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乾杯で逆謹慎(ぎゃくきんしん)

 高校3年の最後のテストが終ると卒業式迄、わりと長い日数、学校に行かなくてもいい幸せな休暇に入るはずだった。
 最後の定期テスト(私にとっては「33」ラストゲーム!・・・投稿を始めた頃に書いた記事「33」サーティスリーを是非読んでください。)のチャイムがなると、私は何とも言えない解放感に酔っていた。 
 クラスメートの1人が「打ち上げしょうや!」と言った一言に5人が賛同し
男6人でその夜に、飲みに行く約束をした。
 街の中心地に行く為に駅で待ち合わせをした。リーズナブルな居酒屋で個々の高校生活を振り返りながら、ビールで乾杯した瞬間、隣のテーブル席の2人のオバサンが乾杯したのが視界に入った!このオバサン達は!!!
あちらも気付いたらしく、自分達だけが打ち上げしたい訳じゃない。教師だって打ち上げしたい。そら、そうだろう。オバサン先生2人、、、もっとエエとこ行けよと思ったが、まぁ見んかったことにしてくれるだろうと甘い考えをを期待しながら待っているとどうやら私達の担任に指示を仰いだらしい。
 オバサン先生に「とにかく帰りなさい。明日、いつも通り学校に来なさい。」と言われた。「注文分がまだ来てないんですが?」と言ったら 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!私らが食べたげるから!」とシラーッと言ってくれたが、生徒におごってもらっていることに気付いてないのだろうか? まぁええか、それにしても登校とは、、、ねーーー。

 親には一応簡単ないきさつは、伝えたが当然、自分たちの都合のいいように。
 翌朝、いつも通り登校した。まず、職員室に集められ、軽い説教をうけた!この説教をしていた教師の何で見つかるねん!何で見逃したれへんねん!と言っている心の声が私には聞こえてきた。ような気がした!
 12クラスもあった私達の学年の教室は当然誰も居ない。個々に、カウンセリングみたいなことを1時間ほど受け、1組~6組迄の教室を各人の独房としてあてがわれた。今日から約3週間、午前中だけ登校し、3年の各担任が、
順番に、課題を与える。カリキュラムはもう終了しているので、教師は各々の趣味を強要している感じに思えた。
 いつも、掃除ばかりしていたような印象だった教師は、案の定グランドの溝や、中庭の草むしりや12クラスある教室を2クラスずつ担当して、壁や床などを徹底的に拭きまくる。という課題や、
 マラソンが趣味の日本史の教師は、とにかく走らせた。
 担任は、現在ではニュースになるような坊主頭をあたりまえのように強要し柔道部の顧問で体育教師だったので、柔道場で鬼のように虐待いぇ、投げられた。
 古典の教師は読書好きで知られているので、当然、課題は読書と感想文。
 日頃、本は漫画ぐらいしか読まない私には過酷だった。500ページはある文庫本をランダムに配り、何か暗そうなイラストが表紙に「黒い雨」って書いてある「井伏鱒二(いぶせますじ)」と書いてある。読まなくてもだいたい察しがつく。重たい、出来れば読みたくない。この独りにはだだっ広い教室という名の独房では読みたくない。
 ここで反抗しても仕方ないので、まえがきとあとがきだけ読んで、感想文は、やらかした自分の反省している様子を戦争や、原爆と上手くからめながら、難なく書けた。古典の教師は、悔しそうな顔をして、良く書けている。と、にこりともしないでホメテくれた。
 3週間、家に居てもお金を使うだけ、結果的にはなかなか味わえない別の思い出ができてよかったような、そんな気がする。
 私達6名は3年1組。ちなみに、3組の奴らは15人で、しかも私達の2件隣の居酒屋で同時刻に乾杯していたらしい!
 卒業式はのびかけの坊主頭、入学式と全く同じ坊主頭に少し、わびしさを感じた。


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