「老後2000万円」を税制改革で解決
金融審議会の報告書が端緒となった「老後2000万円」問題。その報告書が騒動を起こした原因はいくつかある。1つは、現役時代に貯蓄する余裕がない人がいるのに、「2000万円必要」と読めるような記述があったこと。もう1つは、NISAの恒久化という税制改正要望の下心が透けて見えたこと。
週刊エコノミスト7月16日号に掲載された拙稿「『老後2000万円』を税制改革で解決」では、これらを解決するにはどのように議論を進めればよいかを示している。
要約すれば、現役時代に貯蓄する余裕がない人に、私的年金制度や非課税貯蓄制度を充実するといっても救えない。そうした人たちのためには、公的年金の給付が減らないような公的年金改革が追加的に必要である(もちろん、それは税財源を追加的に投じることで、公的年金財政の持続可能性に支障をきたさない)。
NISAがそもそも時限措置があることを知る人は多くないが、実際には時限措置があって、恒久化は金融庁の悲願だ。その恒久化が適切か否かは、iDeCoなどの私的年金制度をも含めて、毎年の非課税拠出枠を統一化し、税制(マイナンバー)で名寄せすることで、林立する制度に一貫性を持たせることができる。
iDeCoもNISAも、非課税拠出枠(運用に所得税がかからない)が1つの肝である。だから、税制改革でこの問題を解決することができる。