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住宅・アパートローン金利が上がらないと考える理由

「金利が上がるのではないか?」という質問をよく受けます。

低金利が続いていますし、今年に至っては日本もインフレになる可能性があるので、これだけ聞けば金利が上がると考える理由もわからないでもないです。

そもそもインフレ率が高くなると、なぜ金利が上がるのでしょうか?

まず状況整理から始めましょう。

インフレ率が高くなったきっかけは、コロナです。
そして日本ではなくアメリカが発端です。

本来であればコロナで需要が減退し、経済成長が鈍化あるいは停滞するはずでしたので、それを防ぐべくアメリカ政府は過去前例のない規模の金融政策や財政政策を行いました。

コロナ前のアメリカの政策金利は2.5%でしたが、これを0.25%にまで引き下げました。さらに財政政策により国民に補助金が配られ個人の預貯金が上昇しました。

自粛中のため買い物にも仕事にも行けず消費が極端に落ち込むはずでしたが、ZOOMにより在宅で仕事ができるようになりました。Amazonを利用し家でも買い物ができるようになりました。ネットフリックスで映画を観たり、プレステ5でゲームしたり、外出しなくても消費が進み、想定していた経済停滞や不況は起こりませんでした。

むしろ一部の分野を除き各企業の業績は大変好調で、株価は大幅に上昇しました。GAFAMやテスラの存在をこの頃から意識するようになった方が多いと思います。

個人の金融資産は肥大し、自粛で溜まったストレスを開放するかのように、経済再開が本格化と同時に消費意欲が更に増していきました。

一方で経済再開にも関わらず、本格的な供給体制が整っていないサプライサイドは旺盛な需要に対応ができず、物価ばかりがどんどん上がっていきました(需要>供給、ディマンドプルインフレ)。

今年に入りアメリカの消費化物価指数は8%を超えており、どうにかしてインフレ率を鎮静化しないといけない状況です。

インフレ率を抑えるにはどうしたらよいか?

それは政策金利を引き上げればいいのです。

現在のアメリカの政策金利は2022年6月時点で1.0%ですが、近いうちに1.5~1.75%まで上がる見込みです。

このような状況でアメリカの住宅ローン金利は6.2%まで上昇しています。

一方、日本はどうかというと、デフレ基調が続いていましたが、アメリカの影響もありじわじわとインフレ率が上がっています。先月の消費者物価指数2.5%と今年のインフレ率は2.0%前後の予想です。

それなら日本もローン金利が上がると考える人が多そうですが、私の意見は違います。

それはアメリカと日本では同じインフレでも状況が異なるためです。

アメリカは超過需要により物の値段が上がっていますが、日本はそうではありません。

アメリカのようにコロナで補助金を配ったり財政政策を行いましたが、金利の引き下げは行いませんでした。2016年頃からずーと-0.1%をキープしています。

デフレ基調だったこともあり、小規模な財政・金融政策では日本の潜在需要は伸びませんでした。

ではなぜインフレ率が伸びたのかというと、原油など輸入材価格のうち特に原材料価格の高騰が日本にも影響しているからです(原油の値上がりはロシアのウクライナ侵攻に起因。)

これをコストプッシュインフレといいます。アメリカのケースはディマンドプルインフレです。

コストプッシュインフレの状態で財政・金融引締めを行うと、ただでさえ弱い経済がさらに弱体化し、景気停滞を引き起こします。これは高インフレと経済停滞が併存するスタグフレーションを招く可能性があるのです。

急激な円安にも関わらず、岸田首相や黒田総裁が金融緩和継続(金利を上げない)を表明しているのはこのような理由があるためと考えます。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-19/RDP1Z9T1UM0W01

https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-idJPKBN2OA00G

もちろん円安がこれ以上進めば、金利引き上げの可能性も否定できませんが、逆に急激な利上げを行っているアメリカやEU諸国が利下げに転じる可能性があります。

実際に先日発表された米個人消費支出はピークを超え、下落しそうな兆しです。

そうなれば日本が金利を上げなくても自然と円安が解消されます。俯瞰的・長期的な判断が必要です。


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