カラミティ(2020)

レミ・シャイエ監督の2020年作品「カラミティ」を観た。アヌシー国際アニメーション映画祭2020で長編部門のクリスタル賞を受賞したアニメーション作品。

家族と共に大規模な幌馬車隊に加わり西に向けて旅を続ける主人公、12歳のマーサ・ジェーン・キャナリー(のちに、西部開拓史上、初の女性ガンマンとして知られるようになる人物)。

旅の途中、父親が暴れ馬で負傷し、幼い妹弟を守る立場になったマーサが、もともとやんちゃだった性格も味方して乗馬や馬車の運転を習得。動きやすいようにとスカートをやめ、ズボンをはいて男の子顔負けの行動をするようになると、古い慣習を大事にする旅団の面々から「女の子なのに何てことするんだ!?」と非難され、軋轢が生じる。

そんな中、マーサは野獣に襲われたところを助けてくれたサムソン少尉と仲良くなり、彼を幌馬車隊に紹介したことから思わぬトラブルが発生し、マーサはその解決のために、ひとり旅立つことになる。

旅を通じてマーサがさまざまな経験をし、人間として大きく成長していく物語を、躍動感溢れるアニメーションで描く。

どこの国でもあった(現在でもある)「男子は、女子は、こうあるべき!」と画一的に決められていた"ルール"または"常識"を打破する勇敢な女性の物語だと受け取ればさほど気にならないかもしれないが、特に前半のマーサの行動には(男女関係なく)特に他人に対して行き過ぎた行動が目立ち、共感できない。

一方、そんなマーサが女性らしくないとぐだぐだ文句を言って、彼女を仲間外れにする大人たちには、より一層共感できない!

こういうことが常識だった時代に、こんな少女がいて、こんな風に常識を変えていったのだよ。と、昔話を聞いているように淡々としたスタンスで観れば良いのだが、どうしてもこの共感できない人々に引っかかってしまう…

でも、物語はさておいて、この映像の素晴らしさは、まさに「なんということでしょう!!!」といったレベル。

輪郭線を描かず、背景から大道具、小道具、人物に動物まで、画面に映し出されるすべてのものをベタ塗りの色彩と陰影で絵画的に描くビジュアルは、あまりにも見事。どの場面で止めても絵画になる美しさ。よほどの色彩感覚がないとこんな絵は作れません。ビジュアル面では、完全に脱帽です!!!

素晴らしい芸術作品を見せてもらったなあ!



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