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吾輩の運命は吾輩のものだーーー!!

最近、環境の変化も相まって弱気になっていると思う。
先日の「生き急いでいるかも」と考えるのだとか、最近は運命についても考えることがある。

話は飛ぶが、このところ読書スピードが落ちている。
7月頃からアジア太平洋戦争関係の本を集中的に読んだ。
参考までに今日の最後に読んだ本リストをあげておくので興味がある人はご覧ください。
再読した本もあるけど、アジア太平洋戦争をより深く考えるために良い本ばかりです。

さて、なぜそんな話を持ってきたかというと運命について考えさせられるひとつのきっかけになったから。
特に太平洋戦争といえば、半ば「無能な政府指導者と、暴走した軍部によって無謀な戦争に突入した」というストーリーによって語られることが多い。
ところが、史実を読み解いていくと、政府指導者も軍部も驚くほど客観的なデータを収集し、大筋としては決して間違いではない状況分析ができていたという事実がわかってくる。
政府首脳も軍部首脳もアメリカと戦争をするのは無謀な賭けであることは重々承知しており、可能な限り戦争回避にむけた努力はとり続けていた。

もちろん、結果的に先の大戦を惹き起こした現実があり、彼らが免責されるわけではない。
先にあげた「無能な政府指導者と、暴走した軍部によって無謀な戦争に突入した」という筋書きは結果的には間違いとはいえない。
実際に太平洋戦争を回避するチャンスは何度かあった。
しかし、大日本帝国が採った選択はそのチャンスを逃してしまうものとなってしまう。

政府や軍部の指針に影響を及ぼしたのが、報道や知識人によって導かれた世論であったことも忘れてはならない。
大日本帝国のシステムの不備と相まって、日本の政府は機能不全を起こして「無能な政府」となり、そのかわりに尻を叩かれた軍部が「暴走」していったという側面もある。
国際情勢という外的要因もまた、日本の思惑を翻弄する。
正しい情報と正確な判断力があっても戦争は回避できるとは限らないという厳しい現実が突きつけられる。

これは現代の自分たちにも起こり得ることなのである。
これは政府指導者や軍部など、特定の人物や集団組織を悪玉にするだけでは見えてこない。

そんなときに自分の頭に浮かんだのが「運命」だった。
いやしくも歴史学を専門に掲げる人間が、歴史に「運命」を見出だすのは論外であると思う。
それでも「運命」を感じずにはいられなかった。
嗚呼、やはり普段より弱気になっているな、と感じるのだ。

このように「運命」を感じるときに、頭に浮かぶのが私の愛読書たるマキァヴェッリの『君主論』だ。
『君主論』では人智の及ばない運命の存在を認める。
マキァヴェッリはこれを〈フォルトゥナ:運命〉と呼ぶ。
それと同時に人間の力によって変えることができる余地も存在しているとする。
マキァヴェッリはそれを〈ヴィルトゥ:力量〉と呼ぶ。

例えば、台風などの自然災害そのものの発生は人のちからではどうしようもない。
これが〈フォルトゥナ:運命〉である。
しかし、台風に備えて堤防を作ったり、家を補強したり、避難場所を設けることで被害を抑えることはできる。
これが〈ヴィルトゥ:力量〉である。

太平洋戦争に向かう大日本帝国には〈ヴィルトゥ:力量〉が足りなかった。
このままではアメリカとの無謀な戦争という氷山に突入してしまうことがわりながら、それを回避しようと帆を張って、舵をきろうとし続けた。
しかし、世論の大波が舵の自由を奪い、国際情勢の大風が帆を流し、大日本帝国という大船の推進システムの欠陥が氷山へ進む船のブレーキを阻害した。
この大波・大風そして、先天的な帝国システムの欠陥が〈フォルトゥナ:運命〉であったのか。
ここまで言っておきながら、断定はできないのだが…
(繰り返すが、当時の政府指導者や軍部に戦争責任がないということではない。)

さて、「運命」という言葉で、もうひとつ私たちに大きなメッセージを残している偉人がいる。

ヴィクトール・フランクル。

ユダヤ人としてナチスドイツに強制収容所に入れられ、日本では不朽のロングセラー『夜と霧』の著者として有名な心理学者である。

「どのような運命に見舞われようと、その運命に対して何らかの態度をとる自由は失われない」〈『意味への意志』〉

さてさて。
取り留めもない感じになってきましたが、皆さんは「運命」についてどう感じるでしょうか。

(今回のタイトルは『戦国無双4』の松永久秀のセリフより)

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〈7月頃から読んだアジア太平洋戦争関連本リスト〉

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』朝日出版社

加藤陽子『戦争まで』朝日出版社

川口暁弘『ふたつの憲法と日本人』吉川弘文館

高杉洋平『昭和陸軍と政治』吉川弘文館

古川隆久『東条英機』山川出版社

戸部良一ほか『失敗の本質』中公文庫

茶谷誠一『象徴天皇天皇制の成立』NHKブックス

佐藤元英『外務官僚たちの太平洋戦争』NHKブックス

方丈社編集部『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』方丈社

森山優『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』新潮選書

片山杜秀『未完のファシズム』新潮選書

牧野邦昭『経済学者たちの日米開戦』新潮選書

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