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漱石山房記念館 初版本コレクション

何度か訪れている漱石山房記念館
たびたび夏目漱石 終焉の地へ

またまた私のド好みなテーマ展示をッッ!!!
ということで平日 秋葉原へ出勤後に最寄り駅 早稲田へ
【2024.9.5 (木)】

外観写真がワンショット 早く涼みたくて…

入ってすぐのエリアに夏目漱石について黒猫が紹介してくれる動画や、漱石の一生の概略をパネル展示しています
ここスペースだけでも十分見応えがあって、時間がいくらあっても足りないくらいなんですよね

早稲田駅から10分ほど歩くので着く頃には汗だくで、動画(20分くらい)をゆっくり涼みながらのんびり見ました


お目当ての展示はこちらです

漱石山房記念館 《通常展》 テーマ展示
初版本コレクション

今展示のフライヤー 奇麗

本展では、漱石山房記念館が所蔵する漱石や門下生などの初版本を一同に会して公開します。
漱石の初版本の装丁は、『吾輩は猫である』から『虞美人草』や『行人』などその多くを橋口五葉が手掛け『道草』、『明暗』は津田青楓、そして『こころ』は漱石自らが携わっています。それらは出版された当時から装丁、造本の傑作といわれるほど美しい本であることが知られています。漱石が橋口に宛てた書簡には、『吾輩は猫である』の中編の装丁について、「表紙の模様は上巻のより上出来」と書かれており、自著の装丁へ深い関心を示していることが伝わってきます。また、原稿や印税帖、書簡、新聞記事などの関連資料を展示し、発行当時の様子もご紹介します。
漱石のこだわりの詰まった、まるで美術品のような美しい本に会いに来ませんか。

フライヤー裏面より

夏目漱石全集の装丁が『こころ』の表紙を使用していることは有名で、これぞ夏目漱石!ってかんじがする
もちろん他の本に関しても、やはり並々ならぬこだわりがあったようですね

❝美しい本に会いに来ませんか❞

いいですね〜〜〜

漱石山房記念館のHPに載っていましたが、

訪れる直前に見たこの初版本コレクションの紹介のYouTubeが心穏やかにわくわくが膨らむようでした


このなかで最初に出てくる

YouTubeより

こういうこと云うんですね!!!素敵!!

うつくしい本を出すのはうれしい。高く売れなくてもいゝから立派にしろと云つてやつた。何で〔も〕挿画や何かするから壱円位になるだらうと思ふ。到底売れないね。うれなくても奇麗な本が愉快だ。

明治38年(1905)年8月11日付 中村芳太郎宛書簡より

こちらが原文でした。
漱石の書簡を目にすると、このかんじ、この語りかけ方、いいですよね。なんでしょう。おそらく漱石はこの時期、夏目先生!夏目先生!とたくさんの弟子に囲まれているような状況で、自分より目下の者たちに対してとても親しげ、というか、、、くだけた雰囲気があるというか、、、


以前、『硝子戸の中』を読んだとき、これもうほぼエッセイみたいなものだなと感じました。夏目漱石について簡単にまとめた本を読むよりも、この『硝子戸の中』を読んだ方が、夏目漱石の人となりがわかる気がして、、、面白みがあります。



いざ2階展示室のテーマ展示スペースへ
それぞれの初版本の装丁、ひとつひとつじっくり見ることができて、本当に素敵でした
なんか全部カッコよかった……

今回の初版本コレクションの中で、最も気に入った装丁が『道草』でした。

フライヤーを拡大・抜粋

晩年に発表された『道草』は、“唯一の自伝的小説”。
自伝的小説って面白いですよね。(闇が深いと感じる作家も多いですが)
『道草』近いうちにぜひ読みたいと思います
青空文庫で読み漁るのも良いけど、やはり紙で読むよも捨てがたいよなぁ…




それにしてもこのフライヤー、、、こうやってキレイに並べると本当に壮観で美しい!!

簡単に感想を…

1.『吾輩は猫である』上編 明治38(1905)年 装丁:橋口五葉
2.『吾輩は猫である』中編 明治39  (1906)年 装丁:橋口五葉
3.『吾輩は猫である』下編 明治40(1907)年 装丁:橋口五葉

『吾輩は猫である』初版本情感の表紙、こわすぎでは??見えにくいのが残念ですが、人間の身体の頭部が猫で、なにか宗教絵画のよう…

4.『漾虚集』明治39(1906)年 装丁:橋口五葉

今回の展示のメインは夏目漱石の初版本だけど、弟子たちの初版本も展示されていました。
芥川竜之介の『羅生門』の初版本の題字は、芥川の恩師であり夏目漱石の友人でもある菅虎雄が描いているのは存じてましたが、この『羅生門』、夏目漱石のこちら『漾虚集』(ようきょしゅう)の装丁を真似ているそうです。知らなかった!
『羅生門』わりと地味ですけどどのへんを真似て??と思って再度『漾虚集』を見てみると、、、、ホント確かに真似してますね!リスペクトを感じます

芥川龍之介が自ら装丁した『羅生門』は、漱石の『漾虚集』を模してつくられています。題字は、芥川龍の第一高等学校時代の師であり、漱石の友人で『社会と自分』の扉の字を書いた菅虎雄に依頼しています。扉の後には「夏日先生の霊前に献す」と、漱石の死を悼む献辞が記されています。

