会社員をしながら法人設立してみた話
2023年10月30日、株式会社たぐいまれを設立しました。会社員として勤めている研修会社では、正社員としてフルコミットしたままでの創業です。なぜ会社員のまま株式会社を創業しようと思ったのかを綴ってみました。
転職という麻薬が効かなくなってしまった恐怖
今いる研修会社が転職8社目。9社目を自分で起業したことになります。もともと転職が多かった理由の一つに、自分の飽きっぽい性格がありました。人より仕事にのめり込む傾向があることも自覚していて、新しい仕事や環境に慣れるのも早く、その仕事ができるようになってしまうと、安定に居座ることなく、また次の新しさを求めてしまう性格。
そういう自分の性格を、今までは転職という手段で解消してきていました。ところが42歳8社目の転職で、その手段が効かなくなっていることに気付いてしまったのです。新しい環境に慣れるのも、仕事を覚えて一定以上の成果を出すことも、我ながらビックリするくらい早くなってしまっていたのです。いつもは1年かかっていたスピードも、半年で到達していることに、自分でも恐怖を覚えたくらいです。何が恐怖かって、まだまだ仕事人生は20年以上あるのに、転職という手段では、自分の飽きっぽさが満たされなくなってしまったことに恐怖を感じました。ついに麻薬が効かなくなってしまったのです。そうすると、あとはやったことがないことが、自分で経営すること。これからの人生を考えたら、この辺りで腹をくくらなければ、と思ったのが起業に至った理由の一つでした。そして仕事を習得するスキルが早くなったとは言え、転職8社目である研修会社の仕事自体は楽しかったので、会社員を続けながら創業するという道を選んだのです。
組織を自分で作ってみたくなった
個人事業主、フリーランスという生き方の選択肢は自分にはありませんでした。昔から舞台を作ったり仕事をしたりするのは、チームで成し遂げることが好きだったからです。今までの転職の際にも独立という選択肢を考えたことはあったのですが、チームで仕事をしたいという想いが、会社に所属するという選択をさせていました。
今の会社に転職する前は、4年半、人事部長というポジションでした。200名くらいの従業員の規模で、人事部の部下もいたので、全ての面接に出ていたわけではないのですが、とは言え200名くらいだと全員のことは把握できるくらいの規模感で、選考に直接携わっていなくても、人事責任者としての思惑は汲み取られていました。つまり、少し雑な言い方をすると、全部自分のお気に入りな人たち、ということになります。もちろん採用は、上手くいくこともあれば、上手くいかないこともあります。それも含めて、全て自分の責任だったわけです。
ところが8社目で久々に人事権を持たないプレイヤーに戻った時、自分が選択していない人と働く、という、会社員としてはしごく当たり前な状態に戻ったのです。良くも悪くもそこには自分の責任はありません。さらには入社時はマネジメントの役割も担っていなかったので、会社の人材に対する責任が自分にはない状態に直面しました。ところがチームで一緒に仕事をして何かを成し遂げたい自分にとって、それはあまりにも無責任で、そんな自分に物足りなさを感じてしまったのです。
再び人事部長をやりたいとはあまり思っていなかったので、そうなると自分で仲間を集めてチームを作るには起業するしかない、それが会社を創業する道を選んだもう一つの理由です。
やりたいことも、起業家マインドもないけれど
こんな事業をやってみたいとか、こんなことをして世界を変えたいとか社会に貢献したいとか、そんな起業家マインド的なものは全くありませんでした。だからこそ、今までの転職の際にも、起業が頭をチラついても、その選択をしなかったということもあります。創業するにあたり、今までの自分の経験をじっくり思い返して、社名に込める想い、自分が創る会社のコンセプトを見つけることはできました。ただ、特別やりたいことや起業家マインドがないことは同じまま。今の目標は、5年後に50人の会社にすること。やりたい事業内容も起業家マインドもないのに、チームで何かを成し遂げたい、ということは変わりません。格好良く言えば、何をやるかではなく、誰とやるか。やりたいことがあっても5年後に50人というペースは簡単なことではないことはわかっているつもりではあるのですが、飽きっぽい自分にとってはこれくらいの目標がちょうど良いのかな、とも思っています。
どこまでやり遂げられるのか、自分自身でも自分に対して楽しみでしかありません。