イラストレーターがアップリケのメーカーになるまでのこと 番外編
こんにちは。
イラストレーターのトヨクラです。
今回は番外編です。
仏具を扱うメーカー、ここかしこさんと協業させていただいた「ソフト神棚」という商品のお話。
ある日、「フェルトで神棚をつくりませんか」という1通のメールが、有井さんという方から届きました。
「神棚?」
我が家には神棚もなく、神棚をフェルトで作るとはどういうことだろう。あんな神聖で立体的なものを僕がフェルトでつくれるわけがない。
何か勘違いしてメールをしてるんではないかと思い、最初はやんわり断るような返事をしました。
しかし、すぐに返事がきました。
聞くと、いわゆる立体的なよくある神棚ではなく、タペストリーのようなフェルトの神棚を作りたい。しかもかわいい神棚を作りたいとのことでした。
平面ならいけるかもしれない。
そう思い連絡すると、今度大阪に行くので会って詳しくお話ししたいという連絡が。
そしてどういったものを依頼されるのかもわからず、地元のJRの駅にあるカフェで待ち合わすことに。
そしてやってこられたのが有井姉妹。
Y2インターナショナルという会社で「ここかしこ」という仏具ブランドを展開したり、メーカーとの協業商品を作ったり面白いことをいっぱいされている方たちでした。
会ってお話しすると、僕の作品はroomsの展示会で見てくれたとのこと。
そこで、フェルトの神棚を思いつき、すぐに連絡をくれたのでした。
お話ししていて、有井姉妹の熱意もすごく、その場で僕もどんどん想像が膨らみ、是非一緒にフェルトの神棚を作って見たいと思い、意気投合しました。
それからフェルトの神棚にむけてスタートが切られるのですが、まずはデザイン。
お札が入れることができて、部屋に飾ってかわいいもの。
これは最低条件でした。
神棚が家にない家庭も多く、お札をもらっても、棚の上に立てて置いていたり、なかなか飾る場所がないのも現実です。
そこでインテリアとしても馴染むフェルトの神棚ができれば、きっと見たこともない新しい商品になるに違いないと有井さんとは話していました。
「お札ポケット」という仮の名称を決め、デザインをいろいろ考えます。
最初はベースとなるお札立てがあって、阿吽になっている狛犬、きつねやお神酒などをオプションであとから買ってつける案で進んでいました。
色も僕らしくポップな色を提案したり、神棚の概念から一度離れた新しいものを提案しました。
パソコンの画面上だけでは実感がわかないので、実際に手でフェルトを切ってサンプルをいくつも作ります。
そしてサンプルを何度もやりとりしながら、徐々に形になって来ました。
途中、音がなるようにしましょうと真剣に考えたりもしましたが、結局はシンプルな形の方が使いやすいということで音はなしになりました。
ディテールも、細かくて繊細な方が神棚としてしっくりくると思い、屋根をくりぬいたりもしました。
結局、ここまではしませんでしたが、随所にこだわりの模様や形を入れた仕上がりになりました。
榊もこだわって1枚1枚葉っぱを貼り付けています。
しめ縄部分は本物らしくずらして重ねて貼りあわあせています。
結局、合計60パーツ以上ものフェルトをくり抜いたものを、手で組み立てることになりました。
タペストリー型として壁にかけれるようにハトメをつけていたのですが、さらに棚の上に置けるようにもなったらいいねという考えから、最終段階で裏側にMDFで組み立て式で自立するパーツを作ることに。
フェルトをくりぬいてもらう工場にMDFも抜けるのか相談したところ、なんとかいけますとの回答だったので、即採用。
壁掛け、自立型の両方いける神棚になりました。
そして最後に神社に神棚の確認に有井さんに行ってもらい神主さんのOKもでて販売することになりました。
もちろん、製造はRe:VERSE PRODUCTSで請け負っています。
(製造工程は複雑なので、ここではお見せできませんが、基本アップリケの製造と同じように丁寧に手で組み立てていきます)
商品名は試作の段階では「お札ポケット」でしたが、最終的には「ソフト神棚」という名称になりました。
神棚というと細かい決まりごとがあるのかと思いましたが、頭より高く、陽が入る場所に置いて、先祖を敬う気持ちをもって飾れば良いとのことです。
また、フェルトもポリエステルのものを使っており、「清浄」も保っております。
ポップで斬新な神棚だったためか、多くのメディアでも紹介いただきましたし、売れ行きも良くて、2年後には少し落ち着いたモデルの「ソフト神棚moderate」というのも発売させていただきました。
プロダクトを始めていなければ生まれなかったこのプロジェクト。
自分では想像もつかなかった斬新な商品が生まれたと思っています。
これこそ協業の面白いところだなと思います、けっして自分の中からは生まれなかった商品です。
これからも他の企業やチームと一緒にプロダクトのコラボレーションなど、いろんな相乗効果を生み出していけたらと思うこの頃です。