリスク自体はこれらの統括部門で起こるわけではありません。
システムであればシステム部門、商品の品質であれば生産部門、社員個人に関することでは現場や人事部門、お金に関することであれば、やはり現場や経理や財務というように個々の部門で発生するのです。しかも発生レベルは個別に異なります。
「再発しないように手を打とう」で終われるものから、一度で組織自体が退場に追い込まれ(企業でいえば倒産など)、社会復帰が困難な段階のものまで。
個々の部門の専門的な世界となると本部の統括部署だけでは判断できず、両者が綿密に協力し、発生レベルを正しく判断した上で対処を進める必要があります。
また有罪か無罪かといった法的な判断とともに、世間の常識からは許されないといった社会的な判断もあります。前回取り上げたセクハラ問題などのように法的に追及されなかったとしても、社会が許さないこともあるでしょう。
加えて実際の不祥事発覚時のリスクマネジメントの基本プロセスは、複雑で多岐にわたります。
リスクの特定から始まって原因の特定、現状把握と継続や再発の可能性の確認、当面の影響度の算定・評価、将来的な影響度の算定・評価、対応策の洗い出しと評価、対応策の決定、実施時期と工程の検討・決定など。慎重にやるとなると、専門性と経験、時間も必要です。
これらを十分に終えてから広報へといきたいところですが、大抵の場合時間的な余裕はありません。現場にも専門部署にも多くの経験があるわけでもなく、外部の専門家に相談できたとしても誰もがおろおろするばかりでしょう。
まして専門部署を置く余裕などない中小企業においては、いざとなったときに正しい判断や対応ができるだろうか。対応を間違って意図せず退場を迫られないかと不安は尽きません。
組織における不祥事はある日突然発生したり、以前から発生していたことが、ある日突然発覚するというケースがほとんどです。しかもどの部署の誰が何を起こすかはなかなか予測できません。
これでは不祥事発生時に、上が慌てるなといくら言っても無理でしょう。
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