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研究メモ 作戦は目的に応じて攻勢作戦、防勢作戦、安定化作戦に分類できる

軍隊が任務を遂行するために実施すべき作戦の内容は状況によってさまざまに異なります。一般に作戦の目的に応じて攻勢(offense)、防勢(defense)、安定化(stability)に区分することが多いのですが、アメリカ軍の教範では国内で実施する文民機関防衛支援(defense support of civil authorities)を並置させ、4種類に区分すべきだとされています。最初の3つの区分は軍隊の作戦を理解する上で有益なので、この記事では簡単にそれぞれの作戦の類型が何を意味しているのかを解説してみます。

まず、攻勢とは、敵を進んで求めて撃破し、また地形、資源、人口密集地を獲得するために行われる作戦です。通常、我が方の戦闘力で優位を確保した上で、主動の地位を利用し、敵に決戦(decivise engagement)を挑みます。この決戦の段階ではあらゆる手を尽くして敵を捕捉撃滅することが原則ですが、万が一にも捕捉に失敗したならば、後退を許さずに追撃へと移り、致命的な打撃を与えるべきとされています。接敵機動(movement to contact)攻撃(attack)戦果拡張(exploitation)追撃(pursuit)はいずれも攻勢作戦の構成要素となる戦術行動です。

防勢とは、敵の攻撃を破砕し、時間を稼ぎ、戦力を節約するために行われる作戦です。勢力において敵よりも劣勢であったとしても、特定の地域を保持し、時間的な猶予を獲得することができます。ただ、受動の立場に立つからこそ、防勢では主動の立場を占めるように作戦を指導することが重要であり、戦況の推移に応じて敵に反撃を加えることが原則となります。機動防御(mobile defense)陣地防御(area defense)後退行動(retrograde)といった戦術行動で構成されます。

安定化とは、安全な環境を保持し、確立するために行われる作戦です。安定化作戦ではゲリラ・コマンドなどの脅威に対処するため、戦闘力を行使しなければならないこともありますが、地域の住民を味方につけ、敵対する勢力と和解することの方が重要性を帯びてきます。生活に必須のインフラを整備するなど、政治的、経済的、社会的な制度を構築する事業を実施することもあります。ちなみに、文民機関防衛支援は自国の領域における災害派遣、治安維持などを包括した作戦の類型であり、安定化は外国の領域において行われる作戦として区別されます。

基本的に軍隊の作戦行動は攻勢、防勢、安定化という3つの要素を組み合わせなければならず、どれか一つの形態の作戦だけで任務を遂行できるということはあり得ません。攻勢と防勢は敵との戦いで特に重要な作戦だと言えますが、例えば占領地で深刻な人道的な危機が発生しているような場合は、安定化作戦の方に重点を置くべき場合があることも十分に考えられます。また、攻勢作戦、防勢作戦を重視すべき状況でも、後方地域で安定化作戦を成功させることができないために、作戦計画に支障を来すことも想定されます。

このような議論を踏まえれば、戦略の次元で特定の地域を攻略、奪取せよとの戦争目的が設定されたとしても、部隊指揮官は作戦の次元で攻勢のことだけを考えるわけにはいかないことが分かります。特定の正面で攻勢を遂行するとしても、主攻撃の方向によっては別の地域に敵の部隊を誘致し、あるいは敵の攻撃を防ぐ防勢が必要となるでしょう。攻撃前進が上手くいったとしても、次々と増える占領地を適切に管理し、攻撃部隊の後方の安全を確保する安定化作戦を同時並行的に進めることができなければ、前線で十分な戦闘力を発揮することが難しくなってしまうでしょう。

見出し画像:U.S. Department of Defense

参考文献

Army Doctrine Reference Publication 3-0: Unified Land Operations. Washington, D.C, 2012.

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