見出し画像

★我楽多だらけの製哲書(20)★~レシートに刻まれた嬉しい数字とアレクサンドル・デュマ~

先日、コンビニで買い物をしたらちょうど1000円だった。
単純に嬉しい。

消費税が導入されてからかなり時間は経つが、一個100円などのように商品の価格が切りの良い数字ではないため、何個くらい商品を買えばいくらになるかは、頭の中で計算する必要がある。ただ、支出を厳密に管理していないので、普段は計算などせずにレジに向かう。一の位の数字について切りが良いくらいでも、お釣りに一円玉が発生しないので嬉しいのだが、1000円は何となくピタリ賞の気分である。

商品価格や税率が変わらない限り、同じ商品の組み合わせで買い物をすれば、これからも1000円になる。紙幣一枚を出せば、それで完了。余計な小銭を追加する必要も、お釣りの小銭がやってくることもない。非常に安定した状態である。

しかし今後、商品の値上げがあったり、税率の引き上げがあったりすれば、この完全なる組み合わせが作り出す理想的安定が瓦解してしまう。それはとても悲しいことだろう。

逆に、商品の値下げや税率の引き下げがあったならばどうだろうか。同じ組み合わせで購入したとしても、あの理想的安定を得ることができなくなる。あの完全なる状態にたどり着けないから、先程の例と同様に悲しい気持ちに繋がる。確かに、整然と積み上げられたトランプタワーが崩されるようなものだから、悲しい気持ちになるのも頷ける。

だが、これは何とも不思議なことでもある。本来、値下げや税率の引き下げは、余計な支出を抑えてくれる効果があり、嬉しくなるはずのものなのに、それが悲しい気持ちに繋がるからである。どこを基準にして、変化を捉えるかの違いであろう。1000円を理想的安定として、そこを基準とすれば、基準点からプラスに向かおうが、マイナスに向かおうが、どちらにしても、変化は理想的安定を否定する事象であり、受け入れ難い。それは理想的安定が、上に凸の放物線、二次関数の頂点で、そこからどう動いても、y軸の値は減少するようなものだろう。

しかしどれだけ余計な支出をしないか、または手持ちの資金がどれだけ減らないかに基準を置くならば、商品購入の総額が少なければ少ないほど良い状態ということになる。それは反比例のようなもの、x軸の値が支出額で、所持金の残額がy軸の値とすれば、支出の増加は所持金の減少に連動し、その結果、悲しくなる。それに対して、支出の減少は所持金の減少に歯止めをかけるので、逆に嬉しくなる。

「この世には、幸福もあり不幸もあり、ただ在るものは、一つの状態と他の状態との比較にすぎないということなのです。」
(以下、考察は続く)

ここから先は

854字 / 2画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?