本当にあった怖い気がする話
これは先日、職場で倉庫整理をしていたときの話です。
私の作業は納品されたまま手つかずの栄養ドリンクを、保管場所にまとめること。1ケースは10本入りの箱が5つ、横並びで梱包されていて重さは約11kg。それが56ケースあるので、112回上げ下ろしする必要があります。
私はここ最近調子の悪い腰をさすりながら、作業を始めました。
半分も片付かないうちに腰骨はミシミシと悲鳴を上げます。ウィークポイントをかばいながらの仕事はすぐに限界を迎えます。
作業時間は限られている、早く終わらせなければと焦ってケースを持ち上げた瞬間、
ビキィィィィィィッ!!
鋭い雷撃が腰に走りました。
過去に何度か経験した不吉な痛みは、ぎっくり腰の始まり。以降はどのような体勢でも痛みが和らぐことなく、数日間耐えなければなりません。この世が、生きることが地獄に変転する瞬間。
終わった……。
私はすべてを諦め、部屋に何枚シップが残っていたか思い出そうとしました。今晩貼る分は残っているはず、一日二日でなくなるのであれば買い足さないと。
考えを巡らせていて、ふと気がつきました。
いつまで経ってもあの地獄の苦しみがやってこないのです。
それどころか、先ほどまでワンアクションごとに揉んだり叩いたりしていた腰痛も感じない。腰痛にぎっくり腰が重なれば、生を投げ出したくなるような痛みだと覚悟していたのに……。
もしやこれは、相殺されたのか?
マイナスにマイナスをかければプラスになるように、痛みと痛みがぶつかり合って対消滅したのではないか。
「カレーのカロリーととんかつのカロリーがぶつかり合うからカツカレーのカロリーはゼロになる」というサンドウィッチマン伊達さんの理論もあるくらいです。痛みと痛みの衝突によって無くなる可能性もゼロじゃない。
説明できない幸運――それは奇跡。業務中に起こった奇跡としか思えない。
不思議な感覚こそ残っていましたが、痛みの消えた腰で時間内に作業を終えることができました。
翌日。目が覚めて体を起こすと、腰に鈍い痛み。
昨日のことがまるで夢だったかのように腰痛が戻っていたのです。以降、再び謎の痛みに襲われたことはありません。
一体あれはなんだったのか……今でも不思議としか思えない出来事でした。
たまにはしょーもない話を書きたいなと思いまして……夏も近いし。こんな話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。