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バティック・エア・マレーシアの大阪〜台北線運休と大阪〜台北間航空路線の現状


バティック・エア・マレーシアがクアラルンプール~台北~大阪線を運休へ

バティック・エア・マレーシアのB737MAX8(2024年 関西国際空港にて)

マレーシアのバティック・エア・マレーシアは近年日本路線に積極的に進出しており、クアラルンプール発着で東京(成田)線、台北(桃園)経由の大阪(関西)線、名古屋(中部)線、那覇線、高雄経由の名古屋(中部)線を運航。運賃が他社に比べて安価で、なおかつ以遠権路線である台湾~日本間のみの利用も可能ということで、日本でも徐々に知名度が上昇しているところでした。

そんななか、同社はこのうちのクアラルンプール~台北(桃園)~大阪(関西)線について、2024年12月7日の運航を最後に運休とする旨を発表しました。
同路線は2023年1月20日に就航したばかりでしたが、次章で詳述するように他社との競合が激しい路線であることが災いしてか、結果的にわずか1年11ヶ月で運休という形になりました。

クアラルンプール~台北(桃園)~大阪(関西)線のダイヤ(2024年10月27日~12月7日)は以下のとおりです。
OD880便 クアラルンプール0100→0555台北(桃園)0725→1050大阪(関西)
OD881便 大阪(関西)1150→1335台北(桃園)1435→1925クアラルンプール
週4往復運航(火・木・金・土曜日)
使用機材 ボーイングB737MAX8

なお、バティック・エア・マレーシアはクアラルンプール~台北(桃園)~大阪(関西)線の運休後も、クアラルンプール~台北(桃園)~名古屋(中部)線、クアラルンプール~台北(桃園)~那覇線(注1)については運航を継続するようです。
(注1)現在は週4往復ですが、2024年12月2日~2025年1月16日は週2往復に減便。

【参考】sky-budgetの記事(2024年10月18日付け)

aeroroutesの記事(英文)(2024年10月17日付け)

空の激戦区・大阪~台北線の現状

2024年10月1日時点で、大阪~台北間の航空路線には以下の11社が就航しています。
JAL、✩ピーチ、✩ジェットスター・ジャパン、チャイナエアライン、エバー航空、スターラックス航空、✩タイガーエア台湾、※キャセイパシフィック航空、✩※タイ・ベトジェットエア、✩※エアアジアX、※バティック・エア・マレーシア
✩はLCC
※は第三国への以遠権を行使して大阪~台北線を運航している航空会社


コロナ禍後の台湾をはじめとするアジア諸国からの訪日旅行者数の急激な回復に対応すべく、各社が相次いで増便や新規参入の動きを見せた結果、ご覧のとおり大阪~台北線は再びありとあらゆる航空会社が入り乱れる大激戦区として復活しました。

もっとも、他社との競合が激しい路線となると撤退を考える航空会社もまた出てくるわけで、JALは10月27日からの冬ダイヤで一旦大阪~台北線を運休、バティック・エア・マレーシアについても先述のとおり12月7日を以ての運休が決まりました。
既存のクアラルンプール~台北線を、第三国への以遠権を活用して延伸する形で大阪に就航していたバティック・エア・マレーシアが台北~大阪間を運休することについては、これだけ多くの航空会社が参入して過当競争状態になっているのだから、さすがに1社ぐらいは運休もしくは撤退する航空会社が出てきても仕方がないのではと思います。

一方のJALについてですが、同社の大阪~台北線は、大阪の国際線発着空港が大阪国際空港(伊丹空港)だった時代から60年近くに渡って運航してきた伝統の路線です。最盛期には「ジャンボジェット機」ことボーイングB747シリーズが1日2便以上運航されていたことからもわかるように、高い需要を誇る路線の一つでした。
このような路線をコロナ禍以降臨時便扱いに格下げし、あげくの果てには運休としてしまうのは、他社との激しい競合やコードシェア(注2)による代替措置、あるいは機材不足や乗員不足などの事情はあるにせよ、何とも勿体無い機会損失であるように思えてなりません。
考えてみると、台湾に行く際に可能ならば日本の大手航空会社のフライトで飛びたいと思っている人たちは一定数いるわけで、JALとしては大阪~台北線を運休することによりそうした人々の需要を拾い損ねてしまうこと、さらには台湾旅行を控える顧客が出てしまうようなことを、何としてでも避けなければならないのではと思うところです。
(注2)JALは現在日台路線でチャイナエアラインとコードシェアを実施しており、チャイナエアラインの大阪~台北線にもJALの便名が付与されています。

余談

現在計11社が就航している大阪~台北間の航空路線ですが、かつてはジェットスター・アジア、バニラエア(ピーチに吸収合併)、フィリピン航空、復興航空(倒産)、Vair(復興航空に吸収)、ノースウエスト航空(デルタ航空と合併)、シンガポール航空、大韓航空、エア・ベトナム(注3)、CAT民航空運公司(注4)といった航空会社もこの区間にフライトを設定していたことがあります。

(注3)ベトナム共和国(南ベトナム)のフラッグキャリア、1975年消滅。
(注4)アメリカの支援により設立された台湾(中華民国)のフラッグキャリア。1968年に事故や経営陣の脱税により運航停止。

これらの航空会社の就航、撤退の歴史についても興味深いものがあるわけですが、これについてはまた日を改めて詳しくお話できればと思います。

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