「The CODE (シリコンバレー全史 20世紀のフロンティアとアメリカの再興)」 マーガレット・オメーラ著 山形浩生・高須正和訳
イノベーションの聖地の実像
シリコンバレーの成功をまねようと多くの国が自国に特区などを作ったが、うまくいかなかった。シリコンバレーは簡単に再現できるものではないのだ。本書を通してその理由を知ることができる。
シリコンバレーの成功にはいくつかの要因がある。ソ連との宇宙開発競争によってもたらされた莫大な国家予算、スタンフォード大学やパロアルト研究所といった地域エコシステム、ホーム・ブリュー・コンピュータークラブに代表される人のネットワーク、技術者仲間から生まれたベンチャー投資家、技術者の転職を後押しする特異な労働法制と慣習、急増したアジア系移民による人材供給、などだ。
IT開発の世界には独特の「共有と協力」の精神が流れている。これもシリコンバレーが育んだ文化である。インターネット上には無料で利用できる技術者向けツールやプログラムがたくさん提供されている。最先端の生成AIでもオープンソースで誰でも自由に利用・開発できるものがある。アジアの比較的貧しい国などで若いIT技術者が増えているのはオープンな開発環境のおかげである。この「共有と協力」の精神が育まれた経緯も本書を通して知ることができる。
「The CODE(シリコンバレー全史 20世紀のフロンティアとアメリカの再興)」マーガレット・オメーラ著 山形浩生・高須正和訳 KADOKAWA
(この記事は以前に私が業界誌に投稿した推薦図書文です)