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イラッとしたら発電しちゃえば



イラッとしたときはお鼻が光るシステムにしてほしい。
腹を立てている間は視界が明るくて便利だし、何よりかわいい。人類は着実に進歩していると聞くから気長に待てばそうなるだろうか。

"嫌な人とどう接すべきか" とよく聞かれる。わたし自身嫌だなと思う人に出会うことがほぼないのでこの質問の前ではTHE無力である。陳謝。
一方でイラッとするくらいのことはわたしにだってある。

いつかのわたしなんぞは、同じ間違いを繰り返す後輩とのやり取りに『ねぇえぇぇ6回もおなじことを言ってんだけどもぉおおぉお』とのたうち回っていた。
こうなると後輩もそりゃあイラっとしてびーびー言い返してくるので『は?さてはおぬし今イラッとされたのでは?許さぬ...!しかし相討ち...!』といったように大変盛り上がりはするが何ひとつ生産しないまま22時を迎えることになる。
この様子を友人に共有すると "遊んでたの?" と返ってくるので、20代中盤のわたしは毎日欠かさず遊んでいたといって差し支えない。

嫌味とかイラッというのは、大抵ひとに伝わると思ったほうがよい。逆に相手に伝わらないように上手にできたとしてそれは自身に蓄積されてどこかで "嫌" に進化するのだ。
だとしたらいっそお互いの鼻が光って『あーあイラッとしたのバレちゃったへへ』くらいのほうがどれだけ平和かわからない。

誰かにイラッとしたとき、大半が相手に期待があるから生まれる感情なのだとわたしは思っている。こうしてくれると思ったとか、そんな風に言われると思わなかったとか、伝えてるのに伝わらないとか。
嫉妬からくる苛立ちも "上手くいくはずのないこと" を上手くやってしまったあいつにイラッとしているのだと思うのだ。
だけれどどんなにイラッとしても、実態はまた異なるかもしれない。いつも靴下を脱ぎ散らかす彼は明日こそ洗濯機にいれようと思っているかもしれないし、八つ当たりしてきた彼女は誰かの八つ当たりを受けたかもしれないとかとか。

いずれにせよ、勝手に想像して期待してイラッとしたりガッカリしたりするだなんて、なんて人間らしくて愛おしい感情なのかしらと想って過ごしたほうがよい。


イラッとしたところでそのイラは連鎖する。イラ→イライラ→イライライラとこのように。そしてそれは自分を小さく傷つけて毛羽立たせてしまう。
イラの連鎖に巻き込まれるくらいなら、自身でそれを堰き止めて "はーいヒーローのお通りですよー" と英雄を気取ってしまうほうがよほどハッピーだと思う。
だけれど、そんなに簡単じゃないんだよこのイカ野郎タコ野郎!みたいな気持ちもめちゃくちゃにわかる。


だから、誰かがイラッとしたらその人のお鼻が光るシステムにしてほしい。
するとなにを言われても『あー鼻光ってるなー』と優しい気持ちになれると思うのだ。
「鼻光ってますね、僕でよければ話聞きますよ」と恋が始まることもきっとある。

世界は物理的にだいぶ明るくなるだろうし、反対に暗くなるもまた平和であろうと思う。
わたしだけがその日を心待ちにしている。



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