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BBQを憎んでいましたが、雪解けが近いようです。

僕には端的に嫌いな「食」がある。いや、あった、なのか。とにかく、その対象について、考えを改めるようになった。

その対象とはBBQだ。

少し前の僕はBBQが許せなかった。まず、これでバーベキューと読め、という傲慢さ。気に食わない。BBQと言えば「おどるポンポコリン」のB.B.クイーンズだっているんだぞ。ちなみに「ベイベー!」って言ってるシルクハットのおじさんは近藤房之助さんという方でメチャクチャかっこいいブルースシンガーなんだ。憂歌団木村さんとセッションしてるとりあえずこれでも聞いてよ。


それた。話を戻そう。

コロナ禍でのアウトドア市場の伸長ときたら目を見張るものがあり、当然、この憎きアルファベット3文字を見る機会も増えていた。

自然と触れ合う、非日常を味わう、そういった刺激が現代人に必要なのはわかる。そこを否定するつもりはない。お天道様が高いうちにペロッと公園でいただくビールなんて僕も大好きだ。

だが、BBQは違う。BBQについては、心の底からこう思う。

なぜ、炎天下で大汗をかきながら、
後片付けが大変なのにわざわざ火をおこし、
砂埃にまみれたり、虫に刺されたりしながら、
割り箸と、紙皿と、プラカップのビールで、トイレを気にしつつ、生焼けだったり、焦げたりしている焼き肉を食べなきゃいけないのでしょうか?

エアコンが効いた部屋で、安定した火力による、ごく一般的な「焼き肉」を安心していただく方が美味しいと思いませんか?

出典:タケナカリー心の声

共感してくれる同志は多いのではなかろうか。

多摩川の河川敷のBBQとか地獄にしか見えない。密集するBBQ。苦行だ。対岸から見たらサドゥー(インドの修行僧)が集まるガンジス川のよう。

加えて、BBQでは「はじめまして」のケースが少なくない。友達を紹介し合うような社交の場と化すことが往々にしてある。僕はシャイで、繊細で、フラジャイルな人間なのだ。ただでさえ気疲れする体質だというのに、こんな過酷な場所で?冗談じゃない。よく知らない人と大汗かきながら、不味い焼き肉を頬張りつつ「どんなお仕事されてるんですか?僕ですか?カレー屋じゃないんですがカレーです」なんて会話はしたくないのだ。本当に毎日「BBQヤロウゼ!」とか言ってるテキサス州のアメリカ人ってすごいと思う。すごい根明。

と、わりと本気で最近まではこのような理解だったのだが、最近、自分の認識に誤りがあるかも知れないと考えるようになった。
どうやら僕はBBQを誤解してたっぽいのだ。

日本のBBQってBBQじゃないんじゃない?

僕は過去にキャンプ飯のカレーレシピの仕事をしたことがある。BBQ嫌いだけど、キャンプでカレーはまあ定番だし、BBQとは違うから引き受けた。


リサーチすると火力が安定しないことによって、美味しいカレーが作れなかったという体験談をいくつか見つけた。ほら、やっぱりBBQみたいなことになってるじゃない。だったらということで、デュクセルソースカレーとか、缶詰を混ぜるだけとか弱火でも放っておいて作れるようなレシピを軸に提案した。

これはこれで友達も試してくれて好評を得たのだが、ここで何かキャンプ飯としての本質を見落としている気がした。しばらくしてもその違和感について答えらしい答えは出なかったのだが、最近映画のBBQシーンを見ていてピンと来てしまったのだ。その映画では、無茶苦茶でっかい肉の塊をドラム缶みたいなので焼いてた。

イメージはこんな感じ。

これって、もしかして、

家でできない料理をしてるのでは?

そうなのだ。よく考えたら燻製作ったり、ダッチオーブンで蓋に炭置いたりって知識として知っていたけど、全部、基本的には家でできるわけない調理法なのだ。しかも僕が嫌っているBBQではこれらが出てきたことはない。もしかしてこれが本来のBBQなの?

それなら、ちょっと、理解できるんですけど。

だって、屋外でしかできない調理法で、しかもそれが美味いんでしょ?それなら外で食べる意味がある。僕のキャンプカレーのレシピは無難さを表現したティップスであって、豪快に屋外だからできる技では無かった。違和感の正体はこれだ。本質は「屋外だから可能な調理」だったのだ。

そして、同時に気づいた。僕が嫌いなのは、BBQではなく、外で食べる焼肉が嫌いなのだということを。だって、外でやる必要ないんだもん。日本のBBQは、BBQではなく、屋外焼肉だったのだ。

真のBBQ人に出会ったら印象が変わりそう

「日本のBBQ = 屋外焼き肉」という方程式が出来上がった。そう思うと本気の欧米式BBQの愛好者達は今まで泣いてきたのではないだろうか?それこそ何でもカレーと言われてしまうインド料理界隈の賢人達のように。

これは良くない。そういうレイヤーで見ると急に共感値が高くなる。例えば都心で見かけるようになった「手ぶらでBBQ」だ。行けば全部揃っているし、ゴミも捨ててくれる。確かに入門にはいいのかもしれない。しかし、そこから真のBBQ人に促すような施策はあるのか?豚の半身を買ってきてプルドポークやる?くらいまでの気概をもつBBQ人の育成に継っているのだろうか?「手ぶらでBBQ」を推すサイトをパトロールしたが、その多くは「これ、家で食えるじゃん」メニューだった。

やはり求めるべきは食のディグり方だと思う。調べたらBBQの達人をPitmaster(ピットマスター)って言うんですね。

※アグリーデリシャスのBBQ回サイコーなので見て。

「手軽に」は目的にしてはダメなのだ。ディグるやつを増やす、その一心が結局自分にも、その業界にも返ってくる。

ということで、考えを改めました。「外で食べる焼き肉」は遠慮しますが、BBQには一定の理解を示します。

私をBBQに連れてって。

※おそらくこれが屋外カレーレシピ最高峰。


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タケナカリー/竹中直己
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