『東アジアの論理 日中韓の歴史から読み解く』
日本史・東洋史・西洋史を問わず、いまや最も凄まじいスピードで本を出し続けている歴史学者となった岡本隆司の新刊。
『週刊東洋経済』の連載の中から選び出して一冊にまとめたもの。
そのため純然たる歴史の本というよりも、歴史学者による時事評論という赴きが強い。
故にいつもより「岡本節」はマイルドになっているが、その分読みやすくなっているとも言える。
根っこの部分には「歴史を知らずして現代のことを理解することなどできない」という岡本さんの基本姿勢がしっかりと流れている。
読む人によっては繰り返し歴史の事実から論を立てる書き方が気になるかもしれないが、この本はそれでよいのだ。
『東洋の論理』というタイトルも「脱西洋中心史観」を旗印に掲げるグローバルヒストリーに対して「そんなことよりまずは東洋史ちゃんとやれよ!」という東洋史家・岡本隆司ならではの説得力を持つ。
本書の内容からは脱線するが、やはり一度、岡本さんには羽田正さんと対談して欲しい。
岡本さんが抱いているグローバルヒストリーに対する疑問を、グローバルヒストリーの旗手たる羽田さんに直接ぶつけて欲しい。
しかし、2人には現在の歴史学のあり方に強烈な危機感を抱いているという共通点がある。
学術的に「殴り合った」先に新しい知見が見えるような気がしてならないのだ。
そんな岡本さんの本をいつか読みたい…というのは私の願望。
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『東アジアの論理 日中韓のの歴史から読み解く』
著者:岡本隆司
出版:中央公論新社(中公新書)
初版:2020年
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