東京芸人逃避行 ランジャタイ伊藤幸司 バベル川副晃広③
11月8日
この日はラフィーネプロモーションというお笑い事務所の
事務所ライブであった。
僕らは事務所は違うのだが今回ゲスト枠として呼んで頂いた。
僕らみたいな矮小なコンビを事務所ライブのゲストに呼んでくれるとはとてもありがたい。そして嬉しい。
しっかりと笑いで返したいと思って臨んだがどうだっただろうか。
ラフィーネはバベルが所属している事務所である。
バベルと言えばこのノートにも頻繁に名前が挙がる川副さんのコンビだ。
川副さんを見付けた僕はウキウキと話しかけた。
「川副さん、終わり呑みませんか」
「うん、いいね!伊藤さんからも終わりで高円寺で呑もうと連絡来たよ!」
「え、なんで僕らが今日一緒なの伊藤さんが知ってんすか」
「監視してるからね!」
「監視してんのかよ」
ライブも終わり、僕は小道具で使ったギターを楽屋に忘れてしまい、
その所為で高円寺に着くのが遅れてしまった。
中央線も中野終点のものに乗ってしまい、その所為もあって更に着く時間が遅くなってしまった。
高円寺は北口を出たところに広場があって、
僕らはそこで呑むことが多い。
着くと川副さんだけがいる。
聞くと伊藤さんはちょうどさっき酒を買いに行ったという。
僕も行って来ます、と近くのセブンイレブンに行き
缶ビールと唐揚げ棒を買って戻ると伊藤さんも戻って来た所であった。
僕らは乾杯し、特に何もない事を話す。
その為にこうして夜にわざわざ高円寺に集まるのだから変だ。と思う。
皆オーバーサーティーである。
「あれ、伊藤さん珍しいですね。今日は緑茶割じゃないんですか」
「そうなんだよ!珍しいよね!どうしたんすか伊藤さん!」
「酔いたいんだよ!でも無理だ!飲めない!もう要らない!」
「なんで買ったんすか」
「本当ですよ!伊藤さん普段からそんな呑めないんだから無理しないで良いんですよ!」
「まだ集まって一時間も経ってないのに川副さんは呑み過ぎですよ」
「皆カラオケ行こうよ!カラオケに行きたいんだよ!」
「川副さん行けるなら僕も行きますよ」
「僕は駄目だ!明日ライブだよ!」
「何時!何時からなの!」
「昼の12時からですよ!10時起きですよ!」
「マジかよ…早すぎるよ…!」
「主催は寝かせない気じゃないですか…」
「行きたかったですよ!けどこの時間からのライブってもう自由が利かないんですよ!」
「確かにそうだね…今日はやめとこう…」
「はぁ~あ、カラオケ行きたかったな」
「伊藤さんドラクエウォークやめてください。皆といるんですよ」
「違うんだよ!モンスターが出たんだよ!」
「何が違うんだよ消せよ」
そうして僕らは終電で帰ることにした。
改札前で伊藤さんとは別れ、
川副さんはいつものように改札前のニューデイズで僕の分の酒と温かいお茶を買ってくれ、
それを呑みながら電車で帰った。
新宿は人がごった返してて目当ての電車に乗るのも困難だった。
僕はこの帰り道も楽しい。
「僕はこの帰り道も楽しい」と恥ずかしげも無く言う32歳に
「良いんだよそんなのは!いちいち言わなくて!俺もだけどいちいち言わないよ!」
と返す30歳もいるのだ。
寒くなった。
それでも温暖化の影響なのか季節が2ヶ月遅れているらしい。
布団に潜り込んで暖を取った。
夢の一つに自分の書く文章でお金を稼げたら、 自分の書く文章がお金になったらというのがあります。