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映画感想「白鯨との闘い」─本当の”怪物”はどっちなのか?
映画「白鯨との闘い」は、ハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」をモチーフにした作品です。
「鯨油」をとるために出港した捕鯨船が、白くて巨大なクジラに襲われる。
よくある「人間 vs 怪物」というストーリーです。
◆白鯨は海の守り神
僕は、この白鯨を見たとき「海を守っている神様」のように感じました。
人間たちによる乱獲から、クジラたちを守っている神様。
身勝手な人間から、貴重な海を守っている神様。
白鯨は、テリトリーへ侵入してきた人間たちに対し、しつこく襲いかかります。
船を再起不能にするだけでは飽き足らず、救命ボートで漂流している間も、ずっと、ずっと。
気がつけば、かならず白鯨が「どこか」に潜んでいます。
その姿は、まるで「海のスナイパー」のようです。
「絶対に、生きて帰らせない」
そんな執念すら、感じます。
対照的なのが、トム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」に登場するクジラです。
大海を彷徨う主人公を、まるで安全な場所に導くように、ずっと近くを泳いでいました。
まるで、自分の子どもを優しく見守る、お母さんのようです。
クジラの種類は違えど、一方では人間に対して牙をむき、もう一方では人間を優しく見守るという二面性を見て、「同じクジラでも、こんなに違うんだ」という驚きを感じました。
だけど、白鯨が最後に見せた「優しい目」は、キャスト・アウェイのクジラとまったく同じだったのが、とても印象的です。
◆人間と白鯨、どっちが”怪物”なのか?
船乗りたちは、尾びれを振り下ろすだけで船を大破させてしまう白鯨のことを、「悪魔」とか「怪物」と呼びました。
だけど、本当の「怪物」なのはどっちか?
僕は、人間こそ「怪物」なのだと思います。
当時、「鯨油」は灯火用の燃料として、世界中で親しまれてていました。
石油がまだ燃料として普及する前で、灯火用の燃料は鯨油や植物油に頼っていた時代です。
やがて、世界中で需要が増した鯨油は、価格が高騰。
捕鯨船を所有する会社は、「クジラを穫れば捕るだけ儲かる」といった状態でした。
そうして、乱獲を続けた結果、クジラの数が激減してしまいました。
今みたいに、生態系を維持しようとか、海を大切にしようとか、そういった思想は一切なかったんですね。
自分たちの利益が最優先。
よく考えてみれば、身勝手です。
そんな人間の身勝手さを象徴しているのが、ジョージ・ポラード船長の次のセリフです。
(人間は)神に似せて創られた最高の生命
この世の王だ
神からこの星を預かり 命じられた
望みどおりにせよと
「この世の王」だなんて、見当違いもはなはだしい。
このセリフを聞いたとき、僕は「人間こそ、本当の怪物なのかもしれない」と思いました。
◆人間たちへの警鐘
この作品は、人間たちへの警鐘が込められていると感じます。
クジラの乱獲、動物の乱獲、森林伐採、二酸化炭素の大量放出。
これまで、私たち人間は、まるで自分たちを「世界の王」であるかのように、好き勝手に振る舞ってきました。
その代償として、いま世界は「地球温暖化」という大きな問題に直面しています。
身勝手な行動を続けていると、いつか目の前に「白鯨」が現れ、痛い目に合う。
そんな教訓を、この作品は教えてくれたような気がします。