「デジタル看護入門」第15回 〜在宅医療とICT その2〜
前回に続いて、在宅における酸素療法について、お話しします。
★HMV(Home Mechanical Ventilation:在宅人工呼吸療法)
在宅人工呼吸療法とは、呼吸器の慢性疾患や、難病などにより、神経・筋疾患など障害があり、呼吸の補助が必要な患者さんに対して、在宅で人工呼吸器を使用する治療法です。前回、説明しましたが、HOT(在宅酸素療法)は、自分で呼吸ができるが、ガス交換が不十分のため、酸素を補う治療法で、このHMVは、呼吸そのものが自身では難しいため、その補助のために人工呼吸器を使用する治療法となります。
最近では、特定疾病や難病で、呼吸筋が弱くなる、ALSや筋ジストロフィーなどの患者さんの、在宅での人工呼吸器の利用が増えています。同時に、呼吸器系や意識に障害がある小児(胎児仮死など)がNICUから在宅療養に移行するケースも増えています。こちらは、人工呼吸器のコンパクト化や高性能化により、在宅での人工呼吸器管理が行いやすい環境になってきたという理由もありますが、それに応じた在宅療養を取り巻く環境(訪問サービスや社会資源の充実など)の変化も重要なポイントです。
ただ、人工呼吸器がいくらコンパクトに、高性能になっても、それを24時間観察する介護者(小児だったらお母さん)の負担は計り知れないものです。人工呼吸器を使用しているということは、自己喀痰もできませんので、頻回に痰の吸引も必要です。身体が動かせない患者さんなら、定期的な体位交換もします。もちろんそれだけでなく、栄養や清潔の管理など・・・。
ICTの技術が進化して、医療機器の機能が向上しても、最終的に、それを扱っていくのは、人間です。医療機器が発展して、患者さんが病院だけでなく、施設や在宅で生活できるようになり、療養環境の選択の幅は広がりました。しかし、その医療機器の管理を担当する介護者などへのサポートやフォローは、まだまだ追いついていないような気がします。ICT機器だけが先行せず、きちんと患者さんやそのご家族が、安全に安楽に療養生活ができているかどうか、最新の医療機器だけにとらわれず、看護師として、包括的なケアを行っていくことが大切です。