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関西国際空港に帰ってきた中東・トルコの航空会社と変わる関西のインバウンド事情
はじめに
約1ヶ月前、旅行ライターのシカマアキさんが執筆された次のような記事が、「AllAbout」や「Yahoo!JAPAN」に掲載されました。
こちらの記事の内容が興味深かったので、私もいくつか考察を述べてみます。
シカマアキさんの記事(2024年7月29日付)
1.関西国際空港に帰ってきたカタール航空・ターキッシュエアラインズ
2025年大阪・関西万博の開催を来年に控えた大阪。
その玄関口にあたる関西国際空港ではこのところ、中東・トルコの航空会社の路線再開、新規就航、機材再大型化の動きが相次いでいます。
直近では、カタール航空が2024年3月1日より大阪~ドーハ線を再開しました。
もともと、カタール航空は2005年3月に初の日本路線として大阪~ドーハ線を開設、関西地方をはじめとする日本各地と中東、ヨーロッパ、アフリカ、南米を行き来する利用者に長く親しまれていました。
しかし、2010年(注)に同社が東京~ドーハ線を開設して以降は需要がそちらに流れる形になり、大阪~ドーハ線は2016年3月末限りで惜しまれつつ運休となってしまいました。
もっとも、カタール航空としては近い将来に大阪~ドーハ線を再開する腹積もりだったようで、東京オリンピック開催で訪日客が大幅に増えると見込まれた2020年夏ダイヤで大阪~ドーハ線を再開することが一度は決定しました。
しかし、この計画は新型コロナウイルス感染症の世界的流行により白紙となり、4年のブランクの後2024年に改めて実現を見ることになった形です。
大阪~ドーハ線のダイヤ
大阪(関西)1830→(QR803便)→2320ドーハ
ドーハ0130→(QR802便)→1655大阪(関西)
使用機材・・・A350-900XWB
【参考】2015年12月11日付の弊ブログ記事
(注)カタール航空の東京路線は2010年夏ダイヤの開設時点では東京(成田)~大阪(関西)~ドーハ線として運航されていました。
2012年冬ダイヤでこの路線は系統分離され、東京(成田)~ドーハ線・大阪(関西)~ドーハ線の2路線に分けられることになりました。
その後、2014年夏ダイヤでは東京(羽田)~ドーハ線も開設されています。
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また、去る2023年12月12日からはターキッシュエアラインズも大阪~イスタンブール線を再開しました。
ターキッシュエアラインズ(トルコ航空)の大阪路線の歴史は古く、関西国際空港が開港した翌月の1994年10月に早くも大阪~イスタンブール線を開設。
時代は平成不況真っ只中ではあり、途中2003年12月から2006年6月まで運休に追い込まれた時期こそありましたが、永きに渡り関西とトルコ、関西と中東やアフリカ、ヨーロッパを行き来する利用者に愛用されていました。
しかし、諸事情により2017年1月末限りで運休に追い込まれ、その後カタール航空と同じタイミングで2020年夏ダイヤでの運航再開を一旦は発表したものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりお流れになった経緯があります。
大阪~イスタンブール線のダイヤ
大阪(関西)2155→(TK87便)→0500(翌日)イスタンブール
イスタンブール0200→(TK86便)→1900大阪(関西)
使用機材・・・B787-9
【参考】2016年11月5日付の弊ブログ記事
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2.セントレアから引っ越してきましたエティハド航空
新型コロナウイルス感染症による渡航制限が解かれて間もない2023年秋、これまで乗り入れ実績のなかった中東の航空会社が関西国際空港への就航を果たしました。
その航空会社とは、アラブ首長国連邦のアブダビを本拠とするエティハド航空。
コロナ禍前まであった名古屋~北京~アブダビ線の事実上の代替として、2023年10月2日より大阪~アブダビ線を開設しました。
先発各社と比べて関西圏での知名度はまだまだというところですが、関西から中東、ヨーロッパ、アフリカを目指すツアー客や新婚旅行客、中東やヨーロッパ、アフリカから関西を目指すインバウンド旅行者を取り込み、着実に需要を伸ばしていければというところです。