『羅生門』初版本キャプションより

5.『鶉籠』明治40(1907)年 装丁:橋口五葉
6.『虞美人草』明治41(1908)年 装丁:橋口五葉

『虞美人草』の装丁もとても有名ですよね。『道草』と悩んだ今回の私の中でNo.2です!!
そして、松岡譲が装丁が奇麗すぎてビビったというエピソードが好き過ぎる…////
本当に美しい、こだわり抜いた装丁です
たしか『虞美人草』は連載が始まったとき、なんだったか社会現象になったとかならなかったとか、、、

『虞美人草』が店頭に並んだ時のことを、のちに門下生となる松岡讓は次のように述べています。
「先生の『虞美人草』が市に現はれた時には、まだ田舎の中學生であつたが、あの帙入りの華麗な書を店頭に見た時、買ひたいには買ひたいが、さりとて餘りに奇麗で勿體なく、とうとうおぞけ(怖気)をふるつて買はずにしまつた事を覚えて居るが、意氣地のない田舎中學生をおどかした先生の装幀も罪なことだ。」
          (「全集の装幀」『漱石全集月報 第17号』昭和4年7月)

『虞美人草』初版本キャプションより

7.『草合』明治41(1908)年装丁:橋口五葉
8.『三四郎』明治42(1909)年 装丁:橋口五葉

ちょっと脇道ですが、『吾輩は猫である』の中編、下篇の挿絵を描いている浅井忠(あさいちゅう)は、ロンドン留学中に漱石と出会って親交があり、一緒にロンドンの街を歩いたとき、あれはどーだこの風景はどーだなんやかんやと散歩中ずっと色のこと絵のことを喋りっぱなしだったらしく、漱石はものすごい、さすが画家である、と評していたらしい(嫌味ではない)
そして、この浅井忠、『三四郎』で終盤に三四郎と美代子(だっけ?)が水彩画の展示を見に行く水彩画家 深見さんのモデルになってる人なんだって!!へぇ〜〜!!というかちょっと納得しちゃった!!若干うんちくくさい人物だったなって()

9.『それから』明治43(1910)年 装丁:橋口五葉

前期三部作と呼ばれる『三四郎』『それから』『門』も、装丁は全く揃っているわけではないんだな〜と。そもそも内容も登場人物が被っているわけでもないので、書いてる最中や装丁を作り上げている最中には、三部作という認識はなかったのかも?なんて思いました。

10.『四篇』明治43 (1910)年 装丁:橋口五葉
11.『門』明治44(1911)年装丁:橋口五葉
12.『彼岸過迄』大正元(1912)年 装丁:橋口五葉

『彼岸過迄』これも宗教画のようで美しいですよね。幼子を亡くしたときのことを書いている小説。悲しくて読めない。

13.『行人』大正3(1914)年 装丁:橋口五葉
14.『こころ』大正3(1914)年 装丁:夏目漱石

『こころ』は漱石自身が装丁しています。見たことある〜ってなる人多いのでは。
この『こころ』初版本の装丁が、『こころ』縮刷本や『漱石全集』へと引き継がれていて、漱石のイメージをつくっている気がする。

表紙に使われているのは、清の康熙帝こうきていの勅撰により編纂された漢字辞典『康熙字典』の「心」の項です。

『こころ』初版本キャプションより

『こころ』の序文には「自分で遣つてみる氣になって、箱、表紙、見返し、扉及び奧附の模様及び題字、朱印、検印ともに、悉く自分で考案して時分で描いた」と書いています。

『こころ』初版本 序文キャプションより

なんか気が向いたからやってみました〜みたいな雰囲気ね


15.『硝子戸の中』大正4(1915)年 装丁:夏目漱石

『硝子戸の中』も漱石自身が装丁している。あれ?と思ってしまいましたが、有名なボーダーの装丁は函の方。フライヤーにはありませんが、実物の展示では、本と函、並べて展示してありました。

16.『道草』大正4(1915)年 装丁:津田青楓
17.『明暗』大正6(1917)年 装丁:津田青楓

『道草』『明暗』の表紙の装丁を手掛けた津田青楓(つだせいふう)
漱石山房にたぶん常に展示されている木曜会の絵を描いた画家
「漱石山房と其弟子達」という絵。

津田青楓にとって、画家の意見を尊重する漱石との関係は、時に親のように慕うほどかけがえのないものでした。函、紙、カバー、表紙、扉、挿絵、奥付、文字など、著者と装丁家、画家たちが細部にまでこだわって送り出した美しい本からは、そこに込められた深い思いが伝わってくるようです。

漱石の晩年の作品の装丁を手掛けた津田青楓も漱石を慕っていた木曜会のメンバーだったようです。
津田青楓は漱石の弟子の初版本の装丁を手掛けることもあったようで、その際、夏目先生は自分に任せてくれたのに尊重してくれたのに!弟子の方は文句ばっかりうるさい!みたいな文句を書いておられましたww


ということでお土産ポストカード

津田青楓 夏目漱石著『道草』表紙
夏目漱石『道草』草稿


黒猫スタンプが可愛い





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