会津を守る大きな屋根 〜喜多方ワーケーション日記 ♯4〜
ここはミライの“ととのい”地区
最後にこの素晴らしい会津盆地の姿も紹介したい。
先に述べた大和川酒造の弥右衛門(やうえもん)さんが立ち上げた会津電力さんのソーラーパネルを見に行った話。
なだらかな山を登った雄国地区にあるソーラーパネルの姿は圧巻だった。
ここからみる会津盆地の姿が忘れられない。
長い長い傾斜の上にあるのせいか、そんなに高いところにいるという印象はないが、ちょうどいい位置の眼下に広大な盆地が広がる。その背景にはこの大地の恵みの源である飯豊山(いいでさん)がその大地を優しく抱え見守っている。天気の良い日はいつまでもこの景色を見ていられる。
丘の上には「満天テラス」という施設があった。
この景色を背景にBBQもできる施設なのだが、今は使われていないそうだ。
レストランだった形跡の内観もあるし、ちょうどいい敷地もあるので、食事とサウナを楽しめたら最高じゃないかと勝手に想像してしまった。
もったいないなぁという気持ちを内心に抱えながら、ここも何かポテンシャルを感じるような場所であることには間違いないなと思った。
そんなことを思っていたら、運よく弥右衛門さん(大和川酒造会長、会津電力代表)にもお会いでき、コーヒーをご馳走になりながら少しだけお話しも伺えた。
酒造の現場からすっかり離れており、いまは会津電力の活動に集中しているそうだ。すっかり使われなくなってしまった、ほとんど誰も来ないこの満天テラスを自分の別荘のように使っていると、大きく広いガラス窓越しにみる広大な風景を見ながらコーヒーをすする優しい顔が印象的だった。
いくつになってもその行動力で皆を良い方向に導く経営者というのは、飯豊山のように何かどっしりと構えながらも優しさを感じるオーラを纏うんだなと思った。
「ゆっくりしていって〜」と言いながら、すぐにコーヒー片手にどこかに去ってしまった。この飯豊山と会津盆地の景色を眺めながら、少し喜多方の歴史や背景などレクチャーのような雑談のような話を伺い、何とも落ち着いたコーヒータイムだった。これだけでも僕の心は何か整った感じだった。
さぁ帰ろうと車を少し滑らせると、木を切り倒している作業員らしい二人がいた。何とそのうちの一人は先ほどの弥右衛門さんではないか。
「親父は“木こり”になってしまった」と大和川酒造社長の佐藤雅一さんが言っていたことは本当だったんだ。。。
車から作業中の弥右衛門さんに大きな声でお礼を言い、後部座席からみるその姿が小さくなるまで見届けたー
循環する大地のめぐみ
降る傾斜の途中、少し寄り道をした。
この傾斜と太陽の恵みのもとに広がる葡萄農園らしきものが見えた。。
まるで山梨の勝沼町にも近い風景ー
そう、この喜多方の丘陵地である雄国地区ではソーラーパネルだけではなく、ワイン造りもしているのだ。
このワインも、もちろん会津電力さんが作っているから驚きだ。
小高い丘の上、排水も良く、寒暖の差もあり、条件的には整っている。
電気だけ作っていて良いのか、電気を使ったユニークな付加価値のあるものを作って、地域への還元もできるようなものが必要なのではないか、そんな想いで辿り着いたのがワイン作りだったそうだ。
これも食とエネルギーによる地域の自立のため。
一貫してブレていなく、感銘を受けた。
米づくり、酒造り、エネルギー造り、そしてワイン造りだ。
頭が下がる。
また喜多方市は会津では初めてカーボンニュートラル宣言をしており、そのプロジェクトの一貫で行なった植林の苗木も見せてもらった。
グリーンツーリズム(農村民泊)も積極的に行なっており、アスパラ農園も少しだけ覗くことができた。
エネルギーだけではない様々なものが循環し、“ととのう”風景がこの雄国地区から感じ取ることができた。
初めてのワーケーションを終えて
今回のワーケーションでは、同世代の経営者との交流を軸に、歴史や背景、気質、想いなどを知ることによって肉付けしていき、だんだんと会津・喜多方の輪郭が見えてきたような、そんな数日間であった。
さらにここでは紹介しきれなかったが、会津木綿を使った商品展開に挑戦している星幸衣服店さん、若い力でフード事業も手がけ様々な商品開発と展開を続ける地域密着型の橋谷田商店さんにもお話を伺えた濃密な数日間だ。
出会った方々皆に共通して言えるのは、本当に自立心が強いということ。
それは商人としての自身の自立はもちろんのこと、地域自体を自立させたいという厳しい冬にも負けない熱い想いから来るものであったに違いない。
そして雄国の丘から見た広大さと豊かさは、喜多方の商人気質や自立心からくる“オープンマインド”を象徴するかのような風景であった。
今回はその“オープンマインド”の気質の中で様々な出会いに恵まれ、刺激やパワーをもらった。
自立する力強さと、受け入れる優しさ。
人も蔵も景色も、全てこの言葉に集約されているように思えた。
同時にこの風土と蔵の持つポテンシャルを随所に感じることができた。
今回せっかく頂いた刺激とご縁を、この「蔵と醸しのまち喜多方」とともに、これからも少しづつ醸成させていきたいと思った。
これにておしまい。
ここまで読んで頂きありがとうございました。