見出し画像

憐れみの3章(2024)

ヨルゴス・ランティモス監督「憐れみの3章」を観た。まさに、驚異の怪作!!!

最初から最後まで不協和音の音楽にゾクゾクとさせられる、めちゃめちゃ気持ち悪い映画で、凄く癖が強いけど面白い、不条理小噺3本立てだった。

だいたい50分くらいのお話が3本入ってるんだけど、それぞれが濃厚な味付けなので、映画3本を観たような"胃もたれ感"が残ります。あまりに酷いお話を、あまりにも滑稽に描いてて、もう笑うしかないという…

「RMFの死」と名付けられた物語は、人生の全てを上司の指示通りに生きることで幸せに暮らしてきた男が、あまりにも過度な要求に耐えられずたったひとつの命令に従わなかったために、「じゃ、もういいよ、あとは自由に生きなさい」って放り出された途端、自分で決めなければならない人生の困難さに直面するお話。

「RMFは飛ぶ」と名付けられた物語は、海難事故で妻が行方不明になり、てっきり死んだものだと泣き暮れていた主人公のところに、ある日妻が帰ってくる。喜んだのも束の間、帰ってきた妻は食事の好みも変わり、足のサイズも変わり… もしかしてこれは別人なのではないかと恐れた主人公は妻を試すためにとんでもない要求をするというお話。

「RMFはサンドイッチを食べる」と名付けられた物語は、信仰宗教にハマった女性が、教祖様の要求に沿った奇跡の能力を持つ特別な人物を懸命に探すお話。

3本の物語で、同じ俳優チームが、それぞれ別の役を演じているのも面白い。中でもジェシー・プレモンスの役の振れ幅は特筆すべきものがある。

原題は「KINDS OF KINDNESS」なんだが、「親切のさまざまな形」とでも言うのでしょうか? 何もかも指示して準備してくれる親切、何もかも言われたことを忠実に実行する親切、過度な要求に応える親切、教祖様の条件を満たすためにプールに飛び込む親切???

予告編や本編冒頭でもかかっていた楽曲、ユーリズミックスの「スウィート・ドリームス」の歌詞にある、「人を利用しようとする人もいれば、人に利用されたい人もいる。人を虐待したい人もいれば、人に虐待されたいと望む人もいる」という文脈がそのまんま物語になっているとも…

"支配する側と支配される側"という関係性を極端な形でひねくれた寓話にした物語は、監督とエフティミス・フィリップの共同脚本。監督の初期作品「籠の中の乙女」から「ロブスター」「聖なる鹿殺し」などのコンビで、意地悪で不条理なテイストは変わらずも、今回は有名で芸達者な俳優が演じたことと、ひとつひとつの話が短かかったことが功を奏して、ギリギリちょうど良いバランスに仕上がったのでは?と思った。

この映画を"面白い"と言っていいのか? 人に勧めていいのか? よくわかんないけど、驚異の怪作!!!であることは間違いなし!

途中に出てくる"犬の惑星"も楽しいかったです。

https://www.searchlightpictures.jp/movies/kindsofkindness

いいなと思ったら応援しよう!