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いつもカウンターに座って図書室の中を眺めている


いつもカウンターに座って図書室の中を眺めている。
正面には「ATLAS WORLD」と表紙に書かれた大判の本が面出しで配架されている。大判の地図コーナー。

多くの学生の利用者は入館ゲートを通ると、まず右手側に図書館備え付けの PCとオンデマンドプリンターに向かう。
大学の教授はご自身が発注してこの図書室の蔵書となった新着本たちを目当てに来室する。「発注していた図書が配架されました」というメールが図書館担当者から届くと、忙しい中、いそいそと尋ねてくれる。
中国の歴史を研究していると思われる先生が発注する、ものすごく大きくて重い図録のような資料たち、こんな貴重で高価な資料をうちの図書室に所蔵させてくれて嬉しい。

ひとつお気に入りの資料をご紹介したい。2022年10月に集英社から刊行された「日本鉄道大地図館:鉄道開業150周年」。明治から令和の鉄道地図を厳選して収録している。これまた大判で重い本で、大型本コーナーを最近になって別置でつくったスペースでも存在感を示している。これがうちの図書室に来たのは2022年11月。刊行されてすぐである。大学の教授(お名前は失念した)が寄付してくださったもの。こんな立派な高価な本を寄付してくださる先生がいるなんて素晴らしい図書室だなと誇らしい。

そうなの。この図書室は大学の先生たちに支えられている。必要としてくれている。学生たちにも役立てたいと思ってくださっている。毎日ひっそりと開室しているが、恵まれている素晴らしい図書室なのだ。


新着図書棚の隣には、参考図書と新聞。全国紙 4紙を閲覧できることはもちろんのこと、分室にもかかわらずうちの図書室が関わる学部の特徴からも「Financial Times」「Japan Times」が置かれていることが自慢である。「Financial Times」なんて中央の図書館でもとってないから、大学内でうちの図書室にしかないかもしれない。

はじめに紹介した大判の地図コーナーの隣には洋書の参考図書が並び、背の低いこの書架が、うちの図書室の真ん中に配置されている。この洋書の参考図書棚を挟んで、右側に閲覧席。左側に和書の一般書架が並んでいる。いつもぴっちりと書架整備されていて気持ちがよい。
カウンターに座っていると8列に並ぶ書架の右端だけが目に入る。手前から数えて6列目の書架。ここには9門の資料が並んでいる。9門といっても、小説や文庫本などの資料は所蔵していない。そしてカウンターに座る私の目に入るのは、岩波書店の「新日本古典文学大系」だ。緑色のすんとした神聖さと同時に何だか温かみのあるなつかしさを感じる装丁。これらが見えるところに、いつでも手に取れるところに、配架されている幸せ。思い返せば、2年半前に初めてこの図書室を訪れたときから、そのことに感動を覚えていた。手始めに作取物語の巻を手に取り、有名な冒頭を眺めてみたりした。

来年度、もしかしたら私はこの図書室にいないかもしれない。自身の成長につながる良い話をいただけるかもしれないから。期待とわくわくが胸を包み込む一方、どうしても一抹のさみしさが心の中の水面にぽこんっと浮かび上がっては消えていく。きっとこのさみしさのぽこんの大きさは、時間の経過とどもに小さくなっていくだろう。それでいい。ただこのさみしさを忘れたくないから、少しだけ残しておこうと思ったのだ。

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