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祈りのような言葉を、誰かの心へ

部屋の窓から、11月の夜空を見上げる。仕事を終えた後の静けさが、書斎を包んでいる。スマートフォンの青白い光が、闇を柔らかく照らす。窓の外では、いつの間にか木々の葉が落ち、冬の気配が忍び寄っている。

noteのタイムラインを眺めていると、無数の物語が流れてくる。知らない誰かの日常や、思索の断片。それは、まるで夜空に浮かぶ星々のように、それぞれが小さな光を放ってる。名もない書き手たちの言葉がある。彼らの文章には不思議な温かみがあって、読んでいると穏やかな気持ちになる。

かつては自分も、技術的なハウツー記事を書いていた。ソフトウェアエンジニアとして、チームの中で問題を解決することに喜びを感じながら。業務の中で、新しい技術に触れ、チームメイトと共に成長する喜びは、今でも変わらない。
ただ、技術的なハウツー記事をSNSに発信することは、それを得意とする方々に、今は一旦託そうと思うようになった。

私の書棚には、人類の英知が並んでいる。
エンジニアの情熱が詰まった優れた技術書。
そして時を超えて受け継がれてきた人文的な古典たち。
技術書からは問題解決の智恵を、古典からは人間の本質への洞察を得られる。どちらも、私たちの未来を照らす道標だ。

私が今、求めているのは、また違う光だ。

プロダクトバックログを整理し、関係者の声に耳を傾ける日々の中で気づいた。人を動かすのは、実用的な知識だけではない。
それは、心の奥底に眠る「不思議」という感覚
センスオブワンダー
子どもたちが落ち葉の形に見入るような、純粋な驚きの感覚

書斎の窓から、再び夜空を見上げる。今もどこかで誰かが部屋の中で、きっと友人とSNSでやり取りをしているだろう。この瞬間も、世界中で新しい技術が生まれ、情報が更新され続けている。
だが、変わらないものがある。

それは、誰かの心に届く祈りのような言葉
ただ、夜更けにスマートフォンの画面を見つめる誰かと、静かな対話を交わすこと。その誰かが、自分の言葉に何かを感じてくれたら。それは、技術的な知識の伝達とは違う、魂の触れ合いのような何か。

世界には、すでに素晴らしい「答え」がある
そして今もなお、新しい答えが生まれ続けている。

私に必要なのは、そのどれでもない、自分だけの物語を紡ぐこと
それは、決して壮大なものである必要はない。
ただ、静かな11月の夜に、一つの星を灯すように。
小さくても、確かな光を放つ言葉を。

そして、その光が誰かの心に届いたとき、それは新しい物語の始まりとなるのかもしれない。
技術が進歩し、情報が増え続けても、人の心が求めているのは、そんな静かな共鳴なのだと思う。

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