ライブ音源トレードについて①
グレイトフル・デッドの音楽は、そのライブにおけるパフォーマンスが真骨頂とされ、彼らのツアーに同行する、所謂「デッド・ヘッズ〜Dead Heads」というファンによって支えられていた部分は非常に大きい。ファンの中にはバンドのライブ音源をシェアすることでファンを増やし、グループをサポートするという意味もあった。デッドのライブには、テーパーズ・セクションというエリアが設けられ、そのエリアからグループのパフォーマンスを録音するというルールもあった。また、テーパーは「録音の邪魔になる」という理由で他のファンを排除することはタブーとされた。こういったシンプルで分かりやすいルールで、デッドの音楽は広まっていった。さらに音源のシェアには金銭の授受を伴わないことが大前提とされた。もちろんアーティスト側がトレード音源の流通を認めていない場合は、当然ながらトレードは不可とされた。
こうしてファンからファンへ音楽はシェアされ、自身の知らない音源を求めるファンも多かった。金銭の授受をを伴わないという前提であるため、新しい音源を入手するためには自身の所有している音源と交換(トレード)することが一般的であった。こういった音源はデータベースサイトにまとめられ、デッドであれば日付やロケーションなどでの検索ができた。また自身の所有している音源のリストをウェブ上に公開しているファンもいた。彼らへメールを送信し、欲しい音源に対して交換(トレード)の依頼をおこなうのである。しかし、新しいファン(ニュービー)は、交換(トレード)できる音源を所有していない。もしくは、自身が所有している音源は、相手がすでに所有していることも少なくなかった。
そこで、B&P トレードという方法がとられた。B (Blank) & P (Postage)の通り、ブランクメディア(当時はカセットテープ)とポステージ(返信用切手)を相手に送付し、そのブランクメディアに録音してもらい、返信用切手で返送してもらうというルールである。B&Pは、相手にとってメリットはなく、手間が掛かるだけである。それでも新しいファンのために〜という厚意で対応してくれる者も多かった。中には金銭の要求をしてきた者もいたが、金銭の話になった場合は、依頼を丁重にお断りをさせていただいた。
もちろんB&Pにもルールやマナーは存在した。ルールとしては、以下の点を記憶している。
・使用メディアは「マクセルのクロームテープ 90分」
・プラケースは使用不可、不織布の簡易ケースを使用(CD-Rの場合〜後述)
一時期、国内ではマクセルのテープが入手できなかったために、ソニーやTDKの商品から選んでもらったこともあった。メディアがCD-Rの場合のプラケースについては、重量増による切手代の超過を防ぐために不織布の簡易ケースが使用された。
マナーとしては、無償で手間をかけてもらうため、ちょっとしたオマケを送付することが多かった。主に国内で販売されている「缶バッジ」が人気だった。また90分テープの余りに「フィラー」として、オマケを録音してくれることもあった。
こういったトレードのメディアは、カセットテープ>DAT>CD-Rへと変化し、その後はファイル交換ソフト(P2P)によるデータのやり取りへと進化していった。
次は時代の進化とブートレグ(海賊盤)との差別化についてお伝えしようと考えている。