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ウェールズ語とその言語景観

#今年学びたいこと #ウェールズ語

 同系のケルト諸語と比較しても、ウェールズの言語景観は独特である。例えば、スコットランドゲール語と英語の二言語表記は現地語話者率が高いハイランド地方に限定されている。アイルランド語はそもそも憲法で第一公用語であると定められていることに加え、道路標識の場合は斜体で表記されるなど、現地語と英語とを同等のものとして扱っていない。対してウェールズ語は話者率とは無関係にウェールズ全域で使用されており、法的にも視覚的にも英語と同じ位置づけ(色・大きさ・フォントが同じ)で扱おうと試みていることが見てとれる。

スコットランドゲール語の例 使用が話者率の高い地域に限られているうえ、橙色など英語と異なる表示になっていることが多い
https://www.google.com/search?q=Scotland+Road+Sign%2C+BBC&tbm=isch&ved=2ahUKEwiMitfxoe-DAxX5fqQEHS8zBmgQ2-cCegQIABAA&oq=Scotland+Road+Sign%2C+BBC&gs_lcp=CgNpbWcQAzoECCMQJzoGCAAQBxAeOgcIABCABBAYOgQIABAeOgYIABAFEB5QhQZY5xBg4RJoAHAAeACAAVmIAc8DkgEBNpgBAKABAaoBC2d3cy13aXotaW1nwAEB&sclient=img&ei=E3etZcy0IPn9kdUPr-aYwAY&bih=804&biw=1707&rlz=1C1GCEA_en__1044__1044#imgrc=JtY8nI-ejrwaaM
アイルランド語の例 道路案内や駅の標識では斜体で表記されることが多い。そもそもアイルランドでは憲法で「第一公用語はアイルランド語」とされている
そしてウェールズ語の例 法律上「公共機関はウェールズ語を英語と同等に扱うこと」となっており、英語とウェールズ語とが同じフォント(サイズ、色、書体)で使用される
https://www.google.com/maps/@51.6015532,-2.9209095,3a,75y,273.99h,90.33t/data=!3m6!1e1!3m4!1srzWqDOzV681hH0TjR0kmhg!2e0!7i16384!8i8192?entry=ttu

 単に二言語表記ということであれば、スイスやオランダのフリースラント地方など、欧州内では特に、いたるところで見られる言語景観かもしれない。しかし多くの場合、そこに併記される現地語はその地域でのマジョリティの言語である。先述の通りウェールズの場合、むしろ現地語がマジョリティになっている地域の方が少数派でありながら、域内全てで二言語表記となっている。この点においてウェールズ語の表記は特徴的と言えるだろう。
 加えてウェールズ英語圏の地域であるが、シンガポールやインドのようなESLの国でもなく、アメリカ、カナダ、オーストラリアと同じ英語が第一言語の国である。そのような国が意識的に英語以外の言語を社会的に使用しているのは珍しい現象ではないだろうか。日本のような非英語圏の国までもが英語の標識を拡充している昨今。言うなれば、ウェールズの言語政策は、世界的に進む英語化を巻き戻すような動きである。

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