「空気を操る魔法!だからファシリテートはやめられない」キャリアに悩むあたなたへ。転職7社、やりたいことをやって幸せになるためにボクがしてきたこと(20)
リクルートを卒業したという自信で、結婚式という独特な世界での立ち居振る舞いに苦労していた中で、もう一つ、生意気にもやらかしたことがありました。それは、月一の全体会議。ボクにとっては生産性のある会議にはとても思えず、だったら自分が仕切りますと勢いよく買って出たものの、結果はボロボロだったのです。
ファシリテートは司会進行とは違う?
当時、社長とその右腕である参謀の二人が絶対王政で、メンバーもその二人のことをとても慕っていて、もちろんボクも大好きで、メンバー自らが考え新しいものが生み出せる環境ではありませんでした。入社する半年前から社内のチャットグループに入れてもらい俯瞰していたので、客観的に見てもそう感じていました。
それは月一の全体会議にも表れていて、みんなが意見を言う場、意見を言いましょう、と言われながら、丸一日かける会議の中、発言は社長と参謀が9割がたを占めていました。入社したばかりのボクからは、二人が言わせたいことを言わせているようにも感じられ、「メンバーが自ら考える」からは程遠いように感じました。その会議で詰まらなそうにしているのを敏感に察知した社長から「なんなのその態度は!」と言われ、「だって会議が詰まらないんです。ボクが仕切ります」と偉そうにも名乗り出て、翌月からはボクがファシリテートすることになりました。
社長と参謀は「ファシリテーション」という言葉を使っていましたが、当時ボクはその言葉の本当の意味をわかっていませんでした。司会進行と同義だと思っていました。それに気付けるのは、ボクが月一回ファシリテートを始めてから数回経ってからのことでした。
あなたそれはファシリテートじゃないの
結婚式業界そのものには苦戦していたものの、事務処理やお客様対応といった今まで培ってきた自分のスキルに対しては、社内で一定の評価を得ていた自信もあり、翌月から自分が仕切った全体会議も、自分としては80点くらいの出来だと思っていました。
ところが、社長が言うには「あれはファシリテートじゃなくて、司会進行。今までファシリテートしたことあるの?」「リクルートで社内外の勉強会や会議でファシリテートしてました(ボクが言っていたのは、ほぼ司会進行だったな、と気付けたのは後の話)」ボクには社長の言っていることが、わかっているようで理解できていなかったのです。
ただ、メンバーが自ら考えて会議の場で話せるようになる、というボクの目的は、一回やそこらでは変わるものではなく、ボクが仕切ったところで、やはり社長や参謀がほとんど話していた、というか、うながしたところでメンバーから発言がほぼなかったのが現状でした。
当時、ファシリテーションの本を探してみても、今ほどわかりやすく解説されている本はありませんでした。そもそも、そこまで本が出ていませんでした。自分としては出来ていると思っているものの、社長からはボロクソに言われるし、自分の目的が果たせていないことは自分でわかっていたので、社長と参謀が、ファシリテートとは、と語ることを、頭の半分では懐疑的ながらも、他に参考になるものもなく、少しずつ吸収をしていきます。そのうち、参謀が元研修講師をしていた術を、少人数の研修として毎月開催してくれることになり、そこで学び、月一全体会議の振り返りも交えながら、理解を深めていきます。
その場の空気を創れる魔法
もちろん、司会進行という役割もあるのですが、試行錯誤を繰り返すうちに、ファシリテーションによって、その場の空気を創ることが出来るし、自分が(あるいは社長が会議に)望んでいる結果に、自分の命令ではなく、参加者の意思で到達できるように導けることも実践でわかってきました。そうなると、会議中はもちろんのこと、会議前に一人一人のコンディションもしっかり把握し、普段のキャラも含め、誰から発言してもらえばその場の空気を良い方向へ創れるか、自分がどんな相槌や拍手などを促せば効果的に場を創れるか、といったことにも気を遣うようになってきました。
ファシリテーションは自分も含めて3人以上いる場で使えるのですが、それは大人数になっても同じ。もともとイベントを仕切るのが好きだったボクは、このファシリテートスキルをパーティでも活かしていくようになります。(それはそれで規模が違い、簡単なことではなかったのですが。)話し方、プログラムの順番、歓談時間の絶妙な長さ(料理サーブの間隔とも密接に関わっていることは、出来るキャプテンから教えてもらったことでもありました)、さらにはその場の空調や光加減、特に影響が大きいのは流れている音楽の内容やそのボリュームでも、全く結果が変わることにも気付いていきます。音響をやっていた頃に身に付けた感覚とファシリテートが結びつくのはそんなに難しいことではありませんでした。
ちなみに、今は新卒の1dayインターンシップで進行役を務めていますが、何種類かあるインターンの内容によって、流すBGMや、自分の着るものも変えています。あくまで主役は自分ではなく参加者。その参加者に働きたいかけたい目的を達成するためのお膳立てがファシリテートの仕事だからです。
理念経営に力を入れていた会社であったこともあり、ファシリテートの技術や、表彰式やキックオフなどの催し物に力を入れていたリクルートでの経験を活かして、理念浸透にも励んでいました。社内やパートナー企業を集めた会の主催をすることも多く、あくまで参加者が自分事として考えてもらえるファシリテートを心掛けながら、理念浸透にも試行錯誤をしていました。
会議だけでなく営業でも使えるスキル
こうして試行錯誤と失敗を繰り返しながら、月一の全体会議が変化するのには、1年以上かけての経験をさせてもらいました。100人規模のパーティや運動会といった社内外イベントも、上手くいったこともあればそうでないことも経験させてもらいました。このスキルは、会議や研修講師としての場はもちろん、新郎新婦との打ち合わせ、その後の法人営業でも複数人が関わる商談の場でも使えるようになりました。応用すると、自分がメインで話していない時も、その場を創ったり操ることも出来ることにも気付いてきました。
カリスマスピーカーのように洗脳して従わせるのではなく、その場にいる人たち本人の意思で動いてもらうのがファシリテート。従わせるのではなく他人を導くということは簡単なことではありません。でもそれが出来たときは嬉しいですし、出来ているかどうかは、意図をもって空気を動かしている自分にしかわかりません。
こうしてボクは、ウェディングプランナーとしてはもちろんのこと、月一会議で試行錯誤することで、ファシリテートのスキルも習得していくことができました。そして、参加者の意思で動いてもらえる働きをかけるということは、今でも毎回必ず120%成功するわけでもなく、まだまだ勉強中です。
かなやんレベル23→24
・空気は自分で創るもの
・ファシリテートスキルは少人数でも大人数でも使える