タイ&マレーシア旅 その7
マレーシア唯一の寝台急行で朝を迎える。
昨晩は、しばらく夜の車窓を楽しんだものの、程なく町明かりも途絶えるようになったため、早めの就寝。
途中、西海岸本線から東海岸線に分岐する、深夜のグマス駅で目覚めて、少しホームの様子を見る。確か情報では、ここに昔JRで使われていた車両が留置というか、放置されているという話を聞いたが、他の列車が止まっていることもあり、確認することは出来ず。まあ再び眠ることにした。
薄明りの車窓を眺める。
それにしても、昨日はなかなか良い乗り心地だなと思っていたが、東海岸線は線路状況が悪いのか、なかなかな揺れだ。
時折、止まるかというような原則と共に、制限20kmの標識が過ぎ去るのは線路へのダメージを減らすための徐行だろうか。JR西日本のローカル線での徐行を彷彿とさせる。
昨晩、寝る前はそれなりに空席があった寝台車両も、気づけばほぼ満席。途中停車駅から乗ってきたのだろう。
ジャングルの中を走っていく列車という感じで、なかなか迫力のある風景が続く。途中、岩山の風景が奇麗な渓谷だなと思ったら、マップによるとリゾート地となっているみたいだった。まあ、鉄道で来る人は少ないのだろうが。
ごく稀にすれ違う行き違い列車は、なかなか近代的な近郊型という雰囲気のディーゼルカー。そんななかで我が列車は、孤高の客車列車という感じ。寝台客車は古い車両らしく、なかなか味がある。
せっかくなので、食堂車にも行ってみることにする。
タイ国鉄とは違い、こちらは新しい車両で冷房もしっかり効いている。
寝台車両は、朝になっても座席モードには転換しない方針らしく、景色を見るには不向きなので、そんなに混んでいないし、食堂車に居座ることにしよう。
食事の選択肢は限られていた。ナシゴレンまたはミーゴレン。どちらもどうやらレンジで温めるだけの簡易なもの。
ノンビリと頂いて、ふと思いつき、隣の座席車両へ。
思った通り、ある程度空いている。
全席指定であり、ここからは昼行列車の役割も担うこの列車の場合、座席の持ち主がやってくる可能性は十分あるが、まあ、来たら移動すれば大丈夫だろうと、適当な席に座ってのんびりと車窓を眺める。前席の女の子が、髭が気になるようで、まん丸い目でコチラをじっと見てくるのが気恥ずかしい。
日本だと、結構子どもの反応は分かれていて、興味津々で見てくるか、目を逸らして怯えるかどちらか。
しかし、タイ・マレーシアではじっと見てくる率が高いような気がする。
国民性が子どもにも現れるのだろうか??
しかしこの車両、かなり冷房が効いている。寝台車両はカーテンで仕切ればまだ冷気は緩和されたが、最初は心地よかったものの、だんだん寒いほどに。
わざわざ長袖を取りに戻るのも面倒だし、しばらくは粘る。
周りの席が少しずつ埋まってきたこともあり、もう一度食堂車へ。さっき食べたばかりであまりお腹は空いていないので、暖かいドリンクとスナックで再び粘る。
もうなにもすることはない、午前中のノンビリした時間も良いもんだ。
そういえば、途中まで山の中なのにトンネルが全くと言っていいほどなかったのだが、急にトンネルを多用するようになった。どうもこのイーストコースト線、一度1931年に全通したものの、第二次世界大戦で日本軍の占領下でいちど線路を外され、泰麺鉄道に転用され、その後再敷設された際に一部の線路は付け替えになったらしい。もしかしたらその付け替えになった区間なのかもしれない。
少しずつ開けた景色になってきて、東海岸に近づいてきているのを感じる。
この列車の終点はトゥンパであり、切符もとりあえずそこまで買ったのだが、その30分程手前にある駅、バジルマスで降りることにする。
タイ国境・ランタオパンジャンへ向かうには、ここで降りた方が便利ということがわかったからである。
バジルマスからなら、路線バスが走っているので、安く国境に行けるということだ。時間などはわからないが、何とかなるだろう。
今日、どこまで行けるのか未知数なので、実は今夜の宿は予約していない。
列車を降りてお見送り。
乗降終了の合図か各車両から係員が掲出する緑旗を、運転士(助士か?)が確認して出発する独特の出発方法。
ゆっくりと終点に向けて走り去る列車を見送って、駅を後にした。
バス停の位置は、実はネット情報だけでイマイチわかっていない。
タクシーの客引きを自信満々風にサラリとかわしながらも、本当に
今日中にタイへ向かうことが出来るのか?ちょっとワクワクしている。
一応、ここであるだろうというところにポイントを付けておいたので、そこを目指してみる。
ん?通り過ぎた。
バス停と思しき設備など、まったく見られない。
そこにはオジーちゃんが座っているのみ。
まさか?と思ったら声を掛けられた。
「ボーダー??」
そうだ。ランタオパンジャン?と聞くと、ここで待ってろ!と教えてくれる。
よかった、ここで待っていればいいのだな。
このオジーちゃん、そういえばさっきの列車にも乗っていた。
実は僕は目撃してしまった。
そのオジーちゃん、トイレ待ちが長すぎて我慢しきれず、モゾモゾとしたあげくに連結部分の隙間(まあまあ空いている)から放尿してしまうところを。
タイやマレーシアの夜行列車はトイレがシャワーを兼ねていることが多く、従ってトイレ待ちが長くなりがち。なので特に朝の混雑時間帯は余裕を持って行動しよう。
そんなシーンを思い出してしまいながら、ノンビリと待つ。
よく見るとすぐ横に、始発のバス停を発車する時間だけは表示されており、ちょうど今、始発のバス停を出たぐらいなので、20分ほど待てばいいのだろうと予想がつく。
オジーちゃんは別方向らしく、一足先に出るバスに乗っていった。
僕の乗るバスも程なく到着。
さあ、いよいよマレーシアともお別れだ!