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「デジタル看護入門」第12回 〜呼吸の観察とICT〜

 前回までの解説で、パルスオキシメーターと聴診器について、お話ししました。今回も「呼吸」に関する内容ですが、じつは呼吸数や呼吸の程度を測定する機器は、厳密にいうと心電図モニターで間接的に測定する機器(心電図モニターの3誘導の装着部位(赤・緑・黒)が、呼吸による胸郭などの動きで、それぞれの移置が変化することにより、呼吸状態を感知して、呼吸の程度と呼吸数を測定しています。)くらいしかありません。呼吸の程度や呼吸数については、ICT技術が進化しても、医師や看護師の直接的な観察、つまり機械に頼らない方法が主流です。

 パルスオキシメーターの項目でもお話ししましたが、呼吸状態のアセスメントについては、パルスオキシメーターで測定できる酸素飽和度の数値だけでなく、そのほかの呼吸に関する観察、つまり前述した、呼吸数や呼吸の程度の観察が重要です。

 よく実習中の学生さんである話ですが、パルスオキシメーターの測定値だけをみて、「患者さんの酸素飽和度が低いです!」とすぐに看護師さんに申し送ったら、やんわりと反撃をくらう、ということがよくあります(笑)。看護師さんから「じゃあ、呼吸の程度や、呼吸数はどう?苦しそうな呼吸だった?」と呼吸の観察項目をきちんと抑えたかどうかについて聞かれ、「観察していません…」と再び患者さんのもとへ・・・というシーンを何回見たことか。パルスオキシメーターは万能ですが、末梢が冷えていたり、センサーがずれていたりすると正確な測定値がでません。そのような間違った測定方法で表示された数値だけを信じて、 アタフタする学生さん、あるいは新人看護師さんには、まずは機械に頼らず、自分の目で、患者さんの呼吸状態をじっくりと観察してみよう!とアドバイスを送りたいと思います。

 前回お話しした、ICT技術の進化による、聴診器のデジタル化・ワイヤレス化などにより、呼吸音だけでなく、呼吸数や呼吸の程度の状態の観察のための機器が少しずつ開発されてきています。ただ、呼吸という観察項目は、実際には、体温や血圧以上に、ほかの要因(身体の体位、運動の状況、そしてもちろん肺機能、感染兆候の有無、本人の精神状態、あるいは自律神経系の状態など)が大きく関わっています。観察とともに適切な酸素の投与、安楽な呼吸ができる体位の工夫や声かけなどにより、その呼吸状態の安定のための看護技術が、セットで存在します。これからは、そういった、呼吸の援助を「セット」した医療機器の開発が進んでいくものと思われます。

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小池武嗣(こいけたけし)
フライトナースや離島の保健師の経験を還元できるようなバーチャルリアリティ環境の構築およびコンテンツ作成が主な研究分野です。研究のための寄付を募っております。研究の成果はこのnoteで公表していく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。