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エレックレコードの時代

15才の時に初めて中古レコードを購入した。叔父さんが2駅先のダイエー(当時)で、ジュークボックスに入っていた7インチ盤を安く売っていると教えてくれたので、同級生と一緒に行ってみた。価格は1枚150円くらいだったと思う。購入したのは「好きよキャプテン/リリーズ」と「母に捧げるバラード/海援隊」そして「ロマンス/ガロ」の3枚。当時はギターを弾き始めた頃で、まだ洋楽よりも歌謡曲やフォークソングが身近な音楽だった。

その3枚の7インチ盤で「母に捧げるバラード」の発売元が「ELEC/エレック」と記載されており、それまでも毎月レコードは購入していたが、エレックは全く知らないレコード会社だった。最初はパチモンかと思ったが、聴いてみても偽物ではなさそうである。その時は「あまり有名ではないレコード会社」という認識だった。

そして月日は流れ、かの「ELEC/エレック」レコードはすでに倒産したレコード会社であり、その在籍アーティストは違うレコード会社へ移籍したことを知った。しかしこの頃にはすでにオタクな素養があったのかもしれない。そのエレックの他のレコードを探してみたくなった。当時はインターネットもない時代である。しかも倒産した会社のレコードは、街のレコード店に売っているはずがない。

ダイエーで販売していた中古レコードはダイエーの店舗ではなく、中古レコード店が催事として販売していたと聞き、初めて中古レコード店の存在を知った。そして通っていた高校の2駅手前の駅前に「中古レコード」と書かれた看板を電車の中から発見し、土曜日の午後(当時は土曜日は半日授業だった)、途中下車してその店へ行った。そこにはたくさんの中古レコードがあり、かのダイエーの催事はその店が出店していたことを知った。そして「レコードを掘る」ということを覚えた。高校1年生だった。

毎月の小遣いでは新品のLPを1枚購入すればなくなってしまうので、よく友人とレコードの貸し借りをして多くの音楽を聴くようになった。その後、本格的に中古レコードを購入するのは18才で社会人になってからである。その頃には興味の対象は洋楽になっており、邦楽〜しかも’70年代のフォークを探すことはなかったが、かのエレックレコードはずっと気になる存在であった。

今回 紹介させていただくのは、近年発売された「エレックレコードの時代」という本と、そのエレックレコードのアルバムである。本には、当時 苦労して探したレコードがデータとして記載されている。もちろん初めて中古レコードとして購入した7インチ盤もあり、それがパチモンではなかったことが証明された。

エレックレコードは「URC」「ベルウッド」と並んでフォーク黎明期に多くの音源をリリースした。よしだたくろうや泉谷しげるもエレックの出身であり、’69年の設立から’76年の倒産までに多くのアーティストを輩出した。ちなみに大瀧詠一の「ナイアガラ」も最初はエレックの傘下であった。

エレックレコードの時代(I、II)

レコードは価値のないモノ〜という20年程前に、相当数の中古レコードを集めた。もちろんエレックレコードのレコードは今でも見つけては購入している。

(左上から)あおい輝彦、海援隊、ベル(2枚)

エレックレコードにはフォークを中心とした「ELEC」レーベルとアイドルに特化した「愛」レーベルが存在していた。

(左上から)くもと空、竜とかおる、とみたいちろう、沖縄フォーク村(V.A.)

「くもと空」は「太陽がくれた季節」で有名な「青い三角定規」のメンバーが結成したグループであり、「竜とかおる」は、今ではレアなグループの唯一作品である。

これらのレコードで印象深いのは、8枚中7枚が「見開きジャケット」になっていることである。またインサートにも手書きイラストなどが書かれており、かなり丁寧な作りであった。

「TAKE 1/とみたいちろう (‘73)」

「エレック・イヤーズ/海援隊 (‘98)」

古いモノ=いいモノとは限らないが、黎明期だったからこそ持っていた部分は確実にあると思う。それらを紐解いていくのもライフワークとしては楽しいし、これからも自分自身に見合った内容で続けられたらと思う。

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