マガジンのカバー画像

竹美書評

20
読んだ本のレビューまたは感想文です。
運営しているクリエイター

記事一覧

インド児童向け図書『花を愛しなさい』 第三話『泥棒たちは逃げ出した』 その夜、少…

なかなか衝撃的だった第一話に続き、短くてタイトルが不穏な第三話『泥棒たちが逃げ出した』を…

人間の欲に対する深い洞察 インド児童向け図書『花を愛しなさい』

心のお洗濯と思って7月一か月間、一人でハイデラバードに住んでみた。 色々と、インドで独りで…

竹美書評 皆はこう呼んだ、エンツォとワーニャは弱者男性! 杉田俊介『男がつらい!…

「弱者男性」とはどんな人達か 弱者男性、インセル、きもいおじさん、ホモソ、ちんよし、チー…

竹美書評 傷つくべきは誰なのか Abigail Shrier著『Irreversible Damage: The Trans…

皆の死者の書 上記の投稿から三か月が過ぎた。やっと英語版で『あの子もトランスジェンダーに…

竹美書評 「思想転向」を訂正する(東浩紀『訂正する力』(2023年)朝日新書)

思想転向。思えば私はこの言葉に30代を支配された気がする。 20代、まだ学生だった私に、左翼…

竹美書評 監督Vivek Agnihotri著『Urban Naxals: making of Buddha in a traffic jam…

前回は、ボリウッドでアグニホトリ監督がキャンセルカルチャーを体験した映画作品『Buddha in …

苦手な部分を突き刺してくる本 池亀彩著『インド残酷物語 世界一たくましい民』集英社新書、2021年

2021年に出版された池亀彩『インド残酷物語』を購入せずに、同年12月インドに移住したことを猛烈に後悔していたが、ようやく読めた。 南インドカルナータカ州でのフィールドワークを元に、著者の池亀彩氏が著した内容は、インドに住んで、まあまあ上の暮らしをしている自分の無知や、日々愚痴っていることが恥ずかしくなる内容だった。 インドと言えばカースト制度だと言われるほどに、カーストのことに触れていないインド論はほぼ無い。本書は、カーストには実に複雑に力関係が入り組んでおり、その地域

我らは如何にしてロマンティックラブに挫折したか(イザベラ・ディオニシオ『女を書け…

勉強嫌いで努力のできない竹美がやり直したいコト 今、高校に戻ってやり直したい科目。私は間…

ネオンの下で花開くゲイ能文化(小針侑起著『浅草芸能とゲイの近代史 文化の伏流を探…

私は、日本からインドに出て1年過ぎたのだが、思想が保守寄りになって来たり、日本の特殊性に…

罪悪感が生み出すホラー

こんな本を読んでいます。 我々はそもそも何故ホラーや怪談を生み出すのか?コリン・ディッキ…

読書感想文『An Unsuitable Boy』(不似合いな少年)Karan Johar, Poonam Saxena著2017…

ボリウッドにはネポティズム(身内びいき)が蔓延っている、という話はしばしば聞かれる。テル…

書評と言うより感想文『The Girl in Room 105』Chetan Bhagat著

まだ銀行口座が無いから配信系映画をこの三ヶ月まともに観ていない。そのイライラを埋めるため…

書評『Finding Monju』(文殊を探し求めて)Earle Ernst著1994年?

アール・アーンスト(Earle Ernst)は、GHQの占領期、日本の舞台芸術の検閲にかかわったアメリ …

いつも薄暗い皆へ

この状況で、ゴールデンウイークにも図書館が開いていると知り、行った。たまたまル=グウィンのエッセイ集『夜の言葉』を手に取った。『ゲド戦記』はおろか彼女の作品は一つも読んだことがなかったが、呼ばれたのかもしれない。ファンタジーとSFについてのエッセイ集である。そして、時代がフェミニズムの時代だったこと、そして、そのジャンルでの女性作家が非常に少なかった中で、SFやファンタジージャンルの性差別的な問題についても繰り返し発言しており、今むしろ読まれるべき本ではないかと思う。 そも