【歴史本の山を崩せ#032】『思考と行動の中国史』竹内康浩
《中国を理解するために…価値観からのアプローチ》
他者を理解するためには、相手がどのような思考をもっているのか知る必要があります。
異文化理解、対話の大切さを強調するのはよいのですが、相手も自分たちを同じ価値観を持っているという前提のもとで語っているのであれば、それは不可能であるばかりか傲慢な態度であるといえるかもしれません。
歴史的に中国人はどのような価値観を持ってきたのか?
史料を駆使して人間観、社会観、世界観を知り、その行動原理を理解しようというのがこの本の狙いです。
…と書くと非常に難しそうですが、素朴なテーマからアプローチしていることや、史料の訳がとてもカジュアルなため、歴史エッセイの感覚で読むことができます。
皇帝とはいったいどのような存在なのかといういかにも歴史っぽいテーマや、食べること、暴力といった世俗的なテーマなど。
皇帝の呼び方の意味や、諡号と廟号の違いについて書かれている一般向けの中国史の本は実はあまりありません。
この部分だけでも知っておくと中国史の深さがわかると思います。
扱う史料も、定番でいろいろな意味で「カタい」ものばかりでなく、「史料」として普段は取り扱われない(取り扱うことができない)『紅楼夢』などの小説も、本書のテーマ・目的に資することができる素材として取り上げています。
難しそうなタイトルに躊躇わず、是非とも軽い気持ちで読んでみて欲しい異色の中国史本です。
『思考と行動の中国史』
著者:竹内康浩
出版:山川出版社
初版:2022年
定価:1,800円+税