見出し画像

ティーンエイジブルー~阪神5001形「青胴車」の勇退に寄せて


◆はじめに

大物駅に進入する阪神5001形5001F、同編成は2023年に廃車(2021年)

阪神電気鉄道(阪神電鉄)ではこのほど、普通系車両の最古参である5001形電車(2代目)を2025年2月10日(月)限りで引退させる旨を発表しました。
1977~81年にかけて計32両が製造され、阪神・淡路大震災でも1両の被災廃車を出すことなく活躍してきた5001形(2代目)ですが、近年は新鋭の5700系電車「ジェット・シルバー5700」による置き換えが進み、2025年1月時点では5025Fの一編成が残るのみとなっています。

◆「青胴車」とは

「青胴車」の一員だった阪神5311形、2010年に引退(2009年 阪神御影)

「青胴車」とは、阪神電鉄の普通系車両のうち、クリーム色とウルトラマリンブルーのツートンカラーに塗装された各形式の呼称です。
時は昭和30年代、クリーム色とバーミリオンの塗り分けで登場した阪神電鉄の新鋭急行系車両は、人気漫画「赤胴鈴之助」に因んで「赤胴車」と呼ばれていました。
新鋭の急行系車両「赤胴車」ならばということで、同じ頃にクリーム色とウルトラマリンブルーの塗り分けで登場した新鋭普通系車両は、いつしか「青胴車」と呼ばれるようになった次第です。

「青胴車」と呼ばれた最初の普通系車両は、普通系車両としては初の量産型高性能車として1959年に登場した5101形・5201形電車です。
この両形式の試作車として1958年にクリーム色と緑色の塗り分けで登場した5001形(初代)も、1960年の量産化改造時にクリーム色とウルトラマリンブルーに塗り替えられ、「青胴車」の仲間入りを果たしました。

以後、5231形、5151形、5261形、5311形、5131形、5331形、5001形(2代目)の各形式が「青胴車」として登場し、計10形式が延べ66年にわたり特急列車や急行列車の合間を縫う形で、大阪と神戸の間を往復し続けました。

◆「青胴車」との思い出

私が初めて「青胴車」にお世話になったのは、幼稚園の年長組だったか小学校1年生だったかの時分に、当時所属していたビーバースカウトで今は亡き甲子園阪神パークのスケートリンクに出かけた際のことだったと覚えています。
スケートの滑り方を身に付けるのに同級生の倍以上の時間を要し、悔し涙を流した苦い思い出の残る一日でしたが、今津から甲子園までの2駅だけとはいえ滅多に乗れない阪神電車の、それも初めての「青胴車」に乗れて喜んだのを昨日のことのように覚えています。
その後、1992年7月、小学校3年生の夏休みに両親に連れられ、初めて阪神甲子園球場にプロ野球観戦に連れて行ってもらった時も、浪人時のセンター試験を深江駅近くの大学で受験した際も、「青胴車」のお世話になりました。
「青胴車」とは、私にとってまさに人生の節目節目に登場する車両といっても過言ではなかったように思います。

また、現在は阪神本線・同神戸高速線の大阪梅田~新開地間でのみ運用されている「青胴車」ですが、かつては同神戸高速線の新開地~西代間とその先の山陽電鉄本線の西代~東須磨間、さらには西大阪線(現なんば線)の尼崎~西九条間で運用されていた時期もありました。
さすがに、山陽電鉄線内を走る「青胴車」に乗車する機会はありませんでしたが、西大阪線の運用に就く「青胴車」には時折お世話になったものです。

阪神西大阪線の運用に就く阪神5001形(2代目)(2009年1月)

◆「青胴車」のヘッドマークいろいろ

「青胴車」の楽しみの一つが、阪神タイガースの優勝時や沿線でのイベント時に掲出される丸型のヘッドマークでした。
たとえば、「青胴車」最後の生き残りとなった5001形(2代目)は、2023年シーズンにタイガースがセ・リーグ優勝と日本一に輝いた際、セ・リーグ優勝記念、日本シリーズ開催記念、日本シリーズ優勝記念の3種類のヘッドマークを延べ4ヶ月近くに渡り掲出。
思わぬ形で有終の美を飾ることになった名車を追いかけて、関西はもとより日本全国から多くの鉄道ファンが訪れました。

セ・リーグ優勝記念ヘッドマークを掲出した阪神5001形(2代目)
なんば線シリーズ記念ヘッドマークを掲出した阪神5001形(2代目)
日本一記念ヘッドマークを掲出した阪神5001形(2代目)

また、もうかれこれ20年近く前の話になってしまいましたが、タイガースが2003年・2005年にセ・リーグ優勝を果たした際も、5001形(2代目)をはじめとする「青胴車」各形式は、2000系、8801形・8901形といった懐かしの「赤胴車」ともども記念のヘッドマークを掲出して走っていたものです。

2003年セ・リーグ優勝記念ヘッドマークを掲出した阪神5001形(2代目)
2005年セ・リーグ優勝記念ヘッドマークを掲出した阪神5001形(2代目)

タイガース優勝関係以外ですと、2005年の開業100周年記念の際にも丸板のヘッドマークが掲出されていたのが懐かしく思い出されます。
この他、かつては沿線の西宮神社での「十日戎」開催時にも丸板のヘッドマークが掲出されていた時期もありました。

開業100周年ヘッドマークを掲出した阪神5001形(2代目)

◆引退に向けて

2025年2月10日(月)限りでの引退が決まった阪神5001形(2代目)ですが、引退のアナウンスの後様々な惜別イベントが実施されています。
惜別イベントの内容は貸切列車の運行や記念グッズの販売などで、貸切列車の一部については「青胴車」がかつて営業運転で乗り入れていたなんば線尼崎~西九条間にも入線して大きな話題になりました。

そして、もう一つ、鉄道ファンには嬉しいサプライズが待っていました。
阪神電鉄の全編成の先頭車の前面には、2015年以降「“たいせつ”がギュッと。」マークが貼付されていますが、このほど引退を目前に控えた5001形(2代目)5025F編成の両先頭車(5025・5028号)から、「“たいせつ”がギュッと。」マークが剥がされました。
「“たいせつ”がギュッと。」マークを剥がされ、連結器が現行のものに交換された2009年頃から2015年初頭までの少し懐かしい出で立ちに戻った5025Fは、1月8日(水)より営業運転に復帰し、名残を惜しむべく訪れた多くの鉄道ファンに見守られながら今日も元気に走り続けています。

長くなりましたが、引退まで残すところ10日間、阪神5001形(2代目)が最後まで事故なく使命を全うできることを願って、結びとさせていただきます。

西灘駅に進入する阪神5001形(2代目)5025Fの普通高速神戸行き(2025年1月)
高速神戸駅で山陽3050系と並んだ阪神5001形(2代目)5025F(2025年1月)
今津駅に進入する阪神5001形(2代目)5025Fの普通大阪梅田行き(2025年1月)

いいなと思ったら応援しよう!