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ベネデッタ(2021)

ポール・バーホーベン監督「ベネデッタ」を観た。

ジュディス・C・ブラウン著「ルネサンス修道女物語-聖と性のミクロストリア」からスタートしたという本作は、幼い頃からキリストのビジョンを見続け、聖痕や奇蹟を起こし民衆から崇められた一方、同性愛の罪で裁判にかけられたベネデッタ・カルリーニの生き様を生々しく、加えて17世紀の教会や修道院の姿までを描く。

「完全に男が支配する社会と時代に、才能、幻視、狂言、嘘、創造性で登り詰め、本物の権力を手にした女性」と監督が語るベネデッタ。

金品を強奪しようとした強盗のひとりの顔に鳥の糞が命中したり、聖母像の前で祈りを捧げているとその像が倒れて押し潰されるが無傷だったり、イエスのビジョンを見たり、聖痕が現れたり、死んで生き返ったり… そこで起きていることは偶然だったり、(ハッキリとは描かれないが)ハッタリだったりするのだろうが、要は、それを周囲の人が"ホンモノ"だと受け止めるか否かが"奇蹟の奇蹟たるゆえん"なのだ。

映画で描かれるベネデッタの姿も、狡猾に奇蹟を演じながら、その奇蹟の中に自身が飲み込まれており、(多分)自分でやったことでさえ自分で奇蹟だと思ってしまっている(または、思い込もうとしている)、最後の最後には信心深い人間として描かれていて、実に興味深い。

それにしてもポール・バーホーベン監督は80歳を過ぎてなお、「氷の微笑」「ショーガール」「エル ELLE」から変わらず、生のエネルギーに溢れた女性を生々しく力強く描いて、全く年老いていないのが凄い。

とにかく、強烈! 人間の姿をありのままに描写する監督だけにR18+指定ではあるが、この作品を作り上げるためなら、R18+上等である。

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