今更オムジョンファ?
(2023年6月19日、本投稿にコンスタントにアクセスがあるので、無効になっていたリンクを修正しました)
世界の国々には、当地のゲイにこよなく愛される女性歌手というのがいる。
日本ならば越路吹雪、松田聖子、最近なら安室奈美恵やら浜崎あゆみ…
最近ならってもうそれ最近じゃねえから!!
さて、今やポップ音楽の発信地となった韓国では、私の世代や少し上の世代にとってのディーバと言えばオムジョンファかペクチヨン、イジョンヒョン、ソチャンフィなどなど。でも韓国に住んでいた頃一番名前を聞いたのがオムジョンファだった。
Wikiの略歴はこちら。
オム・ジョンファ(1971年8月17日 - )は、大韓民国忠清北道堤川郡(現・堤川市)出身の歌手、女優である。身長164cm、体重48kg、血液型A。未婚。俳優のオム・テウンは実弟。愛称は韓国のマドンナ、韓国歌謡界の女王など。
1993年に映画出演でデビューしたと聞いていたけど、たまたま『風の吹く日はアックジョンへ行かなくちゃ』(바람부는 날이면 압구정동에 가야한다)がようつべに載っていたので見た(すまん)。韓国語のWikiを読むと、本作はデビュー作ではないらしいけど、彼女を推しまくっている。何と言っても本作の中で歌った歌『瞳』(눈동자)がデビュー曲になっている。MVはこちら。
その後の彼女に比べると大人しいが、当時としては相当とんがっていた模様。歌詞の内容からして攻め攻めで、さすがと思った。
かなり前に感じた私を観る瞳
どこへ行っても避けられない
私に言いたいことはもう分かってるけど
あなたはただ私を眺めるだけで何も言わないのね
愛は知らぬ間に寄ってくることもあるけれど
一瞬で分かってしまうものよ
さあ私にお言いなさいな
あなた、私を見た瞬間、もう私を愛していたと
あなた、私を愛しているから長いこと見つめていたと
その後のオムジョンファを知っているので、大して悪い女に見えなかったが、一応当時としては、セクシーで謎めいたファムファタール役だとされていた模様(Wiki情報)。なるほどだから冒頭と結末で謎のオシャレほっかむりしてたんだなッ!
考えてみれば当時はスケベスリラー(®️ISOさん)が流行っていたからな…。
だがその色気は私には通用しないのだ。ゲイだから!韓国のゲイはオムジョンファを見た瞬間、すぐ見破ったはず。明らかに与えられた役割を演じているのが分かるから!
オムジョンファは常に自分が主人公だ。この最初の主演作ですらそれが伝わってくる。それが、当時としては男を弄ぶ悪い女として見せたのかも。でも、ゲイの目で、しかも2020年の目で見直すと、オムジョンファ演じるヘジンの主体的な生き様が楽しいのだ!IMF通過危機目前、過消費に沸くソウルで一番オシャレなカンナムの通りをオシャレファッションで颯爽と歩くオムジョンファ。ふしだらな娘なのかもしれないし、作中後半は何となく彼女が罰を受ける展開のように見える。うーん、まああれはおじさんの寝言!例えそう描いた映画であっても、あのオムジョンファの健康的な色気を見出した監督は偉い。
その後のオムジョンファは、経済危機真っ只中でもヒット曲を次々に出す。そして、やっぱり歌詞がね、あくまでも彼女が主体なのね。
招待(초대)って歌は、直球でスケベ歌なのだが、どう聴いてもオムジョンファ姐が主体の性行為だ。韓国のテレビであふんあふん悶えながら歌ったはじめての人だと思われる。
2:40ごろにあふんあふん言います!(2023年6月19日にリンク差し替えの結果、残念ながらあふんあふん言うオムジョンファは観られなくなりました。残念)
韓国の女性ポップスの歌詞では、自分を騙した男に説教するのみならず、多分これ男ぶん殴ってるな、と思わせるキムヒョンジョン姐のように、結構男に対して怒る歌があるが、オムジョンファ姐の場合は男に騙されるとしても、それは彼女が油断していたからに過ぎない。
最初から恋愛なんて小さな余裕もなかったのよ
だからあんたの手管に易々と引っかかってしまったのね
疲れ切った私の魂ですら誰かを待っていたのね
だからかしら、あんたの視線に溺れてしまったの
(背反の薔薇)
もちろん被害者ポジションだが、よーく考えなくても、既に散々恋愛をして来た熟練の女の歌なのだ。こんな私なのにひっかかってしまって悔しい!と歌っているが、そんなに怒ってもなさそう。オムジョンファはすぐ頭を切り替えそうだ。頭使う人なの。頭はいい悪いの前に、使うかどうか!使わなきゃさびつくまんまよ!!!!←私は何様か
他の歌は、心変わりしてしまってごめーん!自分でも自分が分からないわーと楽しそうに歌う『分からないわ』。
彼女の周りにはいつも男性のダンサー達が!この曲で出てくるオムジョンファの背後の人、すごいゲイ向けの容姿をしているわ!!!
