「青春18きっぷ」代替としての「阪神山陽シーサイド1dayチケット」の可能性
はじめに
JR西日本ホームページのリリース(2024年10月25日)
10月25日、JRグループ6社から2024年度冬季の「青春18きっぷ」の発売に関するリリースが出されました。
40年以上の長きに渡り多くの旅行者に愛されてきた「青春18きっぷ」ですが、2024年冬季版では従来のものから大きくリニューアルされることに
まず、長らく5日間用(12,050円)のみだった「青春18きっぷ」ですが、自動改札機での利用に対応したサイズに改められるとともに、新たに3日分(10,000円)が設定されました。
ただ、自動改札機対応化で一見便利になったかと思いきや必ずしもそうではありません。
自動改札機対応用にリニューアルされた新しい「青春18きっぷ」ですが、従来版から大きく変更された点がさらに2点あります。
・従来版とは異なり、1枚を複数人で使用することは不可能に。
・従来版では利用可能期間内であれば任意の日付を選んで利用できたところが、リニューアル後は利用開始日からの連続する3日間、ないしは5日間にしか利用できないように。
この2点が変更になったことにより、「青春18きっぷ」は以前のように気軽に利用できない切符になってしまったという不満の声があちこちで聞かれており、インターネット上では「『青春18きっぷ』を従来の制度に戻して欲しい」という趣旨の署名運動まで実施されている状況です。
まずは1日分だけ使って、残りの4日分は別の週に利用するというような使い方ができなくなったリニューアル後の「青春18きっぷ」ですが、以前のように金券ショップでバラ売りやレンタルの形で入手することは事実上不可能となりました。
気が向いた時に1日分だけ「青春18きっぷ」をレンタルして、たとえば東京から伊豆へ、名古屋から大阪へ、あるいは大阪から姫路へといった短い区間で日帰りの旅行をするというような使い方ができないのは、利用者としてはいささか歯がゆく思えます。
今回は、リニューアルに伴う制度変更により以前のように気軽に利用できなくなるであろう「青春18きっぷ」の代替になり得る大手私鉄のフリーきっぷの一つとして、「阪神山陽シーサイド1dayチケット」を紹介します。
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」とは
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」とは阪神電気鉄道・山陽電気鉄道が発売している、両社の全線が乗り放題になるフリーきっぷです。
価格は2,400円。阪神大阪梅田・大阪難波~山陽姫路間を破格の安い運賃で往復することができる優れものです。
2,400円というのは「青春18きっぷ」(5日用)の1回分換算の値段(2,410円)とほぼ等価で、これまで「青春18きっぷ」を利用して大阪と姫路の間を日帰りで行き来していた人にとっては充分代替になり得る手段と言ってもいいお得なきっぷです。
もちろん、乗り放題となる区間内の駅ならばどこでも乗り降りが自由なので、たとえば姫路に出かけたついでに明石で玉子焼を食べる、神戸で買い物をするといった楽しみ方も可能です。
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」のちょっと変わった使い方
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」で山陽姫路まで出て、そこからJR線に乗り換えれば、JRの普通乗車券を利用するよりも安価に兵庫県西播地方、岡山県の観光地へアクセスすることができます。
以下で、いくつかのモデルプランを挙げてみました。
1.播州の小京都・龍野
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」 2,400円
JR 姫路〜本竜野 往復480円
計2,880円
(参考)JR 大阪~本竜野 往復3,960円
差額 1,080円
播州の小京都と呼ばれる歴史的な街並みとうすくち醤油、手延べ素麺で知られる兵庫県たつの市の旧市街の最寄駅は、姫新線の本竜野駅。
大阪梅田~姫路間は「阪神山陽シーサイド1dayチケット」利用、姫路~本竜野間はJRの普通乗車券利用とすれば、大阪~本竜野間をJRの普通乗車券で往復する場合と比べて1,080円も安い運賃で移動することができます。
浮いたお金をお茶や食事、お土産に使うのも一興かもしれません。
2.忠臣蔵の町・赤穂
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」 2,400円
JR 姫路→播州赤穂 往復1,180円
計3,580円
(参考)JR 大阪~播州赤穂 往復4,620円
差額 1,040円
忠臣蔵で知られる兵庫県赤穂市の中心駅は、赤穂線の播州赤穂駅。
大阪梅田~姫路間を「阪神山陽シーサイド1dayチケット」利用にすれば、大阪~播州赤穂間をJRの普通乗車券で往復する場合と比べ1,040円も安い運賃で移動することができます。
ちなみに姫路~相生間の新幹線自由席特定特急券は870円。
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」のおかげで浮いた1,040円で、姫路~相生間で片道だけ新幹線を使ってもまだお釣りが来る計算になります。
