ケトルベルトレーニング
今回はケトルベルトレーニングについてです。
ケトルベルとは丸い鉄球にハンドルと呼ばれる取手の付いたトレーニング器具です。その見た目からケトル(やかん)ベルと呼ばれています。
あまり聞き慣れないトレーニングですが、近年、世界的に人気が高まっているトレーニングツールです。日本では数年前に琴奨菊関がケトルベルトレーニングを取り入れていたことでも話題になりました。
最近ではクロスフィットトレーニング(バーベルやケトルベルなどを使用した複合的なトレーニング方法)が大人気で、その中でケトルベルを使用したプログラムもあることや有名モデルも実践していることから一般の方へも少しずつ浸透しているトレーニングです。
私も本格的にケトルベルトレーニングを勉強し始めたのは2年ほど前で、選手指導の際にもケトルベルトレーニングを導入しています。
選手指導をするにあたって、正しい技術やテクニックを身に付けたいと思い、日本ケトルベル連盟のケトルベルインストラクターの資格も取得しました。
ケトルベルトレーニングの特徴
ケトルベルトレーニングには2つの特徴があります。一つ目の特徴は負荷のかかり方です。
この負荷のかかり方がダンベルやバーベルを使用したトレーニングとの一番大きな違いです。
通常のウエイトでは重りは垂直に移動しますが、代表的な種目であるスイングをはじめ、ケトルベルトレーニングでは円を描くような動きが多く含まれています。そのため、ダンベルやバーベルとは異なった刺激を体に与えることができます。
2つ目の特徴は扱う重量が軽いことです。
ベンチプレスやスクワットの記録は少し鍛えれば自体重の1.5倍は扱えると思いますが、ケトルベルでは体重の半分の重さで楽にスナッチができるようになれば上級者と言えます。
スナッチのように股下から頭上まで重りを移動させるので移動距離が長い分、扱う重量が一般的なウエイトトレーニングと比べて軽いのです。
ケトルベルトレーニングよって以下の能力を向上させることができます。
・可動性
・安定性
・巧犠牲
・筋力
・パワー
・持久力
最近では体を鍛えること以外にダイエット、ボディメイキングを目的としたケトルベルのプログラムも開発されています。実際に日本国内や海外のジムにもケトルベルが備えられるようになっていて、ダイエットやボディメイキングに効率が良いエクササイズ法として広く認知されています。
ケトルベルの4つの有用性
①スペースを必要としない
ケトルベルでのトレーニングは1畳分のスペースがあればできるので、自宅でも容易に取り組むことができます。家に1個あれば全身のトレーニングができます。なかなかジムに行けない方や自宅でのトレーニングがメインの方には特にオススメです。
②他の器具に比べて安価
バーベルやダンベルと比べて安価な値段で購入することができます。高いものでも1万円以下で購入できます。先日私も自宅でトレーニングするために2個購入しましたが、2個で1万円でした。
またそこまで大きい物でもん大してかさ張らず、部屋の隅に置いておけば生活の邪魔になることはありません。デザインがカラフルなケトルベルもあるので、おしゃれな感じにもなる…かも?
③怪我をしにくい
ダンベルやバーベルと比較して扱う重量が軽いので、怪我のリスクが低いことも特徴です。ケトルベルの代表的な種目であるスイングやスナッチなどは腰部に負担のかかる種目もありますが、正しいテクニックで行うことによって怪我のリスクが軽減されます。
④種目のバリエーションが豊富
ケトルベルはその独特の形状を生かした様々なトレーニングを行うことができます。中でもクリーン、スナッチ、ジャークといったクイックリフト系種目を容易に行うことができます。バーベルでのクイックリフト系種目はオリンピックバーや専用の床材が必要ですが、ケトルベルではそれらが必要ないのも利点です。
ケトルベルの歴史
ケトルベルの歴史は意外と古く、16世紀初頭(1704~1710年)にはロシアでギラ(Girya)という名称で存在していました。
ロシアではその後も伝統的なトレーニング器具として使われ続け、20世紀半ばよりギレヴォイ・スポーツというケトルベル競技も行われています。
2001年頃に旧ソ連軍の特殊部隊でケトルベルやトレーニングの訓練担当をしていたパベル・ツァツーリンがアメリカに渡り、RKC(Russian Kettlebell Challenge) という団体を立ち上げてケトルベルの普及活動をしたところ、アメリカ全土で広がり、多くの国で普及されるようになりました。
ハードスタイルとギレヴォイ・スポーツ(GS)
ケトルベルについて話をするときに、ハードスタイルとGSという単語が出てきます。
ハードスタイルはケトルベルをトレーニング器具として使用し、身体の強化(強くなること)を目的に行います。大きな負荷を身体にかけるため瞬発的でパワフルな動きを短時間で行います。体を鍛えるツールとしてケトルベルを使用するスタイルです。
それに対してGSは、10分間で何回ケトルベルを挙上出来るかを競うスポーツです。ケトルベルトレーニング自体がスポーツ競技となっています。10分間挙上し続けるため、ハードスタイルと比べると動作はゆっくりです。
長時間運動を持続させるため1回毎の挙上で身体にかかる負荷を最小限にし、効率の良い動作で行います。
このようにケトルベルの中でも目的に応じてテクニックが異なる部分があります。どちらのフォームが良いか悪いかという話ではないので、目的に応じてフォームを使い分ければいいと思います。
ハードスタイルとGSのフォーム動画。画面左がGS、右がハードスタイル。
https://www.youtube.com/watch?v=YK60W-BfIwY
まとめ
ケトルベルはバーベルやダンベルと同様に優れたトレーニングツールです。
一般トレーニーやアスリートが体を強くしたり、女性のボディメイクといった幅広いニーズにも対応できるツールです。普段、ジムに通うことができない方はケトルベル1つあれば全身くまなくトレーニングできます。
また、チームのトレーニングで使用する際もバリエーションの一つに組み込むことで、様々な能力を高めることが可能です。
バーベルやダンベルにメリットがあるように、ケトルベルにもメリットがたくさんあるので、興味を持たれた方は是非トレーニングに取り入れてみてください。バーベルやダンベルとはまた違った刺激が感じられ、トレーニングのバリエーションも広がると思います。