女優としても好き。人柄の良さが出てくるし、おおらかなのねーと思わせる。何度見ても泣かされるのは、『ダンシングクイーン』のクライマックスシーン。
ソウル市長に立候補しちゃった貧乏弁護士の妻で、結婚したことでアイドルになる夢を捨てた人の役。様々な葛藤の中でダンス歌手としてデビューし、遂に夫と本当の意味で和解するシーン。ベタだけど作りが上手いなぁ。
誰も聞いてくれなくて一人ぼっちだと思うとき
私だけはそばにいると覚えておいてね
辛い時は私を呼んで
躊躇わずに呼んで
私だけはあなたを愛してる
世の中全部があなたの味方じゃないと言っても
夫役のファンジョンミンとの相性もいいんだろうけど、彼女のスケベ系ではない方の持ち味が活きてる!
実はこの映画の頃もそうだったのかな、ガンになって歌えなくなったりしてすごく辛かったらしい。D.I.S.C.Oって歌を出した後だったか。後で知ってそんな大変だったのか…と驚いた。
さて、オムジョンファと言えば、顔のモデルチェンジを隠そうともしないことで知られるが、まさか映画の中でやるとは思わなかった。これ、ネタバレになるから詳しく言えないんだけど、ある映画で(日本公開作の中では最新作?)、身分を隠すため、顔を整形したことになっている。その回想シーンで、手術後いきなりオムジョンファになってしまったというシーンがある。シリアスなシーンなのに大笑いしちゃった。そこで笑わせるユーモアと余裕!作品は、探してくださいッ!面白いです。
さて、病気を克服した姐は更に強烈な歌を出してきた。
歌詞もすごい。
嘘みたいにキレイ←オムジョンファさんのことです
って始まるの。痺れる。
歌詞の内容は、魅力的すぎる私に坊やが惚れてしまったみたいね、私はあなたのこと確かに愛したけど、私はあなたの夢に少しの間いただけよ、泣かないで、あなた子供みたいよ、また夢の中でまた私が行くかも。それまでグッバ〜イ
オムジョンファ姐完全体!!メイクもすごい。
この路線で韓国歌謡界の強烈な人たちを集めた払い戻しシスターズの歌も誠にすごい。
イヒョリ姐もこんなに迫力増してたとは!若手のジェシカもすごいけど、やっぱりね、まだ二十代なのに貫禄のあるファサの不敵な顔がいいね。眉毛無いよ!!彼女ははっきりと、美の基準を変えた人だと思う。昔なら容姿を悪く言われただろうけど、めちゃくちゃカッコいいし、この、のっぺりとして顔のパーツが大人しい顔が美しいのだと体現して見せた。私は支持する!!
韓国のフェミニズム文学が日本にどんどん入ってくるようになったが、ポップスの世界でもフェミニズムの影響はハッキリしていると思う。グローバル化に乗って、少なくとも変わろうとする様子が一つの活気を生んでいるのは間違いない。日本みたいに、変わらない方を選択する社会があってもいいと思うが、活気は感じない。新しいものをどんどん取り入れる活気のあった昭和歌謡に回帰する気持ち…私はあるな。最近私は浜田麻里のファンになったし。
オムジョンファ姐さんをキャリアから考えると、高度経済成長からグローバル化への痛みを伴う切り替えを体験し、何とかやっている韓国の歩みとぴったり合っている。常に自分が主人公だと確信している人の大胆さがある一方、人柄の優しさ(もしかしたら自分以外にあまり興味ない??)があり、韓国で尊敬されるエンターテイナーの一人になった姐。
そんなオムジョンファさんの歌の中で、最近出た歌、エンディングクレジットで締めくくりたい。一本の映画を観るかのように一つの恋愛の終わりを見つめる歌で、ちょうど一年前によく聴いていた。八十年代テイストも好き。素晴らしい時間を過ごしたけど、もう映画は終わっちゃったんだよ、予告編を観たってもうあの素晴らしい時間は始まりはしないよ…とよく分かっているはずなのに、やっぱり次の映画を期待してしまうし、慰めが欲しいのだと歌う。
すごい派手なカッコして床を這いずる様子にすごく共感したわ。好きなの、床を這いずり回る女性歌手って…
昔韓国に住んでいた頃には分からなかったオムジョンファの素晴らしさに開眼できてよかった。
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