3.日生でカキオコ
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」 2,400円
JR 姫路→日生 往復1,540円
計3,940円
(参考)JR 大阪~日生 往復4,620円
差額 680円
赤穂線・日生駅が最寄りとなる岡山県備前市の日生地区は、毎年冬になると特産の牡蠣を使ったお好み焼き「カキオコ」目当ての観光客で賑わいます。
大阪から日生に行く際も、大阪梅田~姫路間で「阪神山陽シーサイド1dayチケット」を利用するルートにすれば、全区間JRを利用した場合より680円安く済ませることができます。
さすがに680円では「カキオコ」は食べられませんが、ドリンク1杯ぐらいならば賄えそうです。
4.佐用町のひまわり畑
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」2,400円
JR 姫路→播磨徳久 往復1,720円
計4,120円
(参考)JR 大阪~播磨徳久 往復4,620円
差額 500円
兵庫県佐用町の夏の風物詩といえば「ひまわり畑」で、姫新線の播磨徳久駅付近にも立派な「ひまわり畑」があります。
大阪梅田~姫路間で「阪神山陽シーサイド1dayチケット」を利用し、姫路で姫新線に乗り換えるルートならば、全区間JRを利用した場合と比べて500円安く済ませることができます。
ひまわりの季節は暑いので、この浮いた500円で冷たい飲み物を多めに調達するのが良いかもしれません。
5.刀剣の聖地・長船
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」 2,400円
JR 姫路→長船 往復2,340円
計4,740円
(参考)JR 大阪~長船 往復5,280円
差額 540円
岡山県瀬戸内市長船地区は古くからの刀剣の産地で、地区内にある備前長船刀剣博物館には多くの歴史ファンや刀剣ファンが訪れています。
近年、「戦国BASARA」や「新世紀エヴァンゲリオン」、「刀剣乱舞」などとのコラボが話題になったのも記憶に新しいところかと思います。
この長船にアクセスする際も、大阪梅田~姫路間で「阪神山陽シーサイド1dayチケット」を利用すれば、全区間JRを利用した場合と比べて540円安く済ませることができます。
浮いた540円は、刀剣グッズ購入用の軍資金に回してみるのもいいかもしれません。
6.その他
【大阪~岡山間の場合】
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」 2400円
姫路→岡山 往復3040円
計5440円
(参考)JR 大阪~岡山 往復6160円
差額 720円
【大阪~竹田(播但線)間の場合】
阪神・山陽 阪神大阪梅田~山陽姫路
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」 2400円
JR 姫路→竹田 往復2340円
計4740円
(参考)JR 大阪~竹田 往復5280円
差額 540円
詳細は割愛しますが、たとえば大阪から岡山市や兵庫県朝来市の竹田城跡に向かう際も、大阪梅田~姫路間で「阪神山陽シーサイド1dayチケット」を利用すれば移動手段を安上がりに済ませることができます。
「阪神山陽シーサイド1dayチケット」利用時の注意点
以上に示したように、コストパフォーマンスは最強といえる「阪神山陽シーサイド1dayチケット」ですが、注意点が2つあります。
1.阪神大阪梅田~山陽姫路間の直通特急の所要時間が最速でも90分前後と、大阪~姫路間を61分で結ぶJRの新快速より30分以上長くなる点
2.阪神・山陽の直通特急はJRの新快速とは異なり、車内にトイレが設置されていない点
それでも、この2点だけ差し引けば、大阪~姫路間で「阪神山陽シーサイド1dayチケット」を利用し、姫路からJRに乗り換えて兵庫県西播磨地方や岡山県備前地方を周遊するルートの利用価値は決して低くないのではと思います。
まとめ
山陽電気鉄道は「阪神山陽シーサイド1dayチケット」の神戸市内発着版として、「三宮姫路1dayチケット」(1,600円)も発売しており、こちらだと神戸市東部や阪急神戸線沿線から兵庫県西播磨地方や岡山県備前地方へのアクセスに応用できるのではと思います。
関西私鉄にはこの他にも使い勝手の良いフリーきっぷがあり、たとえば近畿日本鉄道(近鉄)の週末フリーパスを使えば、大阪から三重・名古屋まで楽々アクセスでき、さらに三重県内や愛知県内の近鉄とJRが接続している駅からJR東海のフリーパスを使えば中京圏の隅々までお手頃価格で移動できるケースがあるといいます。
最後に、あくまで私個人の考えですが、一連のリニューアルにより青春18きっぷが改悪されたからといって、必ずしも悲観するべきことばかりではないのではと思います。
今ある他のフリーきっぷをうまいこと活用すれば、青春18きっぷが利用できない期間でも気軽に旅行に出られますし、それなりに無理なくなおかつ安価な行程で新しい楽しみを見つけることができるわけで、それもまた一興なのではないでしょうか。
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