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スポーツと地域の幸せな関係とは? ♯1
東北の復興と共にあるクラブチーム
今月の3月11日を迎えて東日本大震災から13年が経過した。
先の1月1日の能登半島地震、そして1月17日の阪神・淡路大震災、風化させないためにもメデイアの発信は本当に大事であると常々思う。
2万9千人近い方々が今もなお、避難生活を続けている現実がある。残念ながらメディアの発信が無いと、この現実は知り得ない。
3月11日前後になると、東北の復興する姿と、あるサッカークラブチームの成長する姿が重なり、あの地域の今はどのような景色が広がっているのかと頭に思い浮かぶのだ。
そして自分の中には「スポーツと地域の関係」という深掘りしたい軸があるのだが、それはこのクラブチームの発展に携われたことがきっかけだった。
福島県いわき市と双葉郡をホームタウンにしている、現在J2リーグに加盟している「いわきFC」。
このサッカークラブチームを軸に、改めてスポーツと地域の幸せな関係とは?を自分なりに言語化し整理してみたいと思った。
そして自分はなぜスポーツが好きなんだ?
サッカーが好きなんだ? Jリーグを観るんだ?
そんなところまでお話しできればと思います。
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いわきFCが目指すものとは
2012年に発足したこのクラブチームは2015年にアンダーアーマーを保有する(株)ドームの資本が入り、(株)いわきスポーツクラブとして再スタートを切った。
当時自分が関わるようになったのは2016年、いわきFCが福島県2部リーグに参加していた時だった。あえてわかりやすくいうと、ピラミッドの頂点をJ1とすると、8つ下のカテゴリーとなる。(ステージ図参照)
復興の一役として(株)ドームが建設した物流センター(倉庫)がいわき市にあり、そこにある広大な土地にサッカーグラウンドを整備し、サッカークラブを運営しようという構想が具体的に動き始めた。
また、「いわきFCパーク」という日本で初めて商業施設併設のクラブハウス(トレーニング施設)を作ろうという計画も動く。
その施設内の最上階にオフィシャルカフェを作るという話があり、そのブランディングデザインを担当することになったのだった。
まずこの話を頂いた時に、始めて耳にしたクラブチームだったのでJリーグ加盟のクラブではないことは認識していた。
どこのカテゴリーのチームだろう? J1チームでもオフィシャルカフェなんて中々無いのに、一体どんなクラブなんだろう!?というのが最初の印象だった。
最初の打合せでの話を聞くなり、すぐにそのプロジェクトは壮大なビジョンを持ったものだと認識が変わったのだった。
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WALK TO THE DREAM
手渡された資料の1ページ目にクラブスローガンがあった。
目指す青写真イメージの上にはこう書かれていた。
我々の夢
それはいわき市を東北一の都市にすること。
スタジアムでは毎週、スポーツや音楽などの
エンターテイメントが繰り広げられ、
街中には活気と笑顔が溢れ、
子供たちの未来が光輝いている。
そんな、誰もが誇れる東北で一番楽しい時間が流れる街、
いわき市を目指して。
WALK TO THE DREAM
そしてその夢の実現に向けスポーツを産業化した「いわき市成長サイクル」の図式があり、理念とビジョンが記されていた。
『スポーツを通じて社会を豊かにすること』
1.いわき市を東北一の都市にする
2.日本のフィジカルスタンダードを変える〜魂の息吹くフットボール〜
3.人材教育と育成を中心に据える
そこには高々と「復興」という文字はない。
ビジョンは復興から“成長”へ繋げるものだった。
いわきFCが地域と一体化となり、新たな社会価値を創造し、地域のシンボルとなり経済を活性化させていく。
その経済活性化により生み出された財源は人材育成や子育てなどに投資され、“人づくり”“まちづくり”の好循環が生まれ、“いわきブランド”として向上していく。
ざっとこんな成長サイクルである。
しかも〇〇年には○部優勝、JFL優勝、スタジアム完成、J3,J2。。。
そんな推移表まであるではないか。
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欧米にあるスポーツの産業化の良いイメージは、理想として何となく自分でもずっと持っていた。
だがこの日本では遠い理想の存在だろうと思っていたのだ。
それがこの明快な図式を目にしたとき、さっと霧が晴れ、爽快な気分と同時に、こういうことだったのかと、このドキュメントに目を通した時のいくばくかの感動とワクワクを感じたことは今でも鮮明に覚えている。
(株)いわきスポーツクラブ代表の大倉氏のメッセージがクラブ公式ページにあるが、明快で爽快で、幸せな図式はまさしくこのメッセージに込められていると思う。
ビジョンを体現するいわきFCの姿
2016年当時、選手たちはプロではなかった。
午前にトレーニング、昼食を挟み午後はドームの物流センターで働く、そして夕食、という基本的にはこのスケジュールだった。
プロでない選手が働き口まであるのは精神的にも大きいのではと思った。
だが、さらにこれだけではない。
(株)ドームが資本なので、食事面やDNSブランドのサプリやプロテインの支給、充実したトレーニング施設のおかげで選手達はそこにサッカーボールがなければラグビー選手なんじゃないかという体つきであった。
それもそのはず、いわきFCは「日本のフィジカルスタンダードを変える」というビジョンを掲げており、そのチームコンセプトは試合のスタイルを見れば一目瞭然だった。
最後までチームのために走り攻守の切れ目なくバチバチと戦う様は、今思うと現在のJリーグのパイオニア的なスタイルであったのかもしれない。
そのスタイルは勢いを止めなかった。
2017年の天皇杯(全日本サッカー選手権大会)では福島県代表の一枠をかけJ3の福島ユナイテッドと戦い、みごと福島県代表として初めて天皇杯に出場を果たした。
一回戦を勝ち上がり、二回戦では未知なるJ1カテゴリー、北海道コンサドーレ札幌と対戦したのであった。
延長までもつれ込む体力勝負になったこの死闘。
しかし「日本のフィジカルスタンダードを変える」ことをチームコンセプトに掲げるいわきFCにとっては好都合の展開だったともいえる。終わってみれば最後まで走り勝ちしたいわきFCがJ1チーム相手に5-2で破るという、いわゆる“ジャイアントキリング”を成し遂げた。
強化2年目、当時7部相当の新興チームがJ1チーム相手に5得点し勝利したことは世界的にみても中々類を見ない。
3回戦で同J1の清水には完敗したが、そのフィジカルスタンダードを変えるというスローガンはただのビジョンではないことを証明できた大会だったといえた。
同年には先に述べた、日本初の商業施設併設のクラブハウス「いわきFCパーク」が開業、下部カテゴリーにも関わらずその充実した施設とプレースタイル、そして“ジャイキリ”が重なり、当時のメディアは大きく取り上げた。
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前年に福島県2部リーグから1部に昇格したチームは、この年に見事1部優勝を果たし、東北社会人サッカー2部南リーグへと昇格した。
道のりはまだまだ遠い。
当たり前のことだが、クラブチームは勝利をしなけれなならない。
勝利を重ねることの重要さ、そして勝利の重み。
一つ一つの勝利が価値を上げていくことに繋がるんだと、一歩一歩確実にカテゴリーを上げていくクラブを見て強く思うのだった。
#2へつづく(近日公開予定)