読書感想文: 現代俳句の世界16 富澤赤黄男 高屋窓秋 渡邊白泉 集
現代俳句の世界16 富澤赤黄男 高屋窓秋 渡邊白泉 集(著: 富澤赤黄男、高屋窓秋、渡邊白泉、朝日文庫、1985)
坂本龍一さんが選書した本、『坂本図書』に富澤赤黄男という俳人の句集が紹介されていた。それからこの富澤赤黄男が気になっていた。
今回その俳句を読んでみて特に印象に残ったいくつかの句を紹介してみる。
俳句はどれも全体的に繊細かつぶっきらぼうな印象である。その無骨さ、可笑しさ、悲しさ、シュールな感覚がダイレクトに伝わってくるから面白い。
また、句集の題名も面白い。例えば、『魚の骨』『天の狼』『蛇の笛』など。
しかし、富澤の日記も読むと、彼がなんとなくとかではなく汗水垂らして捻り出し書きつけたということがわかってくるから感動的でもある。
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映画作家大林宣彦さんが著書の中で、渡邊白泉という俳人の句を紹介していた。
次もまた印象に残った俳句を紹介してみる。
白泉の俳句は勿論ここに挙げた戦争の句だけではないが、これらが非常に怖くかつ皮肉で印象的だった。特に、
はまるで戦争が亡霊のようにそして今でも廊下に立ち続けているそんな恐ろしさが感じられる。
この本の神田秀夫氏による解説によると、当時軍はその所属の建物でない会社その他で会議をやる際に、機密の漏洩を防ぐため、会議室の周辺に歩哨(兵士)を立てて廊下を通行止めにしたというケースがよくあり、白泉もそれを見て書いたのだろうという。
しかし、なにか感覚的に巨大なそして不穏な恐ろしさがこの句にはある気がしてならない。