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【キャリアストーリー解説編①】新卒入社した大手企業に16年勤め上げて課長目前だけどいまだに確固たる自信がない

こんにちは。堀内猛志です。
前回のnoteでは『新卒入社した大手企業に16年勤め上げて課長目前だけどいまだに確固たる自信がない』というキャリアストーリーについて書きました。

私の周りで相談を受ける人の悩みや心境を網羅的に詰め込み、太郎というペルソナを作ってみましたが、思いのほか反響が大きかったのはやはり多くの人にとって重なる部分があったのだと思います。

今回は前回紹介した太郎というペルソナを題材にして、ミドルキャリアにおける心理的変化ついて解説します。

年齢による組織コミットメントの変化

まず伝えたいのは、キャリアと年齢は密接なつながりがあるということです。加齢とともに人生の残り時間は減っていきます。当たり前の話ですが、残り時間が長くキャリアのオプションも多い20代はあまり強くキャリアを意識せずに、目の前の仕事に集中できる人が多いです。また、50代以降は自身の専門性が固まり、キャリアのオプションが減ったことで、同じく目の前の仕事に集中せざるを得なくなります。

悩むのが30代から40代のいわゆるミドルキャリアの人たちです。自分の専門性が確立せず不安になったり、キャリアを縦に伸ばすか横に伸ばすか岐路に立たされます。50代以降よりもキャリアの残り時間の余裕があるにも関わらず、年齢とともに転職も難しくなることもあり、キャリアリミットのカウントダウンが始まっているような気がしてきます。この年代の人が転職活動の相談に来られるときに、決まってこう言われます。「年齢的にもこれが最後のチャンスだと思っている。」まだまだキャリアは続くのになぜ最後だと思い込むのだろう、そんなにチャンスがないと思い込むのはなぜだろうと昔は不思議でしたが、ミドル人材のキャリア観を理解して腹落ちしました。

つまり、今、自身のキャリアに悩んでいる人に伝えたいのは「みんな同じだ」ということです。自分だけ特別おかしいわけではないと理解し、落ち着きましょう。太郎の場合も、30代半ばまでは転職を考えたことすらなかったのに、急に自分の中で変化が起き戸惑うことになりますが、青天の霹靂ということではなく、キャリア論としては実は当たり前のことなのです。

年齢からみた組織コミットメントの変化※筆者調べ

組織行動の分野では、「コミットメントのJ字カーブ」として広く定着しています。ほとんどの人が、年齢による心境や環境の変化に伴って、上記のようなグラフを描いてしまいます。赤丸部分に何が起きているのかは、以下を参照してください。

■ 1回目の落ち込み(入社6-7年及び20代後半)
 ・入社直後のリアリティショック
 ・心理的リアクタンス
 ・処遇(給与)への不満
■ 2回目の落ち込み(入社10-11年及び30代前半)
 ・キャリアの決断前後における不安説
 ・ 昇進前の仕事荷重説
 ・転職や異動のリアリティショック説
 ・ワーク・ファミリー・コンフリクト説 

太郎は計らずとも入社後のキャリアは自分の希望通りに進み、プライベートも充実していたために1回目の落ち込みはなくて済みました。しかし、それが本当に幸せだったのかどうか、というとそうではないかもしれません。次回のnoteで解説しますが、人は本来キャリアの中で葛藤しながらアイデンティティを確立します。太郎にはそれが幸か不幸かなかったために、30代半ばにして初めてのリアリティショックを強く受け止めてしまいます。太郎の状況を読んで「そんなに悩むことか?」と思った人もいると思いますが、30代半ばまで葛藤せずに来た人の初めてのリアリティショックは周りが思っている以上に大きなものなのです。

年齢によるライフステージの変化

組織コミットだけではなく、職業観も年齢と共に変化してきます。これはドナルド・スーパーの『ライフステージ論』が有名です。

ドナルド・スーパーの『ライフステージ論』

それぞれのステージにおける状態を解説すると以下のようになります。

■ 成長段階(~14歳)
 ・家庭や学校での経験を通じて、仕事に対する空想や欲求が高まり、職業への関心をよせる。
■ 探索段階(15~24歳)
 ・暫定期:自分の欲求・興味・能力・価値観などが考慮され、暫定的な職業選択が試みられる。
 ・移行期:学校教育・レジャー活動・アルバイト・就職などから、試行錯誤をともなう現実的な探索を通じて職業が選択されていく。
 ・実践施行期:初歩的な仕事が与えられ、それがライフワークへと発展。
■確立段階(25~44歳)
 ・試行期:自分に適していたと考えていた分野が適切ではないと考えられた場合、分野の変更(転職・職業転換など)を行う。
 ・安定期:キャリアパターンが明瞭化。職業生活の安定化。仕事に対してより創造的かつ生産的な活動。
■維持段階(45~64歳)
 ・自己実現の段階となり、安定志向が高まり、既存のキャリアを維持することに関心をもつ。
■下降段階(65歳~)
 ・減速期:仕事のペースは緩み、職責は変化し、ときには下降した能力に合わせて仕事の性質が変容。常用的な職業の代わりにパートタイムの職務を見出すことも多い。
 ・引退期:職業上の完全な休止。年齢的限界については個人差が大きい。セカンドライフ(新しい役割の開発)が新たな課題となる。

ライフステージ論は1900年代に提唱されたものですが、大昔からある格言に類似しています。それが孔子の論語の一説です。

子曰、
「吾十有五にして学に志す。
 三十にして立つ。
 四十にして惑はず。
 五十にして天命を知る。
 六十にして耳順(したが)ふ。
 七十にして心の欲する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」。

『論語』為政

口語訳をしたものがこちらです。

子曰く、、
「私は十五歳のとき学問に志を立てた。
 三十歳になって、その基礎ができて自立できるようになった。
 四十歳になると、心に迷うことがなくなった。
 五十歳になって、天が自分に与えた使命が自覚できた。
 六十歳になると、人の言うことがなんでもすなおに理解できるようになった。
 七十歳になると、自分のしたいと思うことをそのままやっても、人の道を踏みはずすことがなくなった」と。

ライフステージ論に重ねると以下のようになりますね。

ライフステージに当てはめた孔子の格言

つまり、大昔から人間はそんなに変わっておらず、30代は悩むものなのです。しかし、40歳にして不惑の域に達している人はどれくらいいるのでしょうか。現代人がなかなか不惑に達しない原因が、このnoteで何度も伝えている「多様性による弊害」だと思っています。キャリアのゴールが1つであれば、少しづつ小刻みに悩みながらも、大筋は外さずに進むことができ、どこかで不惑や致命の域にたどり着いたかもしれません。しかし、ゴールが1つではなくなった現代においては、永遠に迷う人が生まれてきてしまうのではないかと危惧しています。

※多様性による弊害については以下のnoteをご確認ください。

今回は、太郎のペルソナから年齢によるキャリア観の変化、特に、組織コミットメントの変化とライフステージの変化を解説しました。年齢、及び、ライフステージの変化に伴い、また、リアリティショックがきっかけで組織コミットメントが急に下がってしまった太郎はどうすればいいのでしょうか?次回はキャリアアイデンティティの観点から、太郎と同じ思考に陥った人の対処法をお伝えしていきたいと思います。


自身のキャリアにおける自己認知をしたい方、太郎のようにリアリティショックからキャリアが見えなくなった方は以下よりご相談ください。


自分のタレントを本業以外の場面で活かしたい、キャリアクラフティングを実践したいという人はこちらからご連絡ください。


それでは今日も素敵な一日を!

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