見出し画像

■第11回 「ポスト不足」と「若手の昇進拒否」は根っこが同じ

1 シニアの「ポスト不足」問題の一方で、若者は…

 今回の『組織や仕事のあるある問題、こうして解決』は「ポスト不足」問題を取り上げてみたいと思います。

 昇進したくてもポストがない、先がないことが分かってしまったといった話は、主に40代以降の方からよく耳にします。大手金融機関に勤めている知人は、30代の頃にすでにそんなことを言っていました。自分はコースから外れてしまった、あとは上には行けない、大体見えてしまったと。まるで人生の敗北宣言をしているようでした。

 ポスト不足でこれ以上昇進できそうにないと悲観したり、社内での扱いの違いから人生における敗者になってしまったと感じているシニアは少なくないのでしょう。

 若手社員に出世・昇進意識について質問した調査(1都3県在住の20~39歳男女、2015年)によれば、20~30代で出世意向があるとの回答は全体の約4割で、したくない・こだわらないの約6割を下回っているというのです。

 「若手の出世意欲が弱いことは前から言われている」ことでもあります。40代くらいから上の方は、「われわれは昇進したくてもポストがない。若い人はライバルが少なくていいじゃないか、うらやましい」と思うかもしれません。でもちょっと待ってください。

 出世・昇進とは基本的に、マネジメントという会社組織にとっては重要なポストに就くことです。希望者が減ってしまっては、より優秀なマネジャー、経営幹部を選ぶことができなくなってしまわないでしょうか。

 それでは日本企業はグローバル化する世界では勝てなくなってしまいます。

 調査結果を男女と年代で分けて見てみると、「絶対出世したい」「できれば出世したい」の合計は、男性20代で約6割、「出世したくない」「出世にこだわりなし」の合計が約4割。男性30代でそれぞれ約4割と約6割です。20代では出世したいがしたくないを上回っているのに30代で逆転しています。女性は20代で出世したいが約3割に対し、したくない・こだわりなしが約7割。30代でも年代による変化がほとんどありません。

 出世したくない理由を見てみましょう。1位は「ワークライフバランスのとれた生活をしたいから」、2位「責任の範囲が広がるのが嫌だから」、3位「出世をしても給与・年収がそれほど上がらないから」。1位の理由は、仕事に求めるものが変わってきている、あるいは多様化してきているといえるでしょう。

 社会に出たら仕事が全てではなく、プライベートな生活や趣味なども楽しみたいと。以前より日本社会が豊かになった証拠です。2位と3位の理由は気になります。「出世をしても責任が重くなるだけで、給与・年収がそれほど上がらない」と見切ってしまっているのでしょう。

 仕事は報酬ありきというつもりはありませんが、プロスポーツ界を見れば分かるように、トップ選手が高い報酬を得ているスポーツほど人気があります。裾野も広がり、高い才能が集うことで世界に伍(ご)して戦えて、未来も明るいことでしょう。会社組織においても、出世をすれば責任の重さや頑張りに見合った高い報酬や称賛が得られるのであれば、若者の出世意欲も高まるのではないでしょうか。

 女性の出世・昇進したいが最初から低いことにも注目するべきでしょう。

 恐らく出産・育児を想定した場合、責任の重い仕事だと突然休みを言い出しにくい。キャリア自体もそこで一旦ストップ、いやしばらく育児に専念したいと思うとリセットさえされかねない。そう考えて出世・昇進にちゅうちょしているのではないでしょうか。子どもがいるいないにかかわらず、夫の転勤についていくために、仕事を辞めざるを得ないという話も耳にします。

 また私は大手企業の部長向け、課長向けの研修講師を務めることがありますが、対象者はほぼ全員男性です。女性は課長クラスでよくて1~2割、部長クラスになるとほぼ皆無といっていいでしょう。政府が女性活用を声高に叫んでも、ほとんどの仕事の現場は(官公庁も含めて)相も変わらず男性が多数派、女性には生きづらい社会なのです。

 「出世をしても責任が重くなるだけで、給与・年収がそれほど上がらない」上に、結婚、出産・育児もあっていばらの道となれば、女性が最初から出世・昇進に二の足を踏むのも理解できます。

ここから先は

6,484字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?