「姓」と「氏」

今日では混同されていますが、両者は意味が異なります。

漢字の本義に基づく定義

「姓（セイ）」は血縁集団、「氏（シ）」はそこから派生した家を表します。現代の日本人の名に冠されているものは「氏」に相当します。

一方、中国や台湾では「姓」が用いられています。婚姻関係が結ばれた後も夫婦の姓が変わらないのは、姓が血族を表すものだからです。

氏姓制度における定義

古代日本の氏姓制度における「氏」「姓」は、上とはまた定義が異なります。

「氏うじ」は血縁集団を表すもので、前項の姓セイに当たります。

「姓かばね」は官職、朝廷との関係を示します。

例えば、徳川家康の正式な名前「源みなもとの朝臣あそん家康いえやす」は、「源」が氏うじ、「朝臣」が姓かばねです。

また、これらとは別に、名字（苗字）を独自に付けるケースが平安時代からありました。例えば、徳川家康の「徳川」などです。家族集団を区別するために付けられたもので、前項の氏シに相当するものといえます。

江戸時代まで、氏うじないし名字を公に持っているのは貴族や武士などの特権階級のみでしたが、明治に入ってからは戸籍制度の整備に伴い、平民もそれまで通称として持っていた名字を正式に称することとなりました。同時に、氏うじを持っていた人たちも名字を使うようになり、血族を表す氏うじ（すなわち姓セイ）を使う習慣は廃れていきました。そのため、日本人の名字は「家」を表す氏シとしての性格が強いのです。