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皆の王国 テルグ映画の撮影地を訪れた

私のスマコ(かわいく言ったつもりかよ)が画像をアップするのにものすごい時間を取るのと、RRR公開後に見たほうがいい写真もあるため、今回は主にテキストで。

6月初旬、RRRの撮影地に行く!とブチ上げたはいいが、皆目検討つかずの状態で、ハイデラバード行きが四日前に迫った。ヒイィィィ…というよりは、もうできることは全てやってみて、できてないことは何かと探す段階だったので、日本のマヒシュマティの内通者(秘密を抱いて崖から飛び降りたのに王子兄弟に捕まったアイツみたいね…)から色々とヒントいただきながら、YouTubeの動画へと辿り着き、そこから特撮プロダクションのマクタ社の方と繋がって、撮影地となった場所を3箇所おしえていだけた。これは文春エンタ+で書いた。

最初に行ったのが、テルグ映画の撮影がしばしば行われてきたという場所だった。

バーフバリ何とかとグーグルマップにすら名前が出ておりますが、非公式のあだ名でしょうな。入り口には門番がおり、ゆる~い感じの割に容易ならざる感じがしたが、ダメ元で、これこれこういう雑誌の取材で、マクタ社の誰々さんと誰々さんからおしえていただいたんです、って頼み込んだら、うむわかった、少し歩き回って写真撮るくらいならよし、と謎の太っ腹さを見せて下すった。脇のホワイトボードには、何やら新しく撮る映画のスケジュールらしきものが見えた。うわーホンモノなんだ…こんな何気ない煤けた工場跡地が…

数々の…っつってもテルグ映画なんて数えるほどしか観てないのだが、何だか勝手に感慨に耽ってしまった。

రంగస్థలంのセットの残骸かと感慨に。多分勘違いw

さて、奥まで進み、GPSで教えてもらった場所についたはいいが、そこにはただの倉庫があるだけ。それらしいものは何も見えない。裏では水牛?が無愛想な顔で草を食んでいた。

水牛は無愛想か、人間にムカついてるかだわ!

ごきげん麗しゅう。ワタクシに御用でもございまして?

しばらくうろついてから少し進むと、何やらセットの残骸かと思われるものが置かれている。こ、これは…RRRで見たアレでは…ゴゴゴ…

とそのとき。その辺に停まっていたトラックのドアのところで話していたガードマンに、ちょいとお前ぇさん、と呼び止められた。何かマズい空気を察し、入り口で説明したことを繰り返した。まぁ…何の連絡もなく突如来たアジア人男(憧れは超能力少女♥)を観たら警戒するわな。いくらすべての事が唐突なこの国でも…。

英語が通じてよかった。ついてきたまえ!と言われて、雑然とした物置というかセットの残骸が放置されたエリアの奥に、きれいに整えられた庭付きの家があって、そこに通された。

なんかこの空気感…苦手だな…誰も笑ってないし…怖いよ…帰りたいよぉ…

建物の中ではどでかい犬が吠えており、私がもし酔っ払っていて変なことをすればこいつらが私の命を終わりにしてくれるのだと分かる。ここまで来れたのが不思議なくらいだが、酔ってはいないし任務があるからまだ死ぬわけにはいかないぞ。

そこで、その建物の主と思われるこれまた屈強そうなおじさん(でも下手したら私より年下)から話を聞かれた。コレコレこういう雑誌の取材で来た者で、怪しいもんじゃござんせん…と説明したら分かってくださり、じゃあ水でもどうぞと言われて、でも正直なところ、逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。なんつっても常に怒られるー叱られるーと思いながら生きてる…その割には用心深さがなく土産物店のもの壊して怖くなって逃走しようとして捕まるという自業自得事件を18のときに大学のサークル活動の合宿で引き起こしており時々夜中に思い出しては顔があつくなる私としては、目の前の責任者と思われる威厳のある男性の話がはやくおわってくれと祈っていた。

そもそもアポイントもとってないし、全てが軽いショック状態の中で行われるから今ここで何を質問できるわけでもなく。どうやらその場所は、撮影が行われた場所ではなく、撮影に使うセットを作り、保管する場所だと分かった。よく見たら、その場所の手下と見られる若者(常に気をつけをしているかのような緊張感をまとっていた)のシャツを見たら、何と、RRRという文字がかっこよさげにあしらってあるじゃないかッ!!すかさず市販されているか聞いたがスタッフ用のもので非売品とのこと。日本で販売したらアンタ、これ一枚三千ルピーで売れるよ…一緒に一ヤマ当ててみないかねェと今ならアドバイスできるんだがなぁ…しないわよ!!!

写真撮っていいよと言われて嬉しくなったが、今からお昼食べるけど一緒にどうかと言われてぐはァもう一刻も早く写真撮って逃げたいよぉあああん

そこでちゃっかり飯まで頂戴するほどの度胸もなく困っていたら、部屋の中で犬の鳴き声がして、何か問題が起きた模様。私のいたところからは見えなくて不安にもなったが、私の予想では、2頭いた犬の片方がもう片方を噛んだか何かしたんだろう、その場所の責任者が、既に緊張感ある表情だったのに更に緊迫感を出してきて、何かを電話で指示しつつ、ちょっと急用で出なきゃいけなくなったが写真撮っていいから、と言い残して車で去っていった。

結局ガードマンおじさんに連れられて、RRRの撮影に使われた大道具を写真に収めることができた。最後にテルグ語で名乗ってありがとうを伝えてその場をあとにした。

ただの田舎道のようだけど…

その場で感じたのは有無を言わせぬ緊張感だった。トップダウンの空気がある。映画製作において、監督がいかに偉いのか…その下の下の下にいるこの方達の名前が映画のエンドロールに出ることがあるのか分からないが、秘密を守り、場所を守り、セットを守ることに緊張感をもって臨んでいることは分かった。あんな大きな犬たちを飼うということは、単なる趣味ではなくて、何がしかの部外者への警告の意味があると私は受け取った。少なくとも私には効いた!!全てが唐突で思い通りにはいかない印象のあるこの国にして、初めて、そういう唐突なことやアクシデントが起こってはならないような空気を感じた。そこで、監督はどんな方ですかとか聞いても良かったんだろうけど、私の中の不安と慎みがそれを阻止した。

映画とはとてつもなく大きなものだ。娯楽として我々は消費し、私なぞが感想文を書いたりするんだが、製作という観点から観たときの映画は、非常に厳しく大変な、面白いかどうかとか関係なく最後までやり遂げなければならないしんどい仕事だ。

この国の人の仕事のやり方を見ていると、私には、自分に得がないならできればやりたくないという態度が明らかだ。場当たり的に取り組み、うまく行かなければ仕方ないじゃんと言って次に取り組むが、その、次に取り掛かってからが異様に速い。最初からそのスピードは出ないのである。それは、日本人から見るとあまりにもかけ離れている態度だ。でも、彼らが仕事を軽んじているわけではない。そして、映画の製作においてはまた別の力学が働いているのではなかろうか…。

映画の現場に近いところに触れたことで、絶対的トップダウンの関係があってこその映画製作があるのかもなあという想像力は得られた。それは日本や他の国では暴力や搾取という名前で非難を浴び始めていることでもある。見た目華やかで、ボリウッドほどのネポティズム批判も深刻化しておらず、スター達が模範的に振る舞うテルグ映画界の一つの支柱が、あの現場の緊張感…仕事しているときに多くのインド人の様子に見出すアレとは異質な空気感なのだ、ということは覚えておこうと思う。

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