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東京芸人逃避行 ヤーレンズ出井 隼之介2

以前一緒に遊んだ時、次はフリーマーケットに行きましょうと僕は出井さんと約束した。





2019年5月18日



僕は東京近郊のフリマを調べ、出井さんの空いている日とそれに合わせて天気も調べた。

以前フリマに行った時、小雨で開催はされたが出店数が劇的に少なかった。
それを防ぐためだ。



この日は久々に晴れ、気温もちょうど良く涼しかった。



僕は駅で出井さんを待った。
午前中から始まるフリマは15時には終わる。集合時間は早めの午前9時である。


「モニョレール乗ってる」



携帯にそう連絡が来た時には9時を回っていた。






無事スウェーデン軍のシャツを着た出井さんと合流し僕らはフリマに向かった。




歩いて3分くらいの場所で行われているフリマはとても広く、飲食スペースもある。









古着業者や骨董業者が雑多に置いた服や本、置物など、
そういったものを見ながら歩くのはとてもワクワクする。




「何か探してるものとかあるんですか」

「オーバーオール欲しいんだよなぁ」

「細身の芸人がオーバーオール着るのって出井さんが初なんじゃないですか」

「確かに。芸人でアレ着てるの全員太ってるもんな」










出井さんはしきりに

「メチャクチャ楽しいなぁ」

と言っていて安心した。






「それにしても色々あるなぁ」

「そうですね、全部安いですよ」






「お。写真集もあるじゃん」

「内田有紀とか永作博美とか、渋いですね」

「…」








「…内田有紀かな」

「買うんですか」






全て見終わった時にはもう昼を過ぎており、昼食を摂ることにした。









僕らは設えられたテーブル席に腰を下ろし、
僕は買ってもらったチリドッグを食べ、出井さんは塩焼きそばを食べた。







「思ったより多いな。気持ち悪くなってきたわ。ああ駄目だ。多いわ。パンパンじゃねぇかコレ。パンパンだよ。食えねぇよ。もう腹一杯だわ。食えねぇ」

「小食過ぎやしませんか」






「タケイ何買ったの?」

「服を買いました。ブルックスブラザーズの格好良いジャケットが安くあったのでそれが一番いい買い物かなと」

「そうなんだ。ブルックス良いよな。俺らが着てるスーツもブルックスだよ」

「そうなんですね。渋いなぁ。ところで出井さんは何買ったんですか」

「俺はこれ」






「ダウニー」





「え」

「ダウニー好きなんだよ。俺よく使ってるんだけど、日本で手に入るのは確かアメリカ、メキシコ、ベトナムの3つがあるんだよ。俺はベトナムのが一番好き。」

「そうなんですか。全部アメリカだと思ってました。拘りがあるんですね。じゃあそれはベトナムのですか」

「これはそのどれにも当てはまらないどこかの」

「大丈夫ですかそれ」









「ダウニーしか買ってないんですか。他にも服とか小物とか色々あったのに」

「買ったよもう一個」

「さすがにそうですよね。何買ったんですか」






「iPhoneの線」

「今日本当に楽しかったですか」






僕らは昼食を食べ終わり、そのまま駅に向かった。





「ダウニーって洗濯で溶け切らない時ってないですか。僕、前に溶け切らなくて服に染みついた時があったんですよ」

「良いのがあんだよ、ダウニーボールって言ってな、それにダウニーを入れて一緒に洗うと良いタイミングでそれが開いてダウニーが出るからそんなことも無いと思うぞ」

「え、一緒に洗うんですか。服傷付きませんか。プラスチックですよね」

「お前が今着てるそのダサい自分で作ったTシャツなんか破れたところで困らねぇだろ」

「マジで趣味合わねぇわ」






「出井さんこのTシャツ着てくださいよ。あげますよ」





「んー。いいや」





そうして改札前で別れた。




「また一緒に遊ぼうな」

出井さんは手を振って改札を出て行った。





僕は家に帰り着き、朝早くから動いたせいと前日の深夜バイトの疲れもあってそのまま寝てしまった。




その日の夜、テレビでヤーレンズが様々な個性的なラーメン屋を回って食レポをしており
巨大なラーメンを死ぬほど食わされて苦しんでいた。


昼間の事もあり、麺に祟られているんじゃないかと思った。

さっきまで一緒にいた近しい先輩が出ているテレビをボーっと見ながら、
そこまで行けていない自分の現状に目を背けてそう思った。

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タケイ ユウスケ
夢の一つに自分の書く文章でお金を稼げたら、 自分の書く文章がお金になったらというのがあります。

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