大阪~アブダビ線のダイヤ
大阪(関西)1740→(EY815便)→2355アブダビ ※月・水・金・土・日運航
アブダビ2125→(EY814便)→1155(翌日)大阪(関西) ※火・木・金・土・日運航
使用機材・・・B787-9
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3.真打ち格のエミレーツ航空はA380投入を再開
カタール航空とターキッシュエアラインズの路線運休後、大阪~中東路線で孤塁を守っていたエミレーツ航空も、需要の回復に伴い相次いで路線再開や新規参入に踏み切った競合他社の動きを前に攻めの一手に出ました。
2020年の新型コロナウイルス感染症流行以降、B777-300ERで運航されていた同社の大阪~ドバイ線ですが、2024年6月1日以降は使用機材がオール2階建てのフラッグシップA380に大型化されています。
もともと、大阪~ドバイ線には2018年冬ダイヤよりA380が投入され、多くの利用者から好評を博していましたが、新型コロナウイルス感染症の第一波により2020年3月でやむなく撤退を強いられていました。
今回、大阪~ドバイ線に投入されたA380は、最新仕様のプレミアムエコノミーを搭載した4クラス仕様機。パワーアップして戻ってきたエミレーツ航空のA380は、多くの旅行者に快適な移動空間を提供してくれそうです。
大阪~ドバイ線のダイヤ
大阪(関西)2345→(EK317便)→0450(翌日)ドバイ
ドバイ0300→(EK316便)→1715大阪(関西)
使用機材・・・A380
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4.関西に増えたヨーロッパからの観光客
関西国際空港での中東・トルコの航空会社の相次ぐ路線再開、新規就航、機材大型化といった動きは、すなわちそれだけの渡航需要が生まれているという裏付けなのではと思います。
中東・トルコの航空会社が大阪路線を増強している背景には、ロシアとウクライナの戦争により迂回ルートを飛行することを強いられることになった日欧路線の直行便に代わる選択肢として、日本とヨーロッパを中東・トルコ経由で行き来するルートが支持されているというのもあるようですが、それとあわせて単純に関西エリアを目的地とするヨーロッパ・中東側からの需要も増えているようです。
7月18日夕刻、エバー航空BR130便で台北から帰国した際、同じ時間帯にドーハからのカタール航空QR802便が到着しました。
入国手続きを済ませて手荷物受取場に入ったところで、QR802便から降りてきた乗員・乗客の一団とかち合ったわけですが、見た感じ乗客の大半はヨーロッパや中東の人たちでした。
そのなかで目を引いたのは、フランス人の若い男性旅行者の姿。
おそらく翌週開幕するパリオリンピックによる厳戒態勢や混雑を避けて、円安の日本にバカンスにやってきたということなのかもしれません。
この分だと、8~9月のパラリンピックの期間にバカンスで日本に来る人も多いのではと思われます。
また、冒頭でご紹介したシカマアキさんの記事にもあるように、ここ2年ほど大阪の中心部(梅田・難波の地下街)で白人の観光客を見かける頻度が増えたように思います。
関西エリアのインバウンド観光客といえばこれまでは極東アジア、東南アジアの方ばかりだった印象ですが、大阪・関西万博の開幕まで残り1年を切り、関西エリアに世界中の注目が集まるようになったのか、コロナ禍以前よりも欧米からの観光客の比率が高まってきたのではと思います。
加えて、コロナ禍による渡航規制がなくなったタイミングで中東、トルコの航空会社が大阪路線を大幅に増強したことも、この傾向に拍車をかけている可能性があります。
来年の大阪・関西万博会期中は現在よりもはるかに多くの外国人観光客が関西エリアを訪れることになるかと思いますが、関西エアポートや関係当局には今後とも世界中の幅広い地域からインバウンド観光客を呼び込めるよう、あの手この手で誘客策を試みて欲しいものです。
ヨーロッパ・中東方面の航空路線が充実するとなると、今度はどちらかというと手薄気味なアメリカ本土路線(注2)の増強も必要になってくるかと思いますが、これについても今後の展開に期待したいところです。
(注2)2024年8月現在、関西国際空港発着のアメリカ本土路線はロサンゼルス線(JAL)とサンフランシスコ線(ユナイテッド航空)、バンクーバー線(エアカナダ)、トロント線(エアカナダ)のみです。