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京橋立飲みアテカレー。

京橋の夕方、夏の空はまだ薄明るく、空気には湿り気が残っている。 わたしはいつもの立ち飲み屋に足を運んで、のれんをくぐった。鼻をかすめる。カウンターに肘について、ハイボールを頼む。少し前から店の定番になっている「あてカレー」が目の前に置いてある。スパイスカレーではないが、シンプルで旨い。カレーを一口味わうと、ふと思い出。この店には何人の彼女と通ったことがあった。それぞれのタイプが違って、いつもふらりと現れては、ふらりと消えていた。温もりを感じていた

「また昔の女の話か?」と、店主が声をかけている。彼は骨がないが、憎めない表情をしている。泡が心地よく口の中で弾ける。「別にええねんけどな」と言って、彼は軽く笑っていた。

私も笑って、「だって、ここのカレーが旨いからね」と返しました。シンプルでしっかりとした味のカレー。こうして店で過ごす時間、小さな贅沢だ。彼女たちとの関係は短かったが、店で共有したちょっとした瞬間が、今は大切だと思える。

外からは蝉の鳴き声が聞こえ、風鈴が揺れている。この街の夏の終わりが、僕の心に染み込んでくる。次にまた誰かをここに連れてくるかどうかはわからない。でも、今は一人でここに来ることが心地よい。

「また、誰か連れて来るんじゃないの?」と、店主が笑いながら言う。「いや、今は一人が楽しいんだよ」と僕は首を振る。彼女たちとの時間は楽しかったけど、今は一人でカレーを食べ、ハイボールを飲み、ただこの空間を味わう。

店主は軽く肩をすくめて、「歳を取ったってことかもな」と冗談めかして言う。が、今は今この瞬間が大切に思う。

外にいると、まだ少し残っている夕焼けが街を照らしている。 蝉の声が聞こえる中、僕はいつも道を歩き出す。これから先のことは、その時になったら分かるだろう。多分